刻印
「今日、お前の仕事はないよ。帰んな。明日にはあると思うから!」
たまにこういう日がある。日給なので給料が出ない。住む場所はもらっているが、何となく居心地が悪い。すぐ帰るのもはばかられる。
(手持ちはあるし……散歩でも…)
街をゆっくりと歩く。建物が密集し、視野は狭い。見上げれば空も狭い。これでは鳥も飛び難いだろう。
よく観察すればエルフも多い。そして、首元……鎖骨の上あたりに「17」の焼印が見えた。
驚いて他のエルフやプルーマを見る。必ず……それがあった。
ゼファーが着ているメイド服は首元まで隠れる。だが、このメイド服があれば「いらない」と言っていた。それを知っているエルフもいるはずだ。
嫌な汗が流れた。
もしかして自分は同胞すら「敵」になってしまったのではないだろうか
気がつけばこの間の公園に来ていた。あの少女はいつもと同じ場所に座っていた。
「あら、ご機嫌よう。今日は早いのですわね」
「ええ。」
正直助けを求めて来てしまった感が否めない。こんな小さな少女に……確認してしまえば…私は嫌われるかもしれない…。
「どうしましたの?そんな怖い顔をして」
「その……」
ゼファーは少女の頬に触れ、そのまま首…そして、服をそっとずらす
そこにはハッキリと「17」の刻印が刻まれていた。
「やっぱり、ですわね……」
確認した時点で分かっていた……。相手もソレが伝わる、と。
「この刻印を焼入れられた時点で……わたくし達は「物」として扱われる……。わたくしはお幾らで買い取られるのでしょうね?」
こんな小さな少女も関係なく奴隷として取引されている事に驚く前に、少女ですら、このメイド服と刻印の違いを理解していることに驚いた。
そして、同時に怖くなった。
「構いませんわ。人の世界はエルフの社会と違って不平等が基本。これもそうなのでしょう、わたくしは受け入れますわ。ただ……もし、もう少しの運…さえ……あれば……」
少女はこらえきれずに涙をこぼし始める。ゼファーはどうしていいか分からず、抱き寄せていた。
「貴方は……これからどうなるの…?」
「明日の……競り市…次第、ですわ」
ゼファーはそれを聞いて胸が痛くなった。本当に「物」なんだな、と。だから、無意識に腕に力が入る。
「あたたかい……」
もしかしたら…少女にとって……最後の温もりになる。そんな気がした。
ねえねえ、知ってる?こんな悲劇を知ってる?
ねえねえ、知ってる?こんな喜劇を知ってる?




