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第31話 ぼっち君、苦悶

 教室へ戻ると、既に若山さんは自分の席に着いていた。

 

「大丈夫?」


「あ、はい。もう、大丈夫です」


 顔の血色も良くなったし、本当に治ったのだろう。


「ああいうの苦手な感じ?」


「はい・・初めて、あのようなものを見たので・・・」


「そう・・」


 まぁ、無理もない。俺も少しひいたからね。


「無理しないようにね」


「は、はい」


 そう言って俺は席に戻った。

 もうすぐ、5時限目が始まる。はぁ・・めんどくさい。


<><><><><><><><><><><><><><><><><><><


「ねぇ?兄ちゃん聞いてる?」


「・・・あ、ああ聞いてるぞ」


「嘘だぁ・・・」


 はい、別のこと考えていて全く聞いてませんでした。

 現在夜の8時。夕食を食べ終わり、リビングでくつろいでいると、千恵が寄って来て話しかけてきた。


「で、何だったけ?」


「ほら、聞いてないじゃん・・」


「あ、あれだろ?友達の何とかちゃんが何とかとか・・・」


「・・・・美優(みゆ)里奈(りな)ちゃんね」


「あーそれそれ、先週の休日に千恵が一緒に遊んだ人のことだろ?」


「うん。でね、今日美優と里奈ちゃんと遊んでたんだけど、ほんと面白くてね?それで・・・・」


 はぁ。また始まった。千恵はほぼ毎日、その日学校であった出来事を伝えてくる。友達とどうだったとか、今日は友達と何したとか、私の友達まじ可愛いとか、ほんと友達最高!とか、友達とか、友達とか。俺を馬鹿にしているの確実だろう。ボッチの俺をメンタル面から破壊しに来てやがる。ひどい。悪魔だこの女。

 いつもなら黙った聞いているんだが、今日は疲れてるから正直だるい・・・・・


「・・・だったんだよっ。ほんと、美優面白すぎ(笑)」


「そうか」


「うんっ。でねっ、里奈ちゃんは普段は大人しいんだけど、ツッコミが・・・」


 まだ話は続くらしいです。だれか、助けて。



 

 結局、30分にも及ぶ一方的な喋りを聞かされました。毎度毎度、災難極まりないな俺。あいつの口をガムテープで塞ぎたい。なんなら接着剤でも可。


「まぁでも、あれはあれで俺への気遣いか・・・」


 風呂に浸かりながら一人呟く。

 千恵は俺の学生生活を心配してるらしく、どうやら友達を作ってもらいたいらしい。友達が居ることの素晴らしさ、楽しさを俺へ伝えたいのだろう。けど、


「矛盾してんだよなぁ・・・」


 言ってる事と()()()()()が。

 千恵のあれは、これまで幾度となく注意してきた。だが治った試しは、一度たりともない。


 結局みんな、過去に囚われて生きているのかもしれない。あいつらだって。千恵だって。親だって。学校の先生だって。西条だって。陽キャたちだって。もちろん、俺だって。

 でも、いつかどこかでそれを断ち切らなければならない時が必ず来る。それは今かもしれないし、明日かもしれない。まぁ、分からないけど。


 俺は物事をかなり楽観的に考えている(たち)なのだが、世間一般人はどうなのだろう。俺が問題ないと一蹴したことでも、人によっては多大なる問題に発展する可能性もある。その点俺は、人との距離が遠いので、余り心配する必要はないかな。ちょっと悲しいけど。

 だが、そうだな・・・・・・これは考えても答えが見つからないタイプの疑問だ。宇宙や死について考えていると、頭が混乱して訳が分からなくなるあれ。


「はぁ・・」


 今日何度目のため息か。

 考えても考えても、何が正解か分からない。イケメンストーカー槻谷君の件もしかり。あ、間違えた。今はブサメンストーカーでした。

 あいつの親は、本当に出来た人間らしかった。だからその分、あいつの親として、その責任を取ったのだろう。普通できないよそんなこと。ほんと、すごいね・・


「ㇷ゚くプくぷくぷく・・・」


 俺の癖である、お風呂に口をつけて息を吐くとプクプクするやつをやる。そういえば、これ汚いからやめろって母さんに言われた。まぁ別にいいや。


 考えてもしょうがない事は考えても無駄である。俺が考えても何か変わるわけでもないしね。こういう時は、アニメ見て寝るのが一番だ。今日は今ハマってるアニメの最新話が出たはずなので、それ見てリフレッシュしよう。


<><><><><><><><><><><><><><><><><><><


「芦田、退学した奴知ってるか?」


 授業の合間の休み時間に、となりの西条が槻谷の件について聞いてきた。


「いや?」


「それがな、2Eの槻谷らしいんだよ」


 情報というものは早いもので、槻谷が退学したことはたった一日で校内全土に広まった。コソコソコソコソと、槻谷の退学の件についてクラスメイト達が喋っている。


「・・そうか」


「反応薄いな・・・。まさか知らないとか?」


 めっちゃ知ってます。


「いや、知ってるよ」


「流石にか。でもなぁ、槻谷の素行は余り良くないって聞いてたけど、そこまでだとは思わなかったな・・」


 槻谷やっぱ有名だったのかな。悪い意味で。


「それにヤリ〇ンって噂だからな・・・・皆は女性関係でトラブルが起きて、それで槻谷が退学したって言ってる」


「そう・・・」


 一体、女性関係でどんなトラブルを起こしたら、犯罪行為にまで行き着くのだろうか。槻谷が何人もセ〇レ作ってたとかかな?・・・・何か実際やってそうだな。イケメンだし。今ブサメンだけど。

 だが実際、こうやってどんどんあらぬ誤解が広まっていくんだろうね。槻谷君、終了のお知らせである。


「畜生・・・俺まだ童貞なのにっ」


「・・・」


 西条君、きみ童貞だったのか。同士だったとは・・君とは良い友達に成れそうである。


「芦田は・・・まぁうん」


「なんだ?」


「絶対童貞だろ?」


 ・・・そうだけど、なんか腹立つなぁ。絶対童貞ってなんか四字熟語みたい。意味は初心(うぶ)な人、みたいな。


「・・・ああ」


「ははっ、やっぱり」


「・・・」


 同士を見つけて嬉しいそうです。


「ねぇ?朝から下ネタばっかり喋らないでくれる?ほんと馬鹿じゃないの・・」


 そんな低俗な会話をしていると(俺は頷いていただけだ)、西条の前の席の女子が睨みを利かせて発言してきた。


「っ・・・ご、ごめん」


 俺は悪くない。無罪だ。


「男ってほんと・・・」


 心底嫌、といった様子で呟く女子生徒。この女子は2年Dクラスの委員長であり、とても真面目ちゃんだ。クラスの皆が、槻谷の件で盛り上がっている様子を見て呆れ顔で目を逸らし、読書に没頭していた、数少ない興味ない勢の一人だ。注意するのも無駄、ということなのだろう。


「・・・・・」


 気まずい雰囲気が流れる。

 既に委員長は前を向き黙々と本を読んでいるが、西条は少し落ち込んでいる様子だ。すかさず俺も体を前に向かせ、本を読む。俺は何も悪くないので関係ない。


 横から凄い視線を感じるが気にしない。西条君、童貞晒し損である。

 少しでも面白いと感じて頂けたら、感想・評価をよろしくお願いします!


 出来れば、感想を頂けると嬉しいです。


 そして今後とも『青春=ぼっちの男』を楽しんで頂けたら嬉しいです。

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