第8話 終幕に映えし呪いの絵
バレンの首にある宝石のタトゥーの色が赤色に修正してあります。
「どうしよう、血が、血が止まらないよ」
「大丈夫だ、ケーリア。
昨日の傷が広がっただけだ。血の量も少ない。
ケーリア、ドカを呼んでくれ。
腕を...はめてやる」
「ゴダ、無茶するなよ」
「大丈夫だ、大丈夫、グウッ、
...ケーリア、ドカを呼ぶんだ。
ドカにはまだ仕事がある」
「...ドカ!こっちへ来るんだ!
ラ、ラズ!お前も手伝うんだよ!」
「う、ううう。痛えよお」
「分かった。今、い、行くぜ。
お嬢、泣きそうな顔すんなって。
大丈夫だ、バレンのアニキがなんとかしてくれる。
く、クソッ、今、行くからよ」
「みんな、ボロボロだ。私が、私が頭領のくせに弱いから、
なんにも出来ないから。
もう嫌だ、もう...
バレン!もう逃げよう!誰も殺さないで!
私はやっぱり...誰にも死んで欲しくない」
バレンはケーリアの方を見向きもしない。
ゴダがケーリアに優しく話す。
「ケーリア、もう無理だ。もう誰にも止められない。
情けないが今は見守るしかない、これが最後になる。
俺達はその時が来るまでに準備をしなくては」
頭が痛え。気を張っていないと。
奴の攻撃を避ける避けない以前に意識が飛びそうだ。
右から...いや、あれは違う、囮だ。
上だ!後ろに飛び退く。鎖が空から落ちて地面に突き刺さる。
衝撃と共に地面が赤く輝き何かが炸裂した。
赤い輝きは周りに飛び散り地面に落ちる。
ボトッ、ボトッ。
さっきから何なんだ。奴の鎖は赤く光り始めたかと思うと
鎖が動く度にその光を周りにまき散らしている。
「ゼタ、気を付けろ!そいつに触れるな!」
パンドラが後ろから叫ぶ。
ふと気が付けば俺の頬には雫ほどの赤い光が引っ付いていた。
服の袖でそいつを拭い付着物を見る。
これは赤い、泥か?
「おいパンドラ!こいつが何かヤバいのは分かる。だが
何なんだこの泥は!?」
「その泥は体の自由を奪う。少し食らえば泥の付着した部分の
動きが遅くなり。食らい過ぎると完全に動かせなくなる様だ」
「そいつは厄介だ、成程、この泥でパンドラの体ごと
魔神を抑えようとしていたのか。
ていうかよ詳しいじゃねえか。お前まさか?」
「私は右手をやられた。何度かこの手で防いだせいで
もう指の1本も動かせない」
「クソッ!どんどん状況が悪くなる!」
奴の鎖が赤い泥を纏って地面の上で踊る様に飛び跳ねている。
分厚く泥を纏っているせいで鎖は巨大な大蛇の様にも見えた。
よく見るとバレンの首筋、赤い蛇のタトゥーが巻き付いた
その赤い宝石のタトゥーが輝いていた。
「あれが奴の刻印か」
赤い大蛇が俺を襲ってくる、左右から、上から、地を這い下から、
変幻自在な鎖の動きを俺は避け続ける。
野郎の鎖は泥をばら撒きながら動いて
その泥を俺にぶつけようしている。
泥を運びながら動くせいか鎖自体の動きは
さっきより鈍い、むしろ躱しやすいぜ。
だが当たる箇所に依っては最悪だ。
特に足、1発で詰みだ。
それに地面に残る泥が嫌らしいぜ、踏めば足を絡め取られるだろう。
ちゃちな子供用のトラップに過ぎないがな、
鈍い鎖を避けながら気にするのは容易い、ネズミのゼタを舐めるなよ。
しかし何か手を考えなくては、奴への攻め手が無い。
「おいパンドラ!さっきのかまいたちで何とかできないのか!?」
「無理だ!今の私の体力では体が持たない!」
「打ち止めか、お前の武器、昨日使ってたあの
おかしな剣を探すってのはどうだ!?
後ろにいる盗賊の連中が持っているかもな!?」
「それも無理だ!手に戻ったところで
もう剣を振るう力が残って無い!」
女の返答に苛立ち、俺はバレンの鎖を避けながら声を荒げた。
「おいおい話が違うぜ!!
最後はお前が決めてくれるんだろう!?何か手はねえのか!?」
「なんとか逃げ出せないか!?」
「ああ、逃げれるぜ!こいつらが笑顔で見送ってくれりゃあな!」
「なら、手段は...一つしかない」
「なんだ!?まだあんのか?出し惜しみ出来るザマかよ!
とっととやれ!何すんだ!?」
「箱を開ける」
「は、箱?呪いの箱を開けるのか!?」
「最後の、最悪の手段だ。少し時間を稼いでくれ!」
「ふざけんなよ!?てめえこれ以上...」
赤い大蛇が飛び跳ね俺を頭から飲み込もうと襲ってくる。
さっきからの攻撃に比べ蛇が更に肥大化している。
その分蛇の動きが遅い。面積で俺を捕らえようと...
違う!あの動きは!
大蛇の攻撃を躱す、俺は更に大きく飛び退く。
肥大化した蛇はその体積分の大量な泥をばら撒く。
一瞬速く動いたお陰で
間一髪、泥を体に浴びずに済んだ様だ。
「くそったれ!!早くしろパンドラ!」
パンドラは目を閉じ集中する。
「......辿り着きしは過ちの果て、光はわたしを見失い虚無の海
あなたから歌い、ひとつ、ふたつ、約束の罪は示された
心を捧げよう、揺蕩う色は夜を飲み込んだ」
パンドラは言葉を呟いている。何かの詠唱だろうか?
時間を稼ぐと言っても手持ちのカードが何も無い、
こういう時はもう逆ギレするのが唯一の手だ。
器用な事は考えず野郎をぶっ飛ばす事だけを考える。
足掻いてりゃあ時間稼ぎは勝手について来る、
そして、違うな。ぶっ飛ばすじゃない...
もう殺すしかない。対峙している相手と比べ
自分がどれほど不利か、加減を考えていたらこっちが殺される。
なんとか奴に近づきたい、
正確には近づかなければ何も出来ない、だな。
奴との距離は...
目が、霞んできた。ぼやけるが奴の位置は分かる。
奴は、動いていない?鎖も動きを止めている...
何だ?
「やった...バレンのアニキの勝ちだ」
遠くでラズの野郎が何か言ってやがる。
「どうしたよ?赤蛇の旦那ぁ、ハア、ハア、
一個だけ言っとくぞ?こ、殺す、てめえを」
「ネズミ、まだ気が付かねえのか?」
バレンの野郎、何を言ってやがる?
奴との距離...クソッ。
視界がぼやける。不知火がうっとおしい。
地面も燃えている様に見える。一面、赤く。
揺らめいて、赤く...
地面が...クソッ、そう言う事か。
地面の泥が...動いて...動くんだ、あの泥は
さっきと泥の落ちた位置が違う。
俺の周りに作っていたんだ。
蛇の様に這いずり俺の周りに呪いの泥が、俺を捕らえる地形の檻を...
「足場が...無え」
「ケーリア、あれが、
あれがアニキの力だ。赤蛇のバレンの
『執着の刻印』だ」
「ま、待って、バレン!殺したら、殺してしまったら
私たちは、もうオヤジの様には!」
「終わりだ、ネズミ」
俺が今...考える事は...器用な事は考えるな。
奴を殺す...奴が...奴が遠い。
コツッ
足に何か当たった。これは...
悪い冗談だ、いつだって、俺に皮肉を見せつける。
自然と、俺の心が不貞腐れる様に呟いた。
「神様よお...まだ俺の命で遊びたいか?」
次回は2月の8日金曜日投稿予定です。




