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第十四話 久々の安息

 こいつ俺のベッドでのうのうと寝やがって・・・そこはマイベッドだ。制裁を加えよう。


「・・・・・っ」


 さわさわ~さわさわ~


「・・ぅ・・・・」


 さわさわ~さわさわ~


「っぅ・・ぅん・・なにぃ~・・」


 違和感を感じだのか、目を擦りながらようやく体を起こした妹。よし、千恵が起きたこのタイミングで・・



「千恵っゴキブリっ!足にゴキブリ乗ってるぞっ!」


「っ!?ぎゃぁアーーー!!」


 それは年頃の女の子が出していい声じゃありません。だがいい様だ。俺をベットから蹴落としたのが悪い。

 妹の千恵は昔から大の虫嫌いで、特にゴキブリへの嫌悪感といったら他に類を見ない。曰く、――無理、存在が無理――とかなんとか。


 俺が言うや否や、速攻でベッドから退散した千恵。ちなみにゴキブリなんていません。俺が千恵の足を指でさわさわしただけだ。


「まだ付いてるっ!?」


 俺の近くへ来て必死の形相でまくし立てるその様は、笑いを堪えるのにかなりしんどいです。


「いや、もういないな」


「じゃぁどこ!?どこ行った!?」


 自分の体を守るように触りながら、部屋をキョロキョロする妹。


「どっかに消えたぞ」


「朝からホンと最悪っ!あ”ぁ~もうっ!!」


 ボサボサになった髪の毛を手で掻きむしりながら愚痴を露呈する千恵。本気でイライラしてるのが見てわかる。ちょっと怖い。千恵のゴキブリ嫌いを正直舐めていた。


「お風呂入ってくるっ!!」


「お、おう」


 バタンっ!


 勢いよく部屋を出ていった千恵だったが、途中でガタっ!と倒れる音がした。相当焦ってるな(笑)だがこの方法いいな。今度千恵が寝てるときもう一回しよっかな。


「まだ、6時半か・・」


 土曜日にしてはかなり早い方だ。いつもは大体9時くらいに起きてすぐ二度寝する。

 俺にこのルーティンは欠かせない。早速寝よう。



 この後寝ようとして布団を被ろうとした際枕の上にゴキブリが鎮座しており、約10分に及ぶ壮絶なる戦いをしたのはここだけの話。めっちゃビビった瞬間を見られらなくて良かったです。

 ちなみにチャバネゴキブリだった。やっぱキモイわ。


<><><><><><><><><><><><><><><><><><><


「ほんと朝から散々だよ・・」


 朝飯を食べていると、風呂から上がった千恵が沈んだ声で言ってきた。


「どんまい」


「兄ちゃんは大丈夫なの?」


「ゴキブリなんてただの虫だろ?怖がるもんじゃないよ(戦闘後)」


「兄ちゃんには分かんないよ。あの怖さが・・」


 ブルっと体を震わせ、両手で自身を抱く千恵。あっ鳥肌立ってる。


「・・・それより早く食べないと飯が冷めるぞ」


「うん・・」


 現在朝8時10分。両親は共働きで、いつもこの時間帯には既に出勤している。

 この朝ごはんは俺が作った。土曜日の朝・昼ご飯担当は俺なのだ。家にいる時間が多いと必然的に家にある物で何か食べなくてはならない。けど折角なら美味しいものが食べたいので、サイト等で調べながら料理をしているとその内料理が上手になっていた。


「どう?美味しいだろ?(千恵が作る料理と違って)」


「うん。美味しいけど私ほどじゃないかな」


 やっぱりこの子の舌腐ってるわ。


「そうか。もっと精進するよ」


「そうしたまえっ」

 

 ふんっ、と胸を反り偉そうに話す千恵。高校1年生なんだからもうちょっと大人っぽくなって欲しいとは兄の切実な願いである。


「で、今日はなにするのー?」


「本屋でも行こうかなと」


「えぇー毎週行ってるじゃーん」


「当たり前だろ」


「あんな文字ばっかりの本の何処がいいの?漫画の方が絶対100%面白いっ」


 文脈がおかしいですよ千代子さん。あんたそれ古瀬さんに言ったら絶対100%こ〇されるよ。


「千恵がもう少し大人になったら分かるよ」


「いーや絶対読まないと思うなっ」


「そうか」


 確かに、幼い子に小説を読めと言っても読むことはほぼ不可能だろう。だが君高校生だよね?読むくらいできると思うのですが。


「私今日美優(みゆ)里奈(りな)ちゃんと遊びに行くんだ」


「そうか。あんまり遅くなるよ。最近物騒だからな」


「ふふっ兄ちゃんに言われても説得力無さすぎ~」


 すんまへん。


「あっそういえば美優達が兄ちゃんがどんな人か見たいって言ってたよ」


「会っても失望するだけと言っておけ」


 学校で、俺と千恵が兄妹だという事実を知らない人は実際かなり多い。俺から明言することは無いが、知られた時の反応は皆一様に驚き、疑い、嫉妬。もう慣れました。


「なんで?」


「千恵の兄が陰キャボッチだと知って、関心するやつはいないと思うぞ」


「・・・確かに」


 やっぱり身内に納得されるのはちょっと悲しい。


「それよりもう8時半だぞ。遊びに間に合うのか?」


「はっやばい集合9時だった!」


 席を立ち、ごちそうさまでしたっと言って急いで2階の自室へ駆けあがっていく。忙しいやつだなと思う反面、少しいいなぁと思う自分がいる。

 毎日のように友達と遊び、腹筋が攣りそうになるまで笑う。もしかしたら俺にもそんな青春があったのかもしれない。だが、たらればの話をしてもしょうがない。それにそんな生活俺の(しょう)に合わないと思うしね。



「兄ちゃーん、言ってきまーすっ」


「気を付けろよー」


 玄関から元気のよい声が聞こえてくる。あれから15分後準備を済ませた千恵はいそいそと出掛けて行った。


「俺も行こうかね」


 今日は快晴。良い読書日和だ。あぁ、良いアニメ日和でもあるな。

 適当な服に着替え出掛ける。しっかり鍵も掛けてきた。




 歩いて15分の近場の本屋に着いた。まだ朝早いのでスカスカだ。気持ちよく本選びができるので嬉しいです。

 満を持してラノベコーナーに行こうと思ったその時、俺の瞳にチラっと見知った顔が映った。

 

 我が同胞、三つ編みメガネっ子だ。

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