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幸せは昨日訪れる  作者: えるふ
7/20

ゼファー確保

『6-4、6-4、そちらはどのような状態か、どうぞ!』

「こちら6-4、墜落地点は近い、銃声が聞こえる!敵は処理できた、進軍可能!」

『了解6-4、こちらはかなり遅れる!アウト!』

通信を終え、6-4小隊の隊長を務めるアイリスは部隊を率い、進軍をする。それは2人のプルーマを助けるため。1人の死亡は通信で聞いていたが、死んでいても連れて帰るつもりだった。

「アイリス軍曹、情報によるとこのあたりです」

銃声が聞こえる。墜落地点は近い。

「ゼファー中佐!アイリス軍曹です!助けに来ました!」

道の向こう側。木に身を預けるように応戦している女性を見つけ、アイリスは叫んだ。ゼファーは手を上げ合図をしていた。

「チョコモス、ローレンティア、エキナセア、一緒に来てください!他はこの場から援護です!行きますよ!」

味方が一斉に敵に向かって斉射し、アイリスたちはゼファーのもとに走っていく。

「大丈夫ですか!?」

アイリスはゼファーの手を取り安心させようとする。

「左足はほとんど動かせなくて……背中も…変な感じ…」

ゼファーが言うと、アイリスが肩を貸す

「あの建物に!」

アイリスが無理やり立たせ、近くの建物に近づいていく。

「シュネー隊だ!」

ゼファーは突入時のアイリスの台詞を聞いて思い出す。陸軍はシュネービッチェンと呼ばれているのだ。この物語に存在しないが、ドイツ語で白雪姫の事である。じゃあ寝てろよ。ではなく、白いバラの事。

「クリア!」

「クリア!」

「クリア!建物確保!」

突入した隊員が手際よく建物を確保し、アイリスに運ばれゼファーはテーブルの上に仰向けに寝かされる。

「ネリネ!」

ネリネと呼ばれた隊員は建物の外に居たが、すぐに駆けつけてくれた。

「お呼びですか!」

「手当を!私達は防御します!」

「了解!」

ネリネは言われすぐにブーニーハットを投げ捨て、バックパックを下ろし、動きやすいように整える。

「空軍は良いですね、スカートで。陸軍だったらズボンを切らなきゃだめなので、しばらく下着姿になるところでしたよ」

靴下も長くなく、治療は施しやすそうだった。

「まずは破片を取り除きます。どうぞこちらを噛んでいて下さい」

満足な設備はないし、出来ることは限られている。ネリネはガーゼをゼファーに渡した。

「モルヒネは…?」

「ごめんなさい、脈拍が下がりすぎます。きっととても痛いと思いますが、治すためです」

ネリネは脚に刺さっている破片をナイフで取り除いていく。一つ取り除くたびに悲鳴のような荒い息が漏れていた。



「脚は大丈夫です。次は羽ですね」

「はぁ、はぁ……羽はデリケートだから優しく……」

「喋らないで!」

「んんぁぁあああ!」

ネリネは容赦なく羽に突き刺さった破片を取り除いていく。先程口を開いた関係でガーゼが口から離れてしまったので、ゼファーは叫ぶような悲鳴を上げた。

「もう大丈夫です。ただ……」

ネリネの言葉が曇る。

「何?モルヒネくれるの?」

「いえ、もう飛べないかもしれません」

正直自分の怪我を把握してなかったゼファーは羽を動かし見えるようにすると、絶望的なのが伺えた。左の翼は2/3をもぎ取られ、残った部分の羽毛もほとんど弾け飛んでしまっていた。脚は血で染まっており、応急処置の止血がされているだけであったので、その状態をゼファーは即座に理解できた。

「嫌……嘘…っ」

涙を流し始めるゼファーの胸ぐらをつかみ、ネリネは顔を近づけて言い放つ。

「泣くな!まだここは戦場!泣く暇があったら銃を取りなさい!」

そのやり取りを聞いてアイリスが部屋に入ってきた。

「治療は終わりましたか?」

「ええ、脚に包帯を巻けば終わりですね」

「分かりました。ローレンティア、連絡を」

アイリスがゼファーの脚に包帯を巻かれているのを確認すると、呼ばれたローレンティアが通信を試みる。

「こちら6-4、パッケージを無事確保、これより帰路につく、どうぞ」

『了解6-4。帰路は海路だ、どうぞ』

「6-4了解、アウト!」



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