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その後のパンドラ  作者: 緑谷トンビ
1章 罪は雲と、罰は水辺に
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第15話 災いは鮮血に溺れ-9

「槍使い、ジジイの奴はしくじった様だな、

 良いぜ、てめえの首も欲しかった所だ、纏めて殺してやる」


槍、使い?

彼は槍を使うのだろうか?

剣は持っていない、

ダメだ、頭が回らない。


「剣士ベッセ、来いよ、向かって来い」


青年は私越しに剣士を睨む、その後ろには赤っぽい髪の女が不安そうな目でこちらを見ている。


「少しは手応えも増す、殺し甲斐も増える」

ベッセは私の事が眼中に無い様だ、マズい、完全にバレている。

青年を見据えたまま再び歩みを進めて来る、


そして、その男は徐々に、徐々に、

空を飛んだ。


空中に浮いている、バカな、刻印は持っていないと

あの男自身が言っていた筈、一体なぜ?


「て、てめえ!ドアフル!!」


「そこまでだベッセ」


ナイフを持った男が空中から自分の仲間に怒鳴り声を上げる。

見ると奥の大男は空中のベッセを掴む様な仕草で片腕を伸ばしていた。

大男の手の甲が輝きを放っている、あれは刻印の光だ。


「てめえ、ぶっ殺すぞ!...く、クソ!」


ベッセは空中で藻掻くが胴体を大男の刻印でがっしりと掴まれている様だ。

ドアフルと呼ばれた大男は槍使いの青年に目線を送り

友人に話すかの様に楽しそうな声で話しかけた。



「よおタコリス!また会ったなぁ、でもよ、

 自分が戦うと言う割にはよお、

 女の後ろに立ったまま出てこないのは、お前らしく無いんじゃないか?」


それを聞き青年は険しい表情で一歩、また一歩と

歩みを進め大男の元へ向かおうとする、そして、


ガクッ!


「ハア、ハア、ハア...」


青年は勇敢に構えていた筈の自分の槍を地面に突き立てて

崩れそうな体を必死で支えていた。


「タコリス君!やっぱりまだ無理よ!」


女が青年に駆け寄る、青年はその女の手を振り払って遠ざけた。

「リサさん、ハア、ハア...離れて」


その様子を見て大男は笑みを消して一言だけ青年に言葉を残した。

「またやろうぜタコリス、次は負けねえ」

 

その間も空中に吊り上げられたベッセは大男に向かってクソだのバケモノだのと

罵りの叫び声を上げていた、それを気にする様子も無く大男は私の方を見ながら

空いた方の手で握り拳を作って力を貯める。


「話にだけは聞いていたが、お前がパンドラか。

 子供を盾にするとはな...」

男が拳から刻印の力を放つ、


ドガアアアアン!!


強烈な爆発音が響き衝撃が地面から、そして一瞬の突風から伝わって来る。

破壊音のした方に目をやると、村の外れにあった大木が地面に根元だけを残して

その殆どが消し飛ばされていた。


赤茶色の髪の女が恐怖に顔を歪める。

「な、何なのこいつら?これが刻印の力なの?」

田舎の村では見る機会も少なかったかもしれない、

村の人々も目の前の光景が信じられないかの様に怯えた様子だ。



大男がその片腕を真っすぐ私の方へ伸ばす、


私はもう一度自分の剣に手を伸ばそうとするが敵わない、

私の両腕はいつの間にか膝に置かれ、崩れそうな自分の体を必死に支えるだけで精一杯だった。

大男の刻印の力が目の前に迫って来るのが分かる、そして、


ズボッ


私の側の地面に刺さっていた剣が引き抜かれ宙に浮かんだ、

大男の手元へ移動していく、それを受け取って大男は踵を返し私達に背を向けた。


「お前とも、いつかやり合う事があるかもな?

 その時は手加減しねえ」


そう言い残し男は空中に喚き続ける仲間を持ち上げたままこの村を後にした。




静寂が戻った村、人々は息を飲み私を見ている。

私はその中で絶え絶えの意識の中、災いの箱に呪力を注いでいる。


消え落ちる最中の意識はまるで夢の中の様に全てがぼやけて感じられた、

その中に青年の姿が見える、恐ろしい表情で、わたしを見ながら近づいて来る。


彼の声が聞こえる。


「パンドラ、お前は...俺が、必ず」


ぼやけた視界は狭く、その姿だけが映る。

ぼやけた感覚はその声で埋もれてしまう。


気付くと青年は地面に倒れていた。

私はそれを眺めている。



逃げて来た


嘘をついた


汚して来た


私の罪は、どれだ?



ドッ



大きな音が響く、多分本当は小さな音だ。

でも今の私にはとても大きく聞こえた。


私は地面に倒れている、すぐ横には青年の顔があった。


もう無理だ、


もう全てが動き出す。









「おい、大丈夫か?

 フラナタ?」


「ええ、大丈夫よオルト」


「まったく、だあれもワシの言う事を聞きゃあせん」


「そ、村長、どうするんだ?」


「変わりません、予定通りパンドラは村へ迎え入れます。

 皆さん、パンドラとタコリスを運んで下さい。

 彼女は今ここで死なせてはいけません」


次回は3月13日金曜日に投稿予定です。

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