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その後のパンドラ  作者: 緑谷トンビ
1章 罪は雲と、罰は水辺に
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第16話 運命は眠り-5

「心の準備は良いかしらオルト?」

「なんだよ、もったいぶるなぁ」

半ば挑発的なフラナタの態度の前でも俺の友人はのんびりと構えている。

オルトは窓側のベッドに腰かけ、俺とフラナタは部屋の入り口側のベッドに

並んで座り、二人でオルトに対面した。



「フフフ、これはね、私が町で同年代の女の子に教えて貰ったんだけど

 都会で今すごく流行ってるんだって」

「ふーん」

「今から出す質問にオルトが答えるとね、なんとオルトの心の中が丸分かり、

 オルトも知らないオルトの本音も分かっちゃうんだって」

「俺が質問に答えるんだな?良いぞ、始めてくれ」


「では、

 第一回、心理テストクイズ!

 タ、タコリス!?」


「お、おう!オルト君、こ、答えられるかなー?」


俺は全力で愛想良く元気に盛り上げる。

オルトはポカンと口を開け、俺を見ているが、

相変わらず何考えてるか分かんねえ表情だ。


「タコリス、お前ってさ」


「おう、何だ?」


「たまに結構バカだよな?アハハハハ」


「て、てめえ...誰のせいで俺がこんなバカみたいな事を...」


「タコリス!」

フラナタが怖い顔で俺を睨む。

「あ、ああ、オルト君、真面目に心理テストに答えようねー?」

努めて笑顔を作るが俺の顔がひきつっているのが自分でも分かる。


それを見て俺の能天気な連れは余計に笑っていやがる。

「アハハハ!なんだそれ!?面白えな、ったく...ハハッ。

 良いよ、答えるよ、言ってみな?」


怒りに震える俺を押しのけフラナタが強引に進行を進める。

「じゃ、じゃあ行くわよ!?

 第一問、貴方の目の前に三つのドアがあります。

 ドアの向こうには最近知り合いになった誰か、あるいはまだあまり親しくない知人の誰かがいます。

 ドアの向こうには誰がいますか?それぞれのドアには色が塗られてるわ。


 白いドア、黒いドア、赤いドアよ。

 さあオルト、どのドアの向こうに誰がいるのか想像して」


「うーん、三つのドアな、うんうん...

 よし、想像したぞ」



バカめ掛かったな?この質問にお前がちゃんと答えてフラナタの

機嫌が戻れば俺のお勤めも終了だ。後は俺でも何考えてるか読めないこいつが

フラナタの期待通りの答えを言ってくれるかだ。


「じゃあオルト、赤い扉の向こうには誰がいるの?」

「赤はリサさんだな、なんとなくで良いんだろ?赤はリサさんがいたよ」

赤はリサさんか、まあ順当かな?

「そう!リサがいたのね!?へえ、そうなのぉ」

フラナタはニコニコと愛想良く質問を続ける。


「じゃあオルト、黒いドアの向こうは?」

「黒は長老だな」

よし!良いぞ、黒は長老か、ここでユイリーが出なかったのはデカいぞ。

隣を見るとフラナタのやや嘘くさい愛想の良さからも、本心からの喜びがにじみ出ている。

「そう、黒は長老なのね?分かった、伝えておくわね!」

「え、何を?」



「じゃあ、オルト、最後なんだけど...」

よし、ここが本命だ。この心理テストでは自分が相手をどう思っているのかが分かるらしい。

「白いドアの向こうには誰がいたの?」


白いドアは、相手と気が合い、恋愛関係になる可能性があり、相性が良い!

ここだ、ここで彼女の名前が出れば満点だぞ、フラナタの機嫌も途端に良くなるはずだ。


「白はそうだな...」


俺とフラナタに緊張が走る。

「白は?」

「白は?...誰だ!?」



「白は、あ...ユイリー」


そいつは間の抜けた顔で俺達が望む正解を言い放った。


「ユイリー!?ユイリーなのね!?」

「お、お前マジか!?」

「キャー!どうしよう!どうしようタコリス!?」

「お、落ち着け、取り敢えず、あれだ...良かったな!?」

「うん!」

フラナタははじける様な笑顔で答える、出会ってから今までで一番の笑顔だ。



「いや、お前ら何喜んでんの?だから、ほら、ユイリーだって」

「うん!そうよね、ユイリーよね!?」

「そうか、ユイリーか、いや、正直俺は年齢がどうかなと思ってたんだけど、

 まあ年齢差で考えたら三つだもんな、まあ、大丈夫なのかな?」

「そうよ!何も今すぐどうこうって訳じゃ無いんだし、

 大丈夫、私がしっかり見守るわ!健全に、健全によ!?」

「あ、当たり前だろ!?安心しろ、そこまでオルトは...」



「ねえ」



澄んだ少女の声が背中に触れる。


俺達の全身の毛が逆立つ、心臓が胸を破って飛び出しそうだった。


「みんな何の話してるの?」


後ろを振り返ると部屋のドアが開いていた。

その奥からユイリーが無垢な笑顔でこちらを見ている。


「あ、ごめんね。ドアが開いてたから、

 ねえ何の話?私も混ぜてよ」

ユイリーは無邪気に笑って部屋に入って来る。


オルトは間の抜けた顔から、思い出したようにヘラヘラと笑い出した。

「そういやドア閉め忘れてたな、さっきリサさんに謝った時にさ。

 ハハハ、まあいっか。ほらな?さっきからユイリーが来てるって言ってるのによ。

 お前ら何か、はしゃいでっから」



「お前なあ!!?」

「うお、びっくりした」


「し、心臓止まるかと思った...」

「大丈夫フラナタ?どうしたの?」



「あ、開けたらちゃんと、閉めろよなあ!?」

「な、なんだよ、悪かったよ。そんなに怒る事かよ?」

「怒るよお!!」

「わ、悪かったって。お前今日何か変じゃないか?怒ってばっかで」

「怒ってねえよお!!」


「ちょっと!あんたたち!?

 うるさいっつってんでしょう!!」


リサさんに二階にいた全員が叱られ、一旦解散となる。



その場を何とか誤魔化す為にフラナタが『せっかく来たのに...』と

部屋での話に混ざろうとするユイリーを何とか下に連れて行く。

俺は息を整え、心理テストの答えを聞きたがる友人を何とか誤魔化した。(主に理不尽な怒りで)




「ハア、まああれだ、楽しかっただろ?」

「お、おう。そう、だな?」


さて、フラナタ達も一階に行った事だし、

俺とこいつはそれなりに深い付き合いだ。

ここからは大人の話をしようじゃないか。


「なあオルト、お前さ」

「なんだ?」

というか、今みたいな事が続いたら心臓が幾つあっても足りゃしない。

俺は壁にもたれかかってベッドに座っているオルトに落ち着いて話しかける。


「まさかお前とこんな話をする事になるとは思わなかったんだが、

 お前、恋愛についてはどう思うんだ?」

「恋愛?んー、そういう話が好きな奴はいるみたいだけどさ、

 俺は良く分かんないなぁ。今まで周りに女の子もいなかったじゃん?」


「そうか、だがな?今は周りに少なからずいる訳だ。その、女の子がな?」

「んー、まあいるな。長老の婆ちゃんとかか?ハハハ」

「いや、真面目な話だぞ?真面目な話、これからあり得る訳だ。

 例えばお前が誰かを好きになったり」

「今んとこは無いけどな」

「とはいえだ、お前が誰かから好かれる事だってあるかも知れない」


「ハハハ、無いだろう?」

「お前は何を根拠にそんなに自信持って自信が無いんだよ?

 分かんないだろ?魔王だって人間界滅ぼすとか言って世界中をびっくりさせたんだ。

 ズボラでトロくて普段何考えてんのか分かんないお前を好きになる子だっているかも知れない」

「お前はあれか?俺の事が嫌いなのか?」


「もしそんな時はお前にも心構えが必要な訳だ。相手とどうなるかは置いといて、

 相手を傷付けない様に、悲しませない様に、お前、デリケートって言葉分かるか?」

「なんだよもう面倒くさいなあ、ありえないって、想像出来ないよ」

「それはこっちのセリフなんだよ、まあ良い、それより

 良く思い出してみろ、誰もいないか?お前を気に掛けてそうな人が」


「いないって」

「本当か?いっつもお前を見てる様な」

「うーん」

「いっつもやたらと話しかけてくる様な」

「ああ、まあ...」

「お前と話してる時に凄く楽しそうにしてる子だよ」



「いる、かも...」


「そうか、いるか...」


「うん、そういえばいっつも話しかけられるし、何か見られてる気がするし、

 いつも楽しそうだし」


「そうか、分かってくれたか。俺はとやかく言うつもりは無いんだ。

 ただ相手が真剣な気持ちならお前もちゃんと真剣に考えてあげないとな、

 思わぬ所で傷付けてしまう事もある」


「そうか、俺全然気が付かなかったよ」

「いやあ無理も無い、俺も驚いたよ」

「そうか、もしそうなら確かにちゃんと考えないとな。

 教えてくれてありがとうなタコリス」

「良いんだ、俺とお前の仲だろ?俺で良ければいつでも相談には乗るからな?」

「ああ、ありがとう。そうか、まさか彼女が...」


オルトはベッドから立ち上がり窓際で深刻そうに外を見る。


「まさか、リサさんが俺を...」

「おいテメエ寝ぼけんなよ?」



オルトは真剣な顔で語りだす、俺は頭が痛くなってきた。

「合点がいくよ、全て辻褄が合うんだタコリス!」

「ハァ...何のだよ?」


「だってさ、しょっちゅう話しかけられるし」

「『食器を早く戻しなさい』とか、『寝巻の着方がだらしない』とかだよな?」

「俺が飯食ってる時なんか凄く楽しそうだし」

「お前が小金を手にして追加注文しまくるからだろ?」


「それにさ、気が付くと俺の方を見てニヤニヤ笑ってる時があるんだ。

 この前もユイリーと一緒に話してたら遠くの方から嬉しそうにこっち見てるんだぜ?」

「それは...リサさんの趣味だ」

「そうか、俺みたいなのが趣味なのか」

「段々突っ込むのも面倒になって来た」



「あんた達ー、晩御飯できたわよー。冷める前に降りて来なさーい」


「リ、リサさんだ!どうしようタコリス?」

「どうもこうも無え、メシだ。何か凄く疲れた。

 良いか?変な事言うなよ?まだ好かれてるとは限らないぞ?

 良いな?絶対変な事言うなよ?落ち着け」

「分かったよ、へ、平静に、クールにな?」





「遅かったわね二人共」

フラナタはユイリーと並んで店のテーブルに腰かけていた。

「ああ、メチャクチャ腹が減ったよ」

俺はため息交じりに返事をして椅子に座る。

「フフ、もうすぐリサがゴハン持ってきてくれるよ」

「手伝いに行こうか?」

「私も手伝おうとしとけど、座ってしゃべってなさいって」

「そうか、じゃあ楽しみに待つか...おい、オルト

 座れって、ソワソワすんな」


「お、おう...」

オルトは落ち着きない様子で厨房の方を見ていた。

ユイリーが不思議そうにその顔を見上げ、フラナタが声をかける。

「オルト?リサがどうかしたの?」

「り、リサさん?ああ、そうか、

 リサさん居るのかぁ、全然気が付かなかったよ。

 全然、意識して無かったなぁ、そうか、リサさん居るのかぁ」

目を泳がせながらオルトは椅子に腰かける。

「居るに決まってるでしょう、リサの店なんだから。オルト、大丈夫?」

「だ、大丈夫だ、もちろん、

 ハハハ、平静、ク、クールそのものだよ俺は」







リサさんが両手と両腕に器用に沢山の皿を乗せて俺達のテーブルに

料理を運んでくれた。


「はーい、お待たせ。

 ジャンジャン食べてね?特にオルト君」

「は、はい」

「私あなたみたいな沢山食べるお客さん大好きよ!」

「やっぱり...そうなのか」

オルトは俯き一時、言葉を無くす。


「え?何?なんか元気ないわね?お腹でも痛いの?

 ちょっと、沢山食べるのよ?久々の外からのお客なんだから」


リサさんもフラナタとユイリーも様子のおかしいオルトを見ている。

俺は焦ってオルトに声をかけた。

「おいオルト、落ち着けよ?『お客さん』が大好きだってよ。

 『お客さん』だ」

だがオルトは俺の話を聞いていない。



「さっきから何で俺の事ばっかり心配するんですか?」

「そりゃ私はいつだって金ヅル...じゃ無かった。

 お客さんの健康は心配してるわよ」

「う、嘘だ...

 リサさん、俺分かってるんです。リサさんの本当の気持ちを」

「はあ、そうなの?」


「ええ、でも俺がこの村に来たのはそれなりの覚悟と、それなりの事情があって来たんです。

 今の俺にはウツツを抜かしている暇なんて無いんです」

「うーん、話が見えないわオルト君、取り敢えずゴハン食べたら?何なら追加注文も...」

「平気な振りはやめて下さい!俺だって辛いんです!」


オルトの突然の大声にフラナタが不機嫌に眉を顰める。

「ちょっとオルト、お行儀が悪いわよ。もう少し静かに食べなさいよ」

フラナタの声はオルトには聞こえていない、というか誰の声も聞こえていない様子だ。

「俺だってこんな状況じゃ無かったら、そうじゃ無かったら!あなたと!」


ガタッ、


男は立ち上がり強く拳を握り締め、走った。

迷わずに、明後日の方向へ。


「どうしてもっと早くに出会わなかったんだあああ!」



男が店を出て行った後、三人の女は男の身を案じている。


「どうしよう、オルト君変な物でも食べたんじゃないかしら?」

「オルトはこの店でしか食事して無いわよ」

「バカ言わないでフラナタ。

 もちろん他所でよ、拾い食いとかしたかも知れないでしょ?」


「どうしよう、私見に行った方が良いかな?」

「大丈夫だよ、あいつの頭の具合はあれでいつも通りだ」

俺は不安そうなユイリーに声をかけて料理を食べ始める。


「あのバカちゃんと帰って来るのかな?

 正直どっちでも良いけど」






メシも終え、風呂に入り外で歯を磨いていると

ある意味絶好調な俺の友人がやって来た。夜もすっかり更け切った今頃に風呂に入るらしい。


「よう、戻ったか。

 ちゃんとお前の料理食ったのか?残してあっただろ?」


「ああ、リサさんに怒られたよ、『食べ物を粗末にしちゃいけない』って

 彼女...無理してるよな?」

「いや、もう良いよそれ。それより座れよ」


俺は側の大きめの石に腰を下ろす。

「おお、どうした?」

オルトも隣の逆さになった空桶に腰を下ろした。

「オルト、お前昼間はリサさんと村を回ってたんだろ?」

「ああ、色々とリサさんの用事を済ませて、

 あと年寄りの仕事の手伝いもしてな」

「話を聞かせて欲しい。何かこの村で変わった事を見たり聞いたりしてないか?」


「変わった事か、そうだな、幾つかあったぞ」


次回は3月31日火曜日に投稿予定です。


作者本人はあまり心理テストに詳しくありませんが一応書かせてもらいます。

以下が白いドア以外の心理テストの答えになります。


黒いドア→恐れていたり、苦手意識を持っている相手、ただし自分に似ている部分もある様で

     学ぶべきところも多く持っている相手の様です。


赤いドア→今一番興味を持っている相手であり、相手の事を知りたい、

     もっと親しくなりたいと潜在的に感じている相手だそうです。

     ただ、相手のこちらへの気持ちとは別にこちら側が勝手に相手の気持ちを勘違い

     (相手に好かれている等)してしまう事がある様です。冷静に距離を置くべき相手、  

     とのことです。

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