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マジック × ワールド:アーニユ(Magic × World:Ániyu)  作者: 川崎雨御
第一章:入学編
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第一章8:永続魔法

 朝の八時九分、授業の開始時間まで、あと六分。


 オーフィスターニャとアルファーニは依然として燃えている。 ミネルヴァはふたりを見て、ため息をつく。


「ハァー……流石にこれ以上長引いてしまったら、完全に遅刻してしいます……しかし――」


 彼女はふたりの様子を見て、すごくいい雰囲気で、とても入る余地が見付からなかった。


「ここは……まず、オーフィスターニャ様に意識するモノを……ん? こ、これです!」


 ミネルヴァはあるモノを見つけて、ピーンと閃く。


「オーフィスターニャ様! これを見てください!」


 ミネルヴァが両手で握ってるモノは……アルファーニの制服だった。


「ん? その制服がどうした?」


「この制服、実は私の魔法で創ったんです」


「は?」


 ミネルヴァは両目を瞑って、大声で話す。

 しかしオーフィスターニャは理解出来なかった。 現場で瞬時に制服を『創った』というデタラメ、彼女はどうしても信じられなかった。


「創ったって……ミネルヴァの魔法で?」


「はい、私の魔法で創ったんです」


「えっと……ワタシの聞き間違いかなぁ……? あは、ァハハハ……」


 愛想笑いのオーフィスターニャは現実逃避の表情で数歩さがる。


「オーフィスターニャ・トワベールカ、君はまだ知らないかもしれないけど。 ふん……説明するより、実際に見て貰った方がいいかも……ちょうど君の制服もボロボロだし」


 その時、アルファーニはミネルヴァから制服を取りに行き、説明しながらミネルヴァに着替えさせられていた。


「実際……見て貰った方がいい? いったい何を――」


 オーフィスターニャの言葉が最後まで言わせず、ミネルヴァは先に唱え始めた。


唯一(ソロ)魔法(マジック)創造(クリエイション)


 カラフルな光がミネルヴァの手元に光って、その時、オーフィスターニャは初めて見た。

 ミネルヴァの手元からいきなり制服が現れた。 まるで彼女が先日貰った制服みたいに、ピカピカでまだ誰も着ていない新品な匂いがオーフィスターニャの鼻先まで漂った。


「今のは……まさか……」


「はい、オーフィスターニャ様。 これは私の魔法です、唯一(ソロ)魔法(マジック)創造(クリエイション)。 文字通り、世界に唯一無二(ゆいいつむに)の魔法です」


 自分の魔法の正体を説明しながら、ミネルヴァは制服をオーフィスターニャに渡す。


創造(クリエイション)……創造魔法かぁ……なんか、便利な魔法だな!」


 感心するオーフィスターニャは、少しだけ、ミネルヴァに羨ましく思った。

 そしてその頃、アルファーニはちょうど着替えを終わったみたい、凛々しい軍服姿でオーフィスターニャたちに近づく。


「ところで……念のため聞いておくが……この制服、魔法で作ったということは……制限時間とか、あるの? 授業中にいきなり裸になるアクシデント、無いよね?」


 オーフィスターニャはそのシチュエーションをちょっぴりだけ想像したら、全身に寒気が走った。


「その事なら大丈夫です。 私の魔法、創造(クリエイション)永続(えいぞく)の特性が含まれています。 オーフィスターニャ様もお分かりでしょう? 永続魔法の特性はどういう効果……」


 ミネルヴァは冷静な態度で簡潔に説明する。


「永続魔法ってあれだろ? 効果の制限時間が無い、術者(じゅつしゃ)のみその魔法が止められるってやつだよね……てことは……」


 手を顎の下に置き、頭をあげるオーフィスターニャは真剣に思考する。


「そういう事です。 わかり易くため、お手本を見せてあげましょう」


「え? 「お手本」って……?」


 ミネルヴァの笑顔が他に見れば、単なる笑顔。 しかし、オーフィスターニャは逆に、嫌な予感しか感じられなかった。

 そしたら、ミネルヴァは親指と中指で音を鳴らす。


 すると――、


「……え?」


 ミネルヴァの後ろにいたアルファーニの制服が一瞬に分解し、カラフルな光で塵になって、空中で消えた。 水色の下着だけでなっていたアルファーニの顔が恥ずかしがる先に、間抜けな顔でそこに立っていた。


 流石にこれはやばいと思ったオーフィスターニャはすぐに目を手で隠した。 しかしそれでも、彼女の中にある『見たい』という気持ちが抑えきれなくて、チラリと、指と指の隙間で覗いた。


「ご覧の通り、オーフィスターニャ様、アルファーニ様の制服は私の意識によって消しました。 ちなみに、貴女の制服も、フフ……」


「そ、それは……遠慮しておく! ァハハハ、ハハハハ……(怖っ! この女中(シルビエンタ)の笑顔怖っ! 無邪気な笑顔なのに、何故か恐怖しか感じない!)」


 愛想笑いで断るオーフィスターニャは少しずつさがる。

 その間、アルファーニは予想外に、彼女は堂々と真顔でミネルヴァを睨む。 ミネルヴァも反省したみたいに、二度目の創造(クリエイション)で、アルファーニの制服を創った。


 そしてオーフィスターニャが新品な制服を着替え終わった後、ふとっ、何か違和感を感じる。


「ところが……お前が創ったこの制服、何故かワタシにぴったりなんだけど……まさか服を着る時、衣装が自動的に体のサイズに合わせるのか?」


「いえ、そんな便利な機能は持ってません。 服は普通と同じ、創った時点でサイズは変えることはできません」


「なっ……?」


 驚愕の事実を知ったオーフィスターニャの表情が固まる。


「どうなされたのですか?」


 不思議な顔で問うミネルヴァは、首を傾く。


「ワタシのスリーサイズ……誰にも教えたことが無いけど……お前はどうやって知った? 資料……! んな訳ねよなぁ……」


 益々怖がるオーフィスターニャは、汗をかいて、ごくりと思わずつばをのむ。


「どうやってって……簡単です。 私は毎朝お嬢様のはだか、失礼、お嬢様の体をこの両手で隅々まで触って、サイズを測るのです」


 堂々と言ったミネルヴァの顔は真顔だった。 しかし彼女の手は色んな動きで何かを握って、掴んで、引っ張って、触って、と滑らかに変わっていく。


「ひ! それってつまり、ワタシが寝ている間、お前はワタシの体を……!」


「ちょっと待って、私も聞きたいことがある。 ミネルヴァ、君はさっき、私のはだかを毎朝触っていたと聞こえたが、あれ、どういう意味?」


 オーフィスターニャの顔が真っ赤に染まっていた。


 そして割り込んだアルファーニの顔は明らかに怒っていた。

 ふたり揃って、もの凄いプレッシャーでミネルヴァに近づく。 流石に身の危険を感じたミネルヴァは、一瞬にあることを思い出す。


「お嬢様、オーフィスターニャ様。 おふたりが怒っているのは分かりますが、先にあれをご覧下さい」


 ミネルヴァは既に扉まで追い込まれ、すると彼女は指で上を指す。


「あん? あっ……」


「あれって? なっ……」


 ふたりは同時に上を見て、そして同時に言葉を失う。


 扉の上には、木製の時計があった。 二つの鉄の針は八時十五分をさしていた。


「アルファーニ……今日の授業は何時始まるだっけ…?」


「八時十五分……」


「じゃー……あの時計がさしている時間は何時?」


「八時十五分……」


 オーフィスターニャとアルファーニの顔の表情は依然として唖然。 ふたりの会話も、感情の無い質問と回答だった。


 そして時計の針は無情で進んでいく。 約五秒後、間抜けなふたりのエルフはお互いを無表情で見つめる。


 すると――、


「「遅刻ぅぅぅ!!!!!」」


 と同時に叫ぶ。


「早く支度の準備を……! ワタシのカバンはどこに消えた?!」


「私がもっ――」


「私のカバンも見付からないの! ミネルヴァ! 君も探すのをてつだっ……」


 慌てるふたりは、保険室内で自分のカバンを探して、色んなところを見ていた。 その時、アルファーニはミネルヴァを一緒に探す求めていたら、彼女は見てしまった。


 ミネルヴァは既に彼女たちのカバンを持っていて、廊下で待機していた。


「いつの間にお前の女中(シルビエンタ)がそこに居た? てかワタシのカバン!」


「知らないわよ! ミネルヴァはいつも神出鬼没でどこでも消えて、どこでも現るのよ! それと、私のカバン!」


 オーフィスターニャは先にミネルヴァの右手に持っていたカバンを取る。 その次はアルファーニ。


 彼女たちは廊下に立ったら、不思議な気持ちが湧き上がる。

 誰もない、一階の廊下は桜の花びらで埋めていた。 まるでピンクの絨毯みたいに敷いていた。 その美しい光景に、オーフィスターニャたちは感動する。


 さんにんはお互いをニコリと笑って、一緒に桜の絨毯の上で走り出す。


「(いったいこの五年間、何か起こるのか、楽しみだ!)」


 ワクワクしていたオーフィスターニャは、思わず笑った。 彼女の新しい学校生活に向かって、幸せな気分で走る。


 しかし、彼女は途轍もないことを思い出し、そのせいで彼女は足を止めた。 それに気付いたアルファーニも止まった。


「どうした、オーフィスターニャ・トワベールカ」


「オーフィスターニャ様、もしかして具合でも悪いのですか?」


「いや、そんなんじゃないけど……あのさ……」


 戸惑う顔を晒すオーフィスターニャは、なかなか言い出せなくて、もじもじする。


「はっきりと言えっ! もう一刻の早く教室に行かなければならないのに……!」


「ワタシたちの教室って……何処にいるんだ?」


「あ……」


 オーフィスターニャの疑問はさっきまで焦っていたアルファーニの顔を間抜けな反応に変えた。

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