第2話 伝説の罪ー2
「ウマそうに頬張りやがって」
目の前の食事の光景を見ながら負け惜しみが漏れる。
本来グレムリンは旺盛な好奇心でよく道具を壊すと言うが
野郎は器用に道具を利用しやがった。変わり者だ。
案外群れから浮いて追い出されたのかもな。
あっという間に果実を食べ終え周りをキョロキョロと見まわしている。
まだ腹が減っているのか、まあいい。いい加減に自分の心配でもするかな。
貯蔵庫の入り口に目をやる、一番奥には1階に続く階段、
そこから2歩分部屋へ入ればこの部屋は鉄格子に仕切られている。
その鉄の間仕切りには1つの扉、その脇に男がいる。
見張りを任された野盗の一味だ、ここからじゃ少し遠いのと男の今の姿勢もあって
姿はよく見えない、男は鉄格子にもたれて地面に座り寝ている。
熊ともヤリ合えそうな大男だが顔を見ると気が弱そうでまだ若い。
頭にバンダナを巻いて頬には幾つかの、深かったであろう古い傷跡がある。
男はさっきの音でも起きて無い様だ。
あんな間の抜けた連中に捕まるなんてよ、クソッ。
「災い拾い」なんかに付き合うんじゃなかった。
俺はただ恩赦が貰えると思って、不味ったぜ。
勇者が魔王討伐の旅を始めた頃、一人の女も旅に出ていた。
女はその身のどこかに浮かび上がる不思議な刻印の力を使い
様々な災いを小さな箱に閉じ込めた。即ち、
最も凶悪とされる8人の魔神。
神からの呪いと言われる大きな一枚の絵。
そして世界に散らばった全ての悪徳。
それら3つの災いだ。女は後に賢者と呼ばれる。
箱の封印は人々を救った。
魔人の脅威から逃れ、訳の分からん絵に怯えずに済む。
そして人々の心から悪徳が消えて無くなった。人々は争うのを止めた。
彼女が全ての災いを箱に封じ込めた後、
彼女には最後の仕事が残っていた。
悪徳に狂ってしまった勇者を殺す事だ。
彼女は命がけで勇者を倒し、その悲しい結末に涙を流したという。
勇者と賢者のお陰でこの世から戦争が姿を消した。
世界は救われ平和が続いていく、永遠に。
その筈だった。
勇者と賢者、二人の伝説とは別にもう一つの伝説がある。
平和な永遠を殺した1人の女の伝説だ。
そう、3つの伝説の中でも唯一つ今も生きている、
今も続く、人類皆で眺める悪い夢。
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