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その後のパンドラ  作者: 緑谷トンビ
1章 罪は雲と、罰は水辺に
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第11話 二人の目覚め-7

親子のいる部屋を出るとユイリーとフラナタは

一度自分達の部屋に戻る事にした。


二人の青年も部屋まで送ってくれると言って付いて来た。

流石に自分達の部屋まで行くのに危険は無いと思うのだが。


「まあ本当は暇なだけなんだけどなぁ」

オルトが明るく笑いながら言う。


しばらく海竜の横顔を皆で眺めながら船の甲板を歩く。


「ねえユイリー」


「うん?なあにフラナタ?」


「ユイリー凄かったよね」


「え?何が?」


「だってさ、リコが泣いちゃった時私にはどうする事も

 出来なかったけどユイリーが手品を見せたら

 泣き止んでくれたでしょう?」


「あれはただ、思い付きで」


「その後も二人の面倒をしっかり見てたし」


「ただ一緒に居ただけだよ」


「そんな事ないわ、二人共すっかり懐いてたし

 なんだかもう立派なお姉さんだね?」


「そ、そんな事ないよ、私はただ...」


「なあなあ」


二人の会話をオルトが遮る。

「手品って何だよ、ユイリーがやるのか?」

「ああ、俺も気になったんだ。

 良かったら俺達も見てみたいな」

タコリスも興味深そうにユイリーの顔を覗く。


「あ、あの、私、そんな凄い事は...」

ユイリーは恥ずかしがってフラナタの後ろに隠れてしまう。


「だーめ、ユイリーの手品は秘密よ」


「なんだよぉ、気になるじゃんかぁ」

「止せよオルト、俺達ちょっと怖がらせてるみたいだ」


それを聞きユイリーは慌てて謝りだす。


「あ、あの、ごめんなさい、私...

 そうだ、私コップ下げて来てるから、

 あそこの調理場の物なの。


 戻してくるから皆ここで待ってて下さい」


「あ、俺も行くよ、

 あの部屋窓が荷物で塞がっててさ、

 ちょっと暗いんだよなぁ。


 この時間は人も使ってないみたいだし

 ちょっと怖いだろ?」


「だ、大丈夫です。

 直ぐ戻ってきますから!」


ユイリーは恥ずかしさで顔を赤くして早足で調理場へ歩いて行く。





確かにこの部屋は少し暗い、転ばない様にしないと。


ユイリーは水の入った桶の近くまで行きその桶の水でコップを

丁寧に洗って布で水けをふき取る。


棚にそのコップを戻す前に

側のテーブルに置きユイリーは、

白い帽子のツバを両手で内側に引いて頬に寄せる。


「えへへ、お姉さんかぁ」


今日は本当に楽しい、フラナタと一緒に船の旅、

大変な事もあったけど二人の兄妹にも知り合えて、

兄妹のお母さんも薬を貰って、早く良くなると良いな。


二人の商人は、まだ少し怖いけど悪い人達じゃなさそうだし。



村に帰りたくないなぁ、ずっとフラナタと一緒に旅が出来たら良いのに。

でも帰らないと、フラナタは村長さんだし、

それに...



ググッ



いつの間にかユイリーの口元にあった大人の手は

力強く彼女の口を抑えつけ、その力を強める。


最早少しもしゃべる事は許されず、

体の殆どの自由も同時に奪われていた。



「少し、待ったよ」



誰?私の後ろにいるのは?

この声、聞き覚えがある。


「君達がここから出て行くのを見ていた。

 

 夜、行動を起こしても良かったんだがね、

 船団の中じゃどの道動きづらい物だ。

 だからヤマを張って待っていたんだ。


 どうやら完全にツキ見放された訳じゃなさそうだ」



この声、さっきリコの手当てをしてくれた人だ。


どうしよう?外のフラナタ達に気づいて貰わないと。


体が動かない。


背中の大人は左手でユイリーの口を塞ぎ、

右手を自身の腰元にやる、腰のベルトに元々挟んでおいたのだろう、

長めの布を取り出した。


それでユイリーの口を塞ぐつもりだろうか?


今の内なら男の拘束は左側だけだ、

ユイリーは懸命に暗がりの中で右手を伸ばす。


なんとか、届かせないと。






「しかしなぁ」


オルトは大きなリュックを背負ったまま船室の壁にもたれかかる。


「50ルクが20万ルクになったと思ったら

 結局50ルクで売っちまうんだもんな。

 今夜の晩飯もモコの実かぁ、あれはデザートであってよぉ、

 普通晩飯にはならないぜ?天才商人さんよぉ」


タコリスは両手の荷物を甲板に下し少し不機嫌そうに答えた。


「良いだろ?腹は膨れるんだからさ。

 男が細かい事をグチグチ言うなよ」


「何処が細かいんだよ?

 俺が16とお前が17だろ?まだまだ育ち盛りだ。

 甘いモコばっかり食ってたら背も伸びないんだよぉ」


フラナタは人混みで一度乱れた衣服に

ほつれが出来て無いか確認しながら口を挟む。


「しょうがないわよ、その商人さんは全然反省なんかしてないわ。

 ほっといたらまた困ってる誰かに商品あげちゃうんじゃない?」


「へいへい俺が悪かったよ、

 ぜーんぶ俺のせいだ」


「そうだぞ?ぜーーーーんぶお前のお陰だぁ。

 先が思いやられるよなぁ」


「そういえば二人はどこまで行くの?」


「俺達はさぁ、この河沿いのどっかの林を

 抜けた先にあるパルクアの村に行くんだ。

 明日には着くんだっけ?」


「え?」


村の名前を聞き驚く顔のフラナタにオルトは尋ねる。


「お、知ってるのかフラナタ?」


「ええ知ってるわ...でもどうして?

 あんな何も無い小さな村に何の用があるの?」


「まあちょっと野暮用だよなぁ」

「オルトお前さ、野暮用の意味分かって使ってるか?」


「二人とも、あのね、

 あの村には最近良くない噂が立ってるのよ。


 パンドラって女の事は勿論知ってるわよね?

 そのパンドラが」



ガチャンッ!



甲板を行きかう人々が生み出す雑音に比べると、

その音は微かなものだった。


「何?今の音?

 中からだよね?」

そう言ってフラナタは調理場のドアに目をやる。


「そういえば、少し遅いか?ユイリーは」

タコリスは調理場のドアに手を掛けそれを開けながら声をかける。


「ユイリー、大丈夫か?」


タコリスがドアを開けると床に割れたコップ、


誰も居ない部屋、


そして奥のドアが開いたままだった。



「オルト!周りを見てくれ!!彼女が居ない!」



タコリスに続いてフラナタも部屋に入る、

彼女はタコリスに尋ねる。


「どういう事?ねえユイリーは!?」


「コップが割れて彼女が居ない、黙ってどこかへ消える様な子じゃ無いよな!?

 普通の状況じゃないのは確かだ!」


タコリスは奥のドアに向かって走り出す。

ドアの外へ出て右や左を見渡すが視界の中に異変は見当たらない。

行きかうまばらな乗客が見えるだけだ。


「誰か!誰かここで女の子を見なかったか!?」


その様子を見た一人の男がタコリスに話かける。


「さっきここを女の子を抱えた男が走って行ったよ。

 『娘が病気だ』とか言ってたけど、違うのかい?」

 

「どっちへ行った!?」


「あ、あっちだ、船団の後ろの方へ行ったよ」


「フラナタはオルトと一緒に居ろ!

 俺が追いかける!」


そう言ってタコリスは両手の荷物をその場に残して走って行った。

 


次回は12月17日火曜日に投稿予定です。

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