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7話「あまりに謎な住人」

「よいっしょと……」


ドアに耳を傾けたまま呆然としていると、部屋の中から立ち上がる音がした。


「そこにいるお二人さん〜?コソコソしてないで入ってきなよ。」


「!!?」

(気づかれてた?!いつから……。)


「あはは。そんなにびっくりしないでよ?」


ドアの中からやけに明るい飄々とした声が紡ぎ出される。


(どうする……?部屋に入るか……)


「やったーーー!!エルさんの部屋入るの初めてだーー!」


警戒するフランとは対極に一切迷いなくドアを開けるハル。


「えっ……ちょっ。」


驚いたフランはハルが全開に開けたドアからエルの部屋を覗き込む。


「わっ?!!はぁっ?!!」


その部屋の中身……。いや、住人を見たフランは今日で何回目かわからない驚愕の叫びを口にする。


「何をそんな間の抜けた声を出してるんだい?」


そう、その住人は美しい男性の声を出す……






齢10歳くらいの幼女だった。



「……。」


あまりにも不自然なその少女を目の当たりにしてフランは固まる。


「?何かおかしいかい?」


驚くほど白い肌に、光を受けて輝く海を思わせる長い睫毛に縁取られたこぼれ落ちそうな瞳。


から男性特有の低いバリトンボイスが紡ぎ出される。


「えっ?あぁ声を男声にしたままだったな……

" 精霊よ我の声を思うがままに塗り変えよ "」



そう唱えた瞬間、エルの喉が黄色く光った。


「あー。あー。どう?これで違和感ないかな?」


光が収まった後、エルの声は男性の声から美しく高い少女の声へと変わっていた。


「魔法?!なんで……。」


「あー。それは……。」



少し言い淀んだ後、彼女はいフランの横で目をキラキラさせているハルに目を向けた。


「すっごーーーい!!光った!魔法みたい!!」


「あはは。みたいじゃなくて本物だよ。喜んでもらえたみたいで嬉しいよ。」


ちぎれそうになる程尻尾を振って無邪気にはしゃぐハルに微笑むエル。


「ハル?悪いんだけどこのエルフの子供と話がしたいんだ。これでも食べて下で待っててくれるかな?」


エルはそばにあったクッキーの缶を手渡す。


「うん!わかった!!ちゃんとふらんの分も残しとくね?!」


クッキーの缶を握りながら、安心して?とフランに微笑みかける。


「あ、ありがとう。ハル」


「いえいえ〜」


微妙な顔でお礼を言うフランに上機嫌そうに返すと、そのままドアを閉めた。


とたんっ。たんっ。たんっ。たん……。


「行ったみたいだねー?さて、君も聞きたいことが山ほどありそうだし、一旦座りなよ?」


エルは瞳と同じ水色の髪をなびかせながら座布団を敷いた。


「いい。それより、あんたはエルフなんですか??」


座布団に座ることを拒否し、フランはエルに問いかける。


「うん。そうだよ?今は魔法で人間の少女に擬態してるけどね?」


「そう。それだよ!なんでこの世界で魔法が使えるんだ!?」


いつもは滅多に崩さない敬語を崩して興奮気味に問う。


「あぁ。君はまだ子供だから使えないだろうけど、私は使えるんだよ?」


それだけさ。と、言いながら余裕の笑みで答えを返す。


「でも、僕がこの世界に来てから、何回も魔法を使おうとしたけど、一回も出来たことはなかったぞ?!」


「ねぇ。君今何歳?」


「はっ?」


あまりにも場違いなエルの問いかけに思わず間の抜けた声が出る。


「だーから。今君は何歳でちゅか〜?」

あまりにも馬鹿にした語尾にフランは激怒する


「625だよ!!それが今なんの関係が…」


「それだよ。それ。」


ピッ!っとフランを指差す。


「そもそもエルフの魔法ってのは、大抵の場合、精霊の補助が無かったら使えないんだよ?」



「え?何言って」


「エルフの森には、何千 何万という精霊が住んでいる。それは知ってるよね?」


エルフなら間違いなく知っていることを問いかける。


「えぇ。それが?」


「エルフの森だ魔法を使うときは、自分の魔力より、精霊が補助する魔力のほうが多いんだよ。」


「??魔法を使うときに精霊が補助するなんて聞いたことありませんが……。」


やっと落ち着いて来たフランの課長が元に戻る。


「うん。私も君くらいの時はまだ知らなかったさ。」


「エルフの森で魔法を使用する時は、精霊に助けてもらってやっと魔法が使えるんだ。

でも、外の世界の精霊がいない場所では魔法は使用できない。」



「えっ?でもさっきあなたは使ってましたよね?」



「うん。私は使えるけど、多分今生きてるエルフの中じゃこの世界で魔法が使えるのは私だけだと思うよ。」


淡々と言葉を紡ぐエル。


(何言ってるんだ?こいつ?でも、僕が使えなくてこの人が使えるんならそう言うことなのか…)


「7万3263歳。」


「?!」


「私は今年で7万3263歳になる。」


驚くフランにエルはもう一度繰り返す。


「魔力は歳を重ねるごとに増えていく。まだ625歳な君では魔力が少なすぎて、自分の持っている魔力だけではどんな簡単な魔法も発動できない。」


「七万って……なぜまだ生きてるんです?!」


「ちょ〜〜っとそれは言い過ぎじゃない?」


まだ生きてるのかと問われ気分を害したエルはフランを睨みつける。


「う……。すみません。ですが、エルフの森でそんなに長命なエルフ、聞いたことがありません。」


もう一度記憶を辿るが、自分の知ってる限り一番長命なのは一万9057歳の260代前のシュラガリテン王だけだ。


「アドリアナ。」


(っ?)


「私の名前はアドリアナだ。知ってるか?」


(アドリアナ……!)



フランは古い記憶を思い出す。


「アドリアナ様はね。一代前のエルフの女王よ」


「嘘だ!そんな人 白い木になかったもん!」


「アドリアナ様はね……。」





「アドリアナ女王は、自殺したと……。」


呆然とした表情で問うフランに、エルは少し目を伏せる。


「……予想はしてたけどやっぱりそうなってるか……。」



「?何か言いましたか?」


「んー?なんでもないよ。そうだね……。」



少し言い淀んだ後、何かを決意したようにフランに言う。


「少し私の昔話に付き合ってくれないかな?」



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