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僕のとなりには怪獣がいる

作者: 雨雲愚歩

 よく悪い夢を見る。得体のしれない何かに襲われている夢だ。

 それは小さな虫の様であったり大きな獣の様であったりする。

 いつのまにか周りを囲まれていたり、後ろからずっと追いかけてきたり、多分僕を食べようとして襲ってくるのだ。

 でもそんな時、僕のとなりには怪獣がいる。

 僕を襲うやつらを叩き潰し薙ぎ払いそして喰らい尽す。きっと彼は、僕を守ってくれているんだ。

 彼は僕の夢に出てくる度に少しずつ大きくなっているようだ。ちょっと前は僕の腰くらいの背丈だったのに、今はもう僕の肩に並ぶくらい。最初のころはずっと僕の膝くらいの大きさだったように思うのだけれど。

 それは多分、僕の悪い夢がだんだんと酷くなっていることと関係あるかもしれない。前はやつらも数がもっと少なかったし、大きさもこんなに大きくななっていなかった。

 でも最近、例えば昨日なんて僕の掌くらいの蜂があたり一面に飛んでいて僕を取り囲んでいた。それを彼が残らずやっつけて食べ尽してしまった。それだけ食べれば大きくなるのも早くなるのだろう。


 今日、今僕の目の前にいるのは大きな、本当に大きなワニのようなものだ。頭の形を見ればワニというよりはトカゲにも似ている。こいつが立ち上がったらお父さん二人分より背が高いかもしれない。

 そんなのが今、僕の目の前で口を開けている。僕を食べようとしているのだ。

 でも僕のとなりには怪獣がいる。目の前のワニトカゲと比べれば小さくはあるけれど、彼は今までだって自分の何倍ものやつらを喰らい尽してきた。これくらいの差なんか何でもないだろう。

 実際、彼は怯む様子もなく無造作に踏み出していった。ワニトカゲの方が気圧されたようにゆっくりと後退っていく。その間合はじりじりと狭まってゆく。怪獣が一声吠えると、ワニトカゲは身を屈め飛びかかってきた。

 怪獣は潜り込む様にしてワニトカゲの喉元に喰らい付いた。叫び声を上げる暇もあたえず身体を捻り地面に叩きつける。

 ズシンと地面が揺れた。

 怪獣はそのまま二度三度、右へ左へとワニトカゲを振り回し、動かなくなるまで叩きつけた。動かなくなったそれは、もうワニトカゲの姿をしていなかった。

 真っ黒なぶよぶよとした塊と化したそれを、怪獣はゆっくりと食べだした。食べるよいうよりは吸い込むという方が近いか。ズルズルと音を立てて怪獣の口の中に消えていく。

 全てを飲み込むと、怪獣は長く大きく吠えた。

 僕はその姿をただ見上げていた。


 悪い夢は消え去った。僕は目を覚ました。

 ふとカーテンを開け窓の外をみる。

 いつもなら、憂鬱な一日の始まりだと溜息をつく所なのだが、今日は自然と笑みがこぼれた。

 僕のとなりには怪獣がいる。



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