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その後のパンドラ  作者: 緑谷トンビ
序章 二匹の虫
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第5話 不知火は未だ泣き止まぬ-3

「バレンさん、赤蛇のバレンさんですよね?」

盗賊団の一味が俺に顔を向ける。


外道と赤蛇、奴の呼び名でまだ口にしやすい方を選ぶ。

クソッ、バレン。

こいつとは喋りたいが、喋りたく無い。


一味の中じゃ明らかにやりにくい相手だ。

外道のバレン、裏の世界に於いても

そのあまりの非情さから付いた名だ。

くぐった修羅場の数も並みの連中とは桁が違う。


何か感づかれるかも知れん。

だがもっとマズいのはパンドラに

注意を向ける事だ。それは、すぐだろう。


出来れば動かずに静観して目立ちたくは無いが。


時間を稼ぐ、注意を引く、それらは

先手を打って行わなければならない。


奴がパンドラに気を向けてから遮るのは

奴のストレスになるだろう。

そうすれば執着する、その大事な仕事上の

ストレスに。奴がプロなら尚更だ。



今は文字通り手も足も出せない。なら動くのはこの口だけ、

さあ、命乞いの時間だ。


赤蛇がその場を動かないまま俺の方へ目を向けた。

素っ気ない声は俺に少しも興味が無い風だった。


「俺を呼んだのか?

 今から大事な取引だ、邪魔するな。

 それとも、もう殺して欲しいか?」


「い、いやね、赤蛇の旦那、

 俺はただ助けて欲しいだけなんです。

 俺はアンタらの役に立ちますぜ」


「興味ねえな、黙ってろ。次喋ったら殺す」


マジかよ?ツレねえにも程があるぜ。

赤蛇の旦那よお、こういう男が「殺す」と

口にしたんだ、さ...流石に緊張するぜ。


「俺なら取引相手が誰か分かる」


盗賊共が目を大きくした。若い連中だけだがな。

バレンがこっちへ歩いてくる。

「俺は...殺すと言ったよな?」

短銃を抜く。


まるで死人が歩いてくるかに見えた。

目の前の人間の生死なんか見ていない

生気の通ってない目だ。不知火の中を歩いてくる。

さあ、いよいよヤバいぜ。どうやって釣る?


「ま、待て!」

静止したのは若い女頭領、ケーリアだった。

「バレン、は、話を聞いてみようじゃないか、

 ひょっとしたら本当に分かったのかもしれないし」


バレンの顔がケーリアへ振り返る。

「カシラ、分かったかどうか、どうでも良い話だ。

 取引相手が誰でも関係無い。

 むしろ余計な詮索は取引の邪魔だ、

 こいつは今、俺が始末する」


「取引は行われない」


盗賊共がまた目を丸くする。

バレンが俺を静かに睨む。


短銃を、向ける。


女頭領が慌てて叫ぶ。

「バレン!!話を聞くんだ!!銃を降ろせ!

 ...め、命令だぞ!?」


バレンが再びケーリアを見る。

その男がどんな表情か、こちらから見えないが

代わりに青い髪の少女の、自分の仲間に向けた怯えた瞳が見えた。


バレンは俺の方を見て、静かに、

銃を閉まった。


少しの沈黙、バレンは側にあった木にもたれかかり

腕を組んだ。結果として俺の前には

女頭領が立つ事になった。


「さ、さあ、お前、話してみろ。ただし、

 もし嘘だったら只じゃ置かないからな?」


「ああ、分かりましたよ。ただし俺が役に立つようなら

 命だけは助けて下さいよ?」

「先ずは話を聞いてからだ」


それまで黙っていたゴダが口を開く。

「おいコソ泥、心して喋れよ?

 もしその場凌ぎのウソなら今の内に止めておけ。

 黙っていればお前の命なんぞ、いちいち取らねえ」


お優しいこった。だが引くわけにはいかない。

俺の役目は命乞いだ。


「ええ、では心して...取引相手は...」


パンドラ、まだか?



「相手は魔法教会です」


その場の全員が驚いた顔をした。今度はゴダという男も。



バレンの表情は変わらなかった。

死人の様なその目は静かに俺を見ていた。


第5話「不知火は未だ泣き止まぬ-4」へ



次回は12月7日(金曜日)に投稿予定です。



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