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その後のパンドラ  作者: 緑谷トンビ
序章 二匹の虫
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第10話 英雄の空ー12


「やっと小難しい書類を片付けて、家で寝る予定だったのによ」

 

「ミルロに捕まったのが運の尽きじゃのう」


「良いじゃねえかよ隊長の特務隊、隊長就任祝いなんだからよ」




いつも寄っていた酒場、いつも顔を合わせていた面子。

2人の部下と一緒に酒を飲むのも久しぶりだ。

最近は特に城での雑務が忙しかったからな。

城から帰る途中で俺はミルロに呼び止められた。



「しかしその時のミルロには驚いた。

 汗だくになりながら必死で剣の素振をしてたんだからな」


「仕方ねえだろ?誰かさんが勝手に俺を

 次の隊長に推薦しやがったんだからよお。

 ゼタ隊長の後釜ならディッケス爺さんのが適任じゃないのか?」


「ワシはもう歳じゃからのう、隊長に就任しても

 直ぐ次の隊長を探す羽目になる」


「何言ってんだよ、でけえ声で俺を怒鳴りつけるくせによ、

 まだまだ、くたばりそうに無いぜ」


「お前さんが立派な隊長になったらワシも落ち着くよ。

 それまでは大声を出さにゃならんのう」





「しかしよ、隊長が騎士団に入って半年、

 たったの半年でもう騎士団のエースだもんな。

 一体どうなってんだ?ひょっとしてよ、

 ゼタ隊長は物凄い幸運の持ち主なんじゃないのか?」


「エースは言い過ぎだろう?」


「いいや実質エースだ。

 特務隊の顔触れを見たけどよ、

 錚々(そうそう)たるモノじゃないか?

 殆どがトップクラスの『傷有り』だ、

 あの連中の指揮を隊長が取るんだろ?」


「まあ、そうなるな。

 上手くすりゃ給料も上がるな」


「やったぜ!そしたら奢ってくれるんだよな?」


「お前が奢ってくれるんじゃないのか?

 まあ、良いけどよ。

 しかしそれも戦場で上手く勤めを果たせれば、だがな...」


「何だよ、自信ないのか隊長?

 そんな難しい任務なのかよ?

 ...やっぱ、それだけ危険なんだよな?」


心配そうに見る部下の顔を見て

少し笑って見せる。


「フッ、いや、難しくは無いさ。

 動いてくれる駒は優秀過ぎるくらいだからな?

 どちらかと言うと、気疲れが心配だよ」


「何だよ、相変わらずお気楽だな」


ミルロは少し安心した様に笑う。

俺は話題を変える事にする。




「しかし意外だ。特務隊は極秘任務を扱う。


 その特務隊をわざわざ国中にお披露目するとはな。

 俺はもっと目立たない様に戦場に行く事になると思ったが。

 お前たちにも言えずに出陣するかもと」


「まあ、国民の士気昂揚の為じゃないのか?」


「とは言ってもな、国の中に密偵が潜んでいても不思議じゃないんだぜ?

 士気高揚だけなら騎士団を使えば十分の筈だがな」


「確かに、少し妙じゃのう」


「気にし過ぎだろ。騎士団の連中だけじゃ

 顔触れに迫力が足りなかったのさ」




「ふむ、隊長殿、心配だからという訳じゃ無いがのう

 任務の前に渡しておきたい物があっての」


「なんだ、爺さん?」


「これじゃ」


ディッケスは懐から小袋を取り出した。

袋の口を広げると中に黒い小さな塊がいくつか入っていた。


「これはワシの爺さんがくれた丸薬じゃ、

 飲めば一時、仮死状態になり徐々に体の傷を癒して体力を回復させてくれる。

 こいつを使えば一級品の死んだふりが出来る訳じゃ、

 しかも体力も回復してくれる。

 戦場に行くなら、いざという時役に立つかもしれんのう。

 抜け目ない隊長殿なら誰よりも上手くこいつを使える筈じゃ」


「あ、ありがとうよ、だがディッケス爺さんの爺さんが渡してくれたんだよな?

 ...大丈夫か?その、食ってもよ」


「大丈夫じゃ、なんと千年も持つと言われておる!」


「そうか、胡散臭さが増した様な気がするが、

 ま、有り難く頂いておくよ」


俺は貰った丸薬の小袋を大事に仕舞う。


それを見てミルロがひきつった顔で言う。

「おい隊長、貰うのは良いけどよ、

 それを股間に仕舞うのか?その股間から出して食うのか?」


「当然だ、最後の最後までボディチェックを掻い潜るのは股間だからな」


「...時々思うんだかよ、

 俺達の隊長は中々にクレイジーな人だよな、爺さん」


「ハッハッハッ!そうじゃのう、

 隊長が爺さんになったらまた誰かに譲ってやりなされ!」


「よし!良いだろう、

 ここは可愛い部下であるミルロに譲ってやる。約束しよう!」


「いらねえよ!なんの嫌がらせだ!」





「隊長さん、お客さんだよ」


見ると酒場の店主が人を連れて来ていた。

店主と一緒に来たのはフィル団長補佐だ。


「ゼタ、ウチの団長から言伝だ。

 『今日の夜、いつもの場所で』だとよ」


彼女はけっして上品とは言えない口調で

完結に要点だけを俺に伝えた。

鎧を着て団長の隣にいる時とは雰囲気が違う。

恐らく今の彼女が普段の振る舞いなのだろう。


「フィル団長補佐、わざわざ足を運ばせてすいません」


「構わないさ、私も一杯飲みたかったからな

 邪魔するぞ?」


そういってフィルは俺達のテーブルの

空いている椅子に腰掛ける。




「しかし、私を逢引の為の伝令に寄越すとはな。

 浮ついた話がこれまで無かった女だ、

 友人としては喜ぶべきだが、

 まさかお前が相手とはな、ゼタ?」


「そんなんじゃありませんよ団長補佐。

 ...ミルロ、二ヤつくんじゃねえ」


「分かってるよ、知られちゃいけないんだよな?

 二人がどんな関係かはさあ」

そう言いながらミルロはニヤケ面を引っ込めない。


「協力関係だ!」


「おいおい、だからそれを隠さなきゃいけないんだろう?

 どうしたんだよ隊長?そんなに慌ててよ」


「クソッ、もう良い、行ってくるぜ」


「うむ、団長さんに宜しくのお」


「ああ、分かってるさ」






「あ~あ、隊長、怒って行っちゃったぜ?」


「お前さんが、からかうからじゃよ」


「俺は発破かけてやってんだよ。

 あのままじゃ隊長ずっと言わないままだぜ?

 協力者だーとか言いながらよ」


「馬鹿だな、ゼタの様子は変だったぞ、

 気付かなかったのか?」


「そうですか?フィル団長補佐?」


「ああ、何時もより緊張感があった。

 シラビュウスと何を話し合うつもりなのか?


 ひょっとしたら今夜だ。

 お前たちの隊長が男を見せるかもな?」


「マ、マジかよ!?」


「ああ、上手く行くかは知らんがな。

 私もシラビュウスの気持ちは確認していない。


 ゼタの方は見てれば分かるよ、 

 人を出し抜くのは上手い様だが

 いざ色恋となると分かりやす過ぎるぞ、あの男は。

 

 まあ、あの男がそれを口にするのか?

 シラビュウスがどう答えるのか?

 明日の二人の表情を見れば分かるはずだ。


 その時はお前達の隊長を慰めてやれよ?」


「ちょ、ちょっと待ってくれ団長補佐さんよ、

 まるでウチの隊長が勝つ見込み無しって言い方じゃないかよ?」


「あのな、シラビュウスは家柄も良くあの容姿だ。

 いくら貴族の中で浮いていても縁談の話はいくらでもあったんだ。


 何もビリスだけじゃ無い。中には将来

 国の柱になりうる男共がいくらでもいたんだ。


 もしゼタがシラビュウスの答えを求めたら

 ゼタはシラビュウスが知る過去の男共と比べられる事になるな?」


「ウッ、そ、それは分が悪いか?

 いくら出世しても平民出の『傷無し』じゃあな...


 大丈夫かね、ウチの隊長は?」


「まあ、なる様にしかならんのう。

 ワシらは祈るだけじゃよ...隊長の傷が浅くなる様にのう...」





次回は7月16日火曜日に投稿予定です。

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