3話「土曜日の朝ごはん」
ピッピピッピ ピッピピッピ ピッピピッピ
11月18日 土曜日
枕元にある電子時計が今日の日付と曜日を表示している。
「あ。ふぁぁああああ〜……。」
カーテンを開けながら大きいあくびを出す。
(っ……さっむ……)
あまりの寒さにもう一度布団にくるまりたい衝動に駆られるが、目を強くこすってその邪念を祓う
素早く寝間着を脱いで寒さに震えながら服を着る
「よしっ……とっ 朝ごはん作らないと……。」
由良子は一階の一番奥の自分の部屋から、台所に移動する。
冷蔵庫を開け、必要な食事を取り出していく。
フライパンに均一に油をしいて卵を入れていく
じゅ…… じゅわぁ……
瞬く間に透明な白身が焼けていく。
ベーコン ベーコン……♪
今度はフライパンにベーコンを入れていく
入れて少ししたら、一面に香ばしい匂いが立ち込める
「由良……おふぁようございます…」
あくびをしながら由良子に挨拶して台所に入ってくるフラン
「おはよう。今日も早いね。」
「由良の方が早いじゃないですか……」
エルフの少年は少し不服そうに呟いた。
「あはは。確かに もうすぐできるから座っておいて?」
「手伝いますよ?」
「いい いい。ほんとにもうすぐだから。」
手伝いを申し込んだフランに頭を横に振りながら答える。
ちょうどいい焼き加減の目玉焼きの周りをガリガリと削ってすくいやすくする。
「よっ……っと……」
綺麗にすくえたことで満足そうにしながらテーブルに皿を置きにいく。
「今日はフランの好きな目玉焼きでぇ〜すっ!」
「 まぁ、匂いで気づきましたけどね……。」
「え〜?そんなこと言わないで素直に喜んでよ」
……ほんとは嬉しいくせに。
「はいはい。嬉しいです。ハルやきょうすけは……?」
「呼んでくるよ。先に食べてて?」
「いえ。待ちます。みんなで食べた方が美味しいって由良が言ってましたよね?」
過去の自分の言葉をひきに出されて由良は苦笑する。
「そうだね。冷めないうちに呼んでくるから。」
そうフランに行ったあと、すぐに台所から出て、
奥から3番目の部屋に行く。
コンコン
(この時間じゃ起きてなさろうだな……。)
「ハルー?開けるよ。」
ドアを開けた先には案の定獣人の少年が心地よさそうにベットで寝ていた。
「ハル?ハル ご飯だよ。」
そういうと、ハルの頭に付いている犬耳がぴくぴくっと動いた。
「うにゃむにゃ……ごはん……。」
(一瞬起きたと思ったけど、夢でも見てるのかな?)
夢の中でも相変わらずの少年に由良子は自然と口元に笑みが浮かぶ。
「んうっ……?」
人の気配を感じ取ったのか、少年の目が少しだけ開く。
「ハルっ?起きたっ?」
由良子の言葉に少しずつ目を開けていく。
その直後、あまりの寒さに体をぶるっと震わせ、起きかけていた目をもう一度瞑って、2回目の眠りにつこうとした。
「……ハル〜?朝ごはん でっすよっ!!!」
掛け声とともに一気にハルが掴んでいた布団を引き剥がす。
「わっ。ゆらっ!!さむいっ!さむい!さむい!!!」
体を優しく包み込んでいた布団を取られ、少しの体温でも逃さまいと手で自分の体を抱きしめてまるまる。
「寒いのはわかるけど。フランを待たせてるの。朝ごはんよ。」
直後、自分の空腹に気づいたのか、ばっと飛び起き、居間へと走って行った。
「よしっ……あとは……。」
コンコンコン
「朝ごはん。用意してるのでよかったら来てくださいね。」
……………………………
(やっぱりダメか……。)
残なんそうな顔をしたあと、隣の部屋に目を向ける。
(ちょっと、いや、かなり気がすすまない……)
コンコンコン
「京介さんー?入りますよ。」
ガチャ
「うっ……はっ…」
(やっぱり、予想以上……)
由良子はめずらしく整った顔立ちを憂鬱そうに歪めた。
入った直後からすでに足の踏み場はなく、それは奥に続くにつれてひどくなっていく。
(床の色って、どんな色だったっけ……)
と、思うほど床が全く見えず、恐る恐る踏み出すだけで、ピキッ ガチ っと何かを踏んだような音がなる。
そして今や雪崩のようになっている京介が寝ているベットを目指す。
その目的地は部屋の最奥部にあるので、そこにたどり着くには険しい道を変えていかなければならない。
(なんで朝からこんな登山みたいなこと……)
……なんかもう今ならエベレストですら超えられそうな気がしてきたよ……。
「よいしょ よいしょ。」
飲みかけのペットボトル(蓋は開きっぱなし)
脱ぎ散らかした服や下着……
(できることなら毎日掃除してあげたいんだけど……。)
由良子の平日は、朝早くに起きて朝ごはんを作り、食べ終わったらすぐに学校に行く準備をして家を出る。
学校が終わってからはスーパーに行ったり、お魚屋さんや精肉店に買い物に行ったりして、帰ったらすぐに夕飯の支度。
食べ終わったら一番風呂にはいり、県内屈指の進学校に通っているためすぐに勉強しないといけない。
(それに、遅くまで勉強してたら朝起きれないし……。日付が変わる前には絶対寝るようにしてるんだけど……。)
そうこうしているうちに、目的地に着いてしまった。
(いけない いけない。ちょっと現実逃避してたな……)
京介が寝ているベットは、もうベットと言える状況ではなかった。
おそらく何日も前のものだろうと推測できる衣服類に、少年雑誌や、お菓子の袋、中身が出た枕、
中身が出たままの歯磨き粉、埃まみれの歯ブラシ 生身の飛び出した目覚まし時計…
それらに埋もれ、もはやゴミの山となったベットに京介は寝ていた。
「京介さん……起きてください。」
この汚部屋にいるのは限界と感じた由良子は荒い手つきで京介の肩を揺する
その衝動でもまだ起きず、京介はむにゃむにゃと口をもごもごささながら寝返りを打った。
どうしよう。このベットの有様は流石に……。
物だけでも避けといてあげよう……。
手短に少しボロボロになった雑誌を手に取る。
(えっと。なになに……"早熟幼女 "〜汚されていない純潔のやらしい身体に中出し……)
本の表紙にはあられもない姿で快感に溺れる幼女の写真が……
「きゃ、きゃあぁああああああああああ!!!」
ベシッ!!っと部屋の隅っこにいかがわしい本を投げつける。
「ん……?由良子……。」
由良子の絶叫にようやく目が覚めた京介。
「わっ。京介さんの変態っ!!えっち!!!」
由良子はバンッと荒々しく京介のドアを閉めた。
部屋に残された京介は、何が起こったのか全くわからず、もう一度深い眠りについた。
京介が働いている工事現場…
先輩A「見ろよ こんなん落ち出たぞww」
クールな先輩B「何。嬉しそうにしてんだよw俺ロリコンじゃねぇしいらねぇ。」
先輩A「俺もいらねぇよ。おい、最近入った奴のカバンに入れたろうぜww」
クールな先輩B「それ、京介のことか……。お前あいつの顔ないいから妬んでるだけだろ」
先輩A「ちっ、ちげぇし」
その後 京介は知らず知らずの内にエロ本を持ったまま家に帰り、ベットの上にカバンの中身をぶちまけて、そのまま寝ましたとさ。
京介「や、俺 被害者じゃん……」