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幸せは昨日訪れる  作者: えるふ
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CASのお仕事

ゼファーはブリーフィングルームの前を通った時に新米に説明する司令の声が聞こえた。


「戦域では君たちのような有翼人が昼夜飛び交っている。

 特に”ダスクライト”と呼ばれる「神の見捨てた地」で―――。

 今やあの国の国鳥だ。

 我々がこの国からあの国まで飛ぶのではない。

 そんな事は承知だろう。すべて君たちが神の見捨てた地で行う。

 ここにいる彼らが諸君に基礎を教える。

 その前にこれだけは言っておきたい。

 我々は国民から叩かれ、感情的な論争も耳にする。

 車のステッカーにも……

 言わせておけ。我々はさらに空軍を増やす。正確には有翼人か

 空軍なんて存在しない事になってる。

 実際には方々で飛んでいる。

 言い換えにはウンザリだ。差し障りのない言葉で表現を濁す。

 標的排除

 局部攻撃

 驚異の無力化

 だが勘違いするな。我々は人を殺している。

 日々諸君の頭に叩き込む。

 これはゲームじゃない。……諸君の半分はサバイバルゲームでリクルートされた。

 ”シューティングゲーム”だ。しかし引き金を引くことは……ここでは実弾だ。

 吹き飛ぶ何かは……人の体。人の血だ……。

 引き金を引けば誰かが死ぬ。

 では……以上だ」


ゼファーはそれを聞いた後ブリーフィングルームに向かう。

「ゼファー、大丈夫か?」

隊長に言われ動きが一瞬止まる。

「はい」

だが弱音を吐く訳にはいかない。

「そうか。次はベスタン地区だ。それと喜びたまえ、CASの仕事だ」

ゼファーは少し喜び、すぐに短機関銃が手渡されると期待したが、すぐにそれは裏切られる事となる。

「20mmガトリング砲と40mm単砲身砲を同時召喚し、高度5000フィートから撃ち下ろしてもらう。あの片眼鏡があればできるはずだ。良い戦果を期待する」






「目標上空です」

『地上軍は発光ストロボで確認できるはずだ。できるか?』

ゼファーは言われてズームする。6人の兵士が歩いているが、その先頭の一人が点滅する明かりを発していた。肉眼では確認できないが片眼鏡ではその発光が確認できる。

「はい。できます」

『それに向かってくるのが敵だ。やってくれ』

隊長からの無線通信を受け取りゼファーはすり鉢旋回に入る。

「特殊召喚開始、4、3、2、1、射撃開始」

バォオオとガトリング砲が火を吹き、ドンドンドンッと40mm砲が速射される。もともとこの40mmは対戦車砲として開発された物だが、いつの間にか空対地用になっている。時の流れとは悲しいものだ。

 地上には雨あられのように降り注ぐ砲弾に、敵は戦線を維持できず後退を開始。

「敵は後退を開始しているようです」

『よし、敵車両を吹き飛ばしてやれ』

撤退の準備をしている車両に標準を合わせ砲を食らわせる。慌てて乗り込んだ車両に弾丸が降り注ぎ敵は混乱している。空からはその全てが見えていた。地上軍であるエルフは恐らく爆煙で何も見えていないだろう。この熱源を立体視できるという機能を持った片眼鏡が時々憎くなる。見えすぎてしまう。暗闇でも霧でも関係なく全てが手に取るように見える。それがたまらなく辛い。


『良いぞゼファー。その調子だ。そのまま残党処理を頼む』

「了解しました」

隊長に言われ即座に目標をソフトターゲットに切り替える。逃げ惑う敵兵士に容赦なく20mmや40mmを叩き込む。


 私は軍人だ。人々を守るために軍属している。そのはずだった。いつからか戦争の模様は「いかに被害を出さずに一方的に殴れるか」に注目が集まり、戦場はそのように移動した。エルフたちはプルーマに協力を依頼し空軍を設立した。それがすべての始まり。私が生まれた時にはすでに空軍はあったし、戦争もしていた。

 軍の宣伝文句「人々を守るために可能性を試せ」。今更だが私は間違ってると思う。だが、私は空軍中佐。不誠実な事は言えない……軍は国の命令に従う。交戦規定も「武力紛争法を遵守。その制限下にのみ武器の使用が許可される」つまり、人々が脅威に晒された場合に武力行使が許される。「脅威なのだろうか?」その問はすぐに消える。地上に居るエルフはまさに切迫した脅威に晒されている。私個人の意見なぞ関係ない。人々は脅威に晒されている!


ゼファーは砲を浴びせ続ける。動くものが居なくなるまで。


『ゼファー、よろしい。暫く上空待機』

「了解しました。待機します」

ゼファーはすり鉢旋回をしながら味方の位置を確認する。ストロボの近くのエルフが手を上げ合図している。下から5000フィート上空のプルーマを即座に把握する能力はエルフならではだろう。ゼファーは見えてると思い敬礼をして答える。

『しばらく陸軍の援護を頼む』

「了解です」

すり鉢旋回をしながら地上を眺めていると、敵部隊は壊滅、残った敵は降伏している。

『すまない、今しがた陸さんから連絡が入った。もう帰って良いそうだ。帰投しろ』

「了解です。ゼファー、帰投します」


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