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第五話 変人同士の邂逅

 えっ?いや、そんな変なものを見る目で見ないでほしいのですが。その権利はこちら側にあるはずだ。

そうだよな。うんそうだ。この家は芦田家の家だ。


「あの、この家に何か用ですか?」


「・・どちら様ですか?」


「この家の者です」


「・・そうですか・・」


 なんか分かんない人だな。質問してるのに勝手に落ち込まないでほしい。


「親に用があるなら、いつも帰りは遅いのでまだ居ません」


「いえ、違います。あの・・ただ、この家をもう一度見たかったのです」


 うん?益々不審者説が濃厚になってきたぞ。人ん()のポスト勝手に覗いたり、周囲をうろついたり。見たかったって、どういう意味だ?


「・・見るのは別に構いませんが、他所(よそ)の家のポストを覗き見るのはおすすめできませんね」


「っ!い、いや違います!あれはちょっと気になったというか、なんというか・・・」


「?・・なんか変な所ありました?」


「え?・・あっはい!ありました。なんかポストの形が特殊だなーと思って、興味本位で覗いてしまいました。ほんとにすみません!ただ、盗みなどはしていません!なんなら調べてもらっても結構です!」


 まくし立てるようなその物言いに、余計疑念が積もってゆく。


 てかポストの形めっちゃ普通ですやん・・・そんな慌てて怪しまれないと思ってるのか、この子は。俺の高校の制服を着ていることから同じ学校の女子生徒だとは分かるが、ちょっと心配になってくる。

 調べても良いと言われた時、少し俺の体が反応したのは気のせいだろう。疚しいことなんて考えてないんだからねっ。


 うちの高校は一年生が緑、二年生が赤、三年生が青と学年ごとに色分けして分かりやすくする。この子は赤色のリボンなので、俺と同学年だ。

 ちなみに俺の妹の千恵は一年生だ。先輩からもモテモテらしいよ、くやしい。


「・・まぁ別に気にしてませんので」


「本当にすみません」


 これが漫画の世界ならば、背景にショボーンと言う文字が書かれているだろう。

本当に落ち込んでいるみたいなので、咎める気も失せてきた。はぁ・・周りから見れば俺が悪いみたいじゃん。いかんいかん早くこの場を脱せねば。


「用がないなら俺はこれで」


 そう言って、家に入ろうと思った時



「にいちゃーーん!」



 振り返る。走る鬼が居た。逃げる。掴まる。


「なんでいっつも先に帰るの!?」


 ハァハァと息を切らしながら言葉を紡ぐ千恵。


「待ってたけど、居なかったもんで・・(汗)」


「・・嘘下手すぎ」


「あはは・・」


「まぁいいや」


「切り替えが早いとこは千恵の美徳ポイントだな」


「調子に乗るな陰キャ」


 クラスメイトに言われてもダメージはこないが、身内の人間に言われると結構くる。泣いていい?


「え、古瀬先輩?」


 さっきからずっと蚊帳の外にされていた不審者に、ようやく妹が気づく。


 不審者こと古瀬さんは、さっきまでの兄弟漫才を唖然と見ていたせいか口が半開きだ。ちょっと可愛い。


「・・あっは、はい。そうですが・・」


「えー!なんで古瀬先輩がここに居るんですか?あっ!もしかして家が近いとか?まさかあの古瀬先輩が近所だなんて、もーそういうのは先に言ってくださいよー。水臭いなー」


 やけにテンションが高い妹。さっきまでの俺への態度が嘘みたいだ。母親が電話に出た時、瞬時に声を変えるあれだ。

 というか、妹がここまで興味を持つとは珍しい。もしかしてこの不審者、学校では結構ヒエラルキー高いかも。そう考えるとさっきまでの俺の態度間違えたかも。やばい。明日学校に行ったら靴箱に大量のごみが入ってるとか洒落にならん。


「千恵。あの人と知り合いか?」


「知り合いっていうか、ちょっと話したことがあるってくらいかな。というか同級生なのに知らないとか言わないよね?」


 ・・・・クラスで一緒になった人以外はほとんど知らないなんて、言えない


「まぁ流石に古瀬先輩は知ってると思うけど。あんだけ美人さんだし」


「・・・もちろんだ」


 話を合わせないとまた妹にいじめられる。だまって頷いとこう。


「あのー?私はここの近所ではありませんよ」


 さっきから妹とコソコソと話をしていたら、古瀬さんが声をかけてきた。


「えっ!じゃぁなんでこんな住宅街にいるんですか?」


「え、えっと、、気まぐれ、、です・・」


「ふーん。古瀬先輩でもそういう時あるんですねっ」


 ちょこちょこ、こちらに気まずそうに目を合わせてくる古瀬さん。なんか助けを求めてるっぽい。

早くこの場を去りたい俺としては、その助けを無碍にするわけにはいかない。


「俺は先に帰っとく。あんまり家の前で長居するんじゃないよ」


「っ!」


 すまん古瀬さん。やっぱり陰キャには壁が高いようです。



 その後妹が30分後に帰ってきた。30分も何を話すのかねいったい。古瀬さんには悪いことしたな。けど今日限りの関係だ。別に気にすることもないだろう。


「ねぇ兄ちゃん、古瀬先輩が明日の昼休み図書準備室で待ってるだって」



  高校生活終了のお知らせ。まさか俺にもフラグ回収が適応されるとは。



  その後、何時間にも渡り古瀬さんとの関係を妹に詰問されたが、ほんとのこと言っても全く信用されない。終始妹は不機嫌で、ご機嫌を取るのに粉骨砕身した。歩いて20分のコンビニにパシらされる兄。どう思う?

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