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その後のパンドラ  作者: 緑谷トンビ
1章 罪は雲と、罰は水辺に
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第16話 運命は眠り-6

「うーん、変な事なら幾つかあったな」

俺は歯を磨きながらオルトの話を聞き始める。



「村を歩いてて気づいたんだけどさ、

 ベッセとドアフルだっけ?あの二人がやって来た時、

 帰り際に木を一本吹っ飛ばして行っただろ?」

「ああ」

「その痕跡がさ、もう無かったんだ」

「どういう事だ?」


「オッサンどもが破壊した後に残っていた筈の木の根っこがさ、

 もう掘り起こされて無くされていたんだ。

 結構太い木だったろ?魔法や刻印の力でやるならともかく、

 人手だけで根っこを退かすのは相当骨が折れたんじゃないかな?


 それを村人総出で一日で終わらせたらしい、他の農作業なんかも後回しにしてさ、

 村人の話を盗み聞ぎしたらどうも刻印の力に凄く怯えてるみたいなんだ」


「分からない話じゃ無いさ、誰だってあんなのを見せられたらな」


「でもちょっと異常だぜ?その話をしてた時におばちゃんが一人泣き出して、

 みんな酷く落ち込んだような顔でさ、中には凄く怒ってる人もいて、

 ユイリーがさ...その、村で良くない扱いだろ?ひょっとして何か関係あるのかなって」


「確かにな、ユイリーの事は俺も気になってた。

 いくら刻印持ちだからって彼女はまだ大した力も無い女の子だ。

 必要以上にユイリーは毛嫌いされている。ひょっとしたら村人はユイリーと言うより

 刻印の力そのものを恐れ、嫌悪しているのかも知れない、

 未知への恐怖と言うよりは何か過去にあったんじゃないか?」

「何かって何だよ?」

「分からないが、刻印を村人が嫌う様になる出来事だよ。

 他には?」


俺は言いながら立ち上がり水桶の近くへ行く、

口を漱ぎながらオルトの話を聞く。


「家畜を育ててる爺さんが居たんだけどさ、

 その爺さんが飼ってたのが豚と、鶏なんだ」


タオルで口を拭ってオルトの近くへ戻る。

「それのどこが変なんだ?」


「どうにもサイズが合わないんだよ」

「サイズ?」


「あれは元々、馬か牛かを育ててた厩舎じゃないかな

 だだっ広い厩舎の中に鶏が飼われてるんだ、

 高すぎる柵の間から逃げ出さない様に木の板を後から釘で付け足しててさ。


 水桶も置いてあったけどやっぱりサイズが高くて豚達には届かない、

 素人仕事のぶきっちょな出来の水桶が別に置いてあるんだよ」


「以前は大型の動物を飼っていたが死んだか逃げたかで

 新しく小型の動物を飼いだしたんじゃないか?

 誰かが近隣の町で動物を仕入れて来たのかも知れない」


「でもよ、それなら何で以前と同じ大型の動物を飼わないんだ?

 爺さんさ、豚や鶏の世話が手慣れて無い感じがしたんだ、

 それなのに無理して小型の動物を飼うのは何でだろう?」

「大型を仕入れるには金が足りなかったとか?」

「村に資金力は結構あるみたいだ、フラナタがやり手だからだろうな」

「その老人に聞いてみれば良いじゃないか?」


「聞いたさ、でも答えてくれないんだ。

 『よそ者のアンタらには関係ない』だとよ。

 なんかその話をするのも嫌みたいな風だったんだよ」


「『よそ者には』か、この村には秘密にしたい事が幾つもある様だな」



「それからさ、祭りの準備も手伝ったんだ、大きな女神像があるだろ?」

「村の端の岸壁に刻まれた彫刻だよな?確か巨大な魔獣に襲われて傷だらけの」

「そう、その女神像の周りの装飾を用意したんだけどさ。

 その時聞いたんだよ、巨大な魔獣をどうやって退治したのかを」

「なんだって?」


「どうも近隣のギルドから大規模な討伐隊を連れて来たらしい。

 その討伐隊が魔獣を退治したのが4年前なんだけどさ、それがどうも変なんだ」

「変?」

「魔獣が襲ってきて、それを退治した時の傷跡なんだよな?

 でもさ、近くで良く見るとあの傷、新しいのと古いのがあるんだよ」

「傷のついたタイミングが違うのか?何故そんな事が分かった?」


「あの岸壁、奥深くまで掘ると中に土壌があるみたいなんだ。

 それが大きな傷で掘り起こされて日光と空気に触れて雨水も染み込んで、

 それで植物が育ってるんだけど、その成長具合が傷によって違うんだ」

「なるほど...な」


「村の人の話が聞こえたんだけど、

 『去年は随分と増えた、でも今年からはもう増えない筈だ』って、

 あれって崖の傷の事じゃないかな?」

「『去年は』って言い方だと、毎年増えているのか?その傷は」




「俺の方はこれくらいかな?そっちは何かあったか?」

「そうだな、俺の方も村人の様子に違和感を感じたのと

 村人が何かを俺達『よそ者』に隠している事を確信したよ。

 多分フラナタやユイリー、リサさんや長老もだ。

 

 それと、ずっと気になっていた事がある」


「なんだよ?」


「フラナタが言っていたよな?パンドラと洞窟の噂を否定する為に

 各町や村に出向いたって」

「ああ、そうだな」


「フラナタ達の旅は6日程かかったらしい、それがおかしいんだ」

「おかしいって?」

「オルト、俺達も必死でパンドラの情報を集めながらここまで来ているだろ?」

「ああ、それが俺達の旅の目的だしな」

「人の噂話は勿論、情報屋にも時に高い金を出しながらやっとパンドラがこの地方に

 いる事を知った、その情報を頼りにあの海竜船団で聖都を目指す予定だった」

「魔法教会が根を張った土地の一つだからな、パンドラの情報がありそうだもんな」


「ああ、そしてその直前に港町で手に入れたんだ、パルクアの洞窟と魔神の話を」

「確かに...変かな?俺達がその情報を仕入れたのが俺達が村に着く4日前か?」


「そうなんだ、それまで必死に金まで使って情報を探してた俺達はその港町で急に魔神の

 噂を耳にする。それまで魔神の情報だって集めていた、パンドラの行き先の大きな手掛かりだからな。

 なのに港で情報に出会う前は少しの手がかりも無く、港町で急に。

 なあオルト、それ以前にはひょっとしてその魔神と『愚者の迷宮』の噂は存在しなかったんじゃないかな?」


「つまり俺達が村に着く4日前かその前後にその噂が生まれたって事か?」

「そう考えた方が自然だ、それくらいに俺達は情報を集める事だけに集中して

 旅をして来た。港町に着いてからは金なんか払わなくても噂話が聞こえて来た

 くらいだ」


「存在しなかったか、だとしたらフラナタ達は?」

「そう、もし噂が存在しなかったとしたらフラナタ達は僅かに早いんだ。

 動き出すのが。フラナタ達はどこからその情報を仕入れたんだ?

 それに大して噂話が流行って無いのに彼女たちは噂を否定しに旅に出た事になる」


「うーん、噂が広まるのが分かっていた?」

「あるいは...」



「おお、ここにおったか」


ジャリ、ジャリ、


店の入り口の方から一人の老婆がこちらへ向かって来る。

老婆は背中に眠った女の子ををおぶっている。


「長老、どうしました?」

「タコリスや、お主を探しておったんじゃよ」


「ばあちゃん結構元気だなぁ、背中のユイリー重くないか?」

「ハハ、楽しすぎて寝てしまったみたいじゃのう。

 その点はお主らに感謝しておるよ」

「いえ、こちらも随分と助けられてます。

 それで、俺に何か用ですか?」


「うむ、タコリスや、明日もワシの家に来んか?」

「長老の家へ?身体は今は大分楽ですが?」

「お主の体も一応診ておきたいがの、

 それとは別にお主に相談があるんじゃ」

「相談、ですか?」

「うむ、もし良ければ...いや、是非来て欲しい。

 お主一人だけで、内密にな」


「内密に...分かりました。では早朝にお邪魔します」

「うむ、すまんの。くれぐれも内密にな?」



長老はユイリーを背負って家へ帰って行く。俺はオルトと別れて寝る事にした。



次回は4月3日金曜日に投稿予定です。

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