第4話 賑やかなレクイエム-2
足音が向かってくる。
「おーい、まだ生きてっかぁ?珍獣女、
それからカワイソーな連れのオッサンよお」
さあ、一仕事だ。実に億劫で嫌な役目だが
死ぬよりはマシか?
「あ、朝か?あんたら何しに来たんだ?
俺は、俺は関係ないんだ。ただ
この女に着いて行きゃあ食い扶持に
ありつけるって考えただけで、」
「ああ、良いんだよオッサン、
そういうのは俺に言われても困る。
あんたの処分は上にいる二人のアニキ達が決める事だ。
となりの女は生きてるよな?まだ寝てんのか?」
「ああ、生きてる、だが具合が悪いみたいだ」
「ふーん、まあ良いや。何であれアニキ達んとこ
連れてくだけだ。ドカ、この二人運ぶぞ。」
そう言って俺の縄を解き、縛られた樽から放そうとする。
「うん兄ちゃん、でもこの女、暴れないかな?」
「大丈夫だ、その白い法衣で何の力も出ねえんだとよ。
今は縛られてる只の女だ。
まあ、昨日の戦いっぷりには流石にビビったけどな。
お陰でゴダのアニキが怪我しちまったぜ」
「こ、怖かったな。バレンの兄貴がいなかったら」
大男がオドオドしながらパンドラに近づく。
「まあ人質っつうのは気に入らねえが、
贅沢は言えねえな、俺達盗賊団は
立ち上げたばっかりだしよ。
手段は選んでられねえ」
ノンキにおしゃべりか?さて、
呼吸を整えろ。折れた左腕は痛むが
動ける。やれる。
「は、運ぶって、殺すのか?
俺達を殺すのか?」
ラズという男は俺を立たせながら答える。
手は後ろ手に縛られたままだが足の縄は
解かれている。
「さあな?パンドラはアレとして
あんたはどうなるんだろうな?
ま、バレンの兄貴の機嫌次第だな。
とりあえず面倒くせえし
歩いて上まで行ってくれるか?
言う事聞いてくれりゃアニキ達に
上手く取りなしてやるよ」
適当な事を言いやがる。
「こ、殺されるんだ。俺は無関係だ!」
「おいおい、そうビビんなよ。
取り敢えず上行こうぜ、な?」
盗賊は俺の肩をしっかりと掴みながら。
ダルそうに俺を諭す。
「い、嫌だ。死にたくない!嫌だ!」
「お、おい暴れるな」
「うわああああああああ」
「チッ、とんだ臆病モンだぜ。めんどくせえな」
小僧、足元に気を付けろよ?
側に転がっていたビンをちょっと動かしてやる。
そのまま強引に肩を掴まれたまま後ろに下がる。
「おい、いい加減に...うわっ」
盗賊がビンを踏みつけ体勢を崩す。
俺は体をねじり肩の拘束を解く。
そして手を縛られたままでバランスを取り
ヨタヨタと逃げ出す。腕は痛むが
走る事は出来る。だがそれは今じゃない。
ああ、そうだ、演技しねえと。
「イヤだ死にたくない!うわああああ」
っと演技に気が行き過ぎだ。派手に転ぶ。
「おいおい、散らかすなよオッサン
まあ、こんな陰気臭え所もう
根城にしねえから良いけどよ」
ラズって盗賊が歩いて近づいてくる。
どうやらビンで転ばずに済んだ様だな。
横目にパンドラの顔が見えた。
驚いている顔だ。そりゃそうだ、
あの女が期待した時間稼ぎってのは
その場凌ぎの悪あがきじゃないだろう。
もしあの女に何故かと聞かれると
困るな、これは只のイタズラなんだ。
「に、兄ちゃん...」
「ドカ、お前はその女見てろ」
体勢を立て直す。足を、肩を、膝を
使ってなんとかの体で中腰になり
あらゆる場所にぶつかりながら進む。
「だからドタバタすんなって
あんまうるせーとバレンのアニキの機嫌が
悪くなる。マジで怖えんだよあの人は!
それにそっちは出口じゃねえぞ?」
「うわああああああ」
俺は怯えながらもう一度派手に転ぶ。
目の前にあった棚に頭からぶつかり
壊してしまった。
「何がしてえんだよ、このオッサンは!
錯乱してんじゃねえ!」
長髪の盗賊が俺を起こし、襟首を掴んで強引に引きづる。
そのまま歩いてパンドラの隣に、俺が元いた場所に突き倒した。
ドサッ!
「くそ、腕を擦りむいたぜ」
「兄ちゃん大丈夫か?」
大男が自分の兄に歩み寄る。
「ああ、かすり傷だよ。あとラズのアニキだろ?」
隣のパンドラが俯きながら小声で話す。
「ゼタ、下手に動き過ぎるな。
あまり警戒されても良くない」
「そうだな、今のは良くない。
でも大した問題にもならんさ。
下っ端をからかうぐらい何ともならん。
ウォーミングアップだよ」
「本当に、ハア、ハア...頼むぞ?」
「ドカ、やっぱりお前がこいつ等を上まで運んでくれ。
足も縛っとくか、また暴れるかもしれねえ」
「分かったよ。ラズの兄貴」
二人が近づいてくる俺はまた足を縛られてしまった。
ドカという男が俺とパンドラをその巨体の
両肩に抱えた。
俺達はそのまま地下室を後にした。
階段を上る前に俺がさっき壊した棚から
何かが出てきた。
その赤い棚の壊れた開き戸に身を隠しながら
不思議そうにこちらを見ている。
やはり何故かと聞かれれば困るな...。
取り敢えず俺は、そいつに向かって舌を出してやった。
大男の背中で隣のパンドラが話しかける。
「随分と可愛いお友達じゃないか?」
「違うな。あいつは俺の商売敵だ。
あれで腕は良い、恩を売っておくのさ」
「へえ、恩をね」
「おい、お前ら背中でしゃべんなよ。くすぐったいだろう」
「何やってるんだ、早く行くぞ?ドカ」
「あ、待ってくれよ兄ちゃん」
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