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マジック × ワールド:アーニユ(Magic × World:Ániyu)  作者: 川崎雨御
第一章:入学編
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第一章5:唯一魔法(ソロマジック)

 オーフィスターニャとアルファーニの激しい戦いの後、それぞれは満身創痍(まんしんそうい)、片腕の状態で保健室まで運ばれた。 そして心配していたユッティと関係者たちは付き添う。


 闘技場のフィールドの損害はすくない、そこにあるのはアルファーニの氷魔法で凍った地面とさっき彼女たちがほぼ同時に相手を腕を切断し、傷口から噴き出した血が地面の砂と埃を混じって、汚い血の水たまりがあちこちに散らばっていた。


 オーフィスターニャたちが運ばれた場所は東の校舎の保健室、そこに、彼女たちは治療を受けていた。 太陽が西に沈んでいる頃、静かな保健室、その窓から紅に金を混ぜた強烈な色が中身を染まっていく……そして、オーフィスターニャたちが疲れのせいで、来る途中で寝込んだ。 その後、イファスティ、ユッティ、ミネルヴァ、レミカ、校長先生は静かに彼女たちを付き添って、見守っていた。


「凄い戦いでしたぁ……とても同い年には見えないです……」


 感心していたユッティはオーフィスターニャのそばで話す。


「アルファーニ様があそこまで真剣に戦うお姿、私は初めて見ました……やはりお嬢様はいつも周りの者を驚かせる逸材(いつざい)です」


 その間、看護師とアルファーニの様子を診ていたミネルヴァも心の底から感心していた。

 そして彼女たちの少し離れている後ろには、イファスティたちの真剣な表情で座っていた。


「イファスティ、何故……あの子が例の魔法を使わなかった?」


 校長先生の独特な錆びた声でイファスティに話す。


「ふぅ……校長先生も知っていると思うが……もしあの子が例の魔法を使ったら、取り付けないことになるかもしれないです。 だからあたしは、オーフィスターニャが五年生(クローバー)になる前に、学園内で例の魔法を使う自体を禁止しました」


 語るイファスティは不意にニヤリと笑う。


「うん……なるほど。 これも、あの子の将来のためと考えると、妥当だ」


「はい」


「それでは、そろそろ私が校長室に戻るとする。 今日はあの子たちがここで一晩寝かせましょう、あと、私はシュテルンヌンさんのご両親に連絡しますから、君たちはもう帰ってもいい頃合いです。 特にグラナートアプフェルさん、時間的にはもう遅いから、先に帰りなさい。 ご両親、心配しているだろう」


 校長先生はのんびりと腰を席から立って、他の者に提案する。 そこでイファスティたちは少し戸惑いながら見つめ合い、数秒後に彼女たちこくっとうなずく。


「分かりました、校長先生。 ではオーフィスターニャのこと、頼みます」


「ターニャちゃん……早く元気になってね……ママは明日の朝、見に行きますから……! 校長先生、娘のこと、よろしく頼みます」


「ええ、任せなさい。 彼女も我が校の大切な生徒です、ちゃんと戦闘の傷を治します。 だから早く戻りなさい、明日から新学期が始まるから」


 イファスティとレミカは丁寧に校長先生を頼んだ。 そして彼女たちは扉が閉じるまで、心配そうな表情でオーフィスターニャを見詰めていた。


「では、わたしもそろそろかえります。 校長先生、お先に失礼致します」


 礼儀正しく別れを告げるユッティは、校長先生に敬意を表し、ひとりでその場を離れようとした時……彼女はミネルヴァがまだアルファーニをじーっと見詰めていることに気付く。


「ミネルヴァ……さんは、帰らないですか?」


「私は常にアルファーニ様のそばにいます、だから私は帰るつもりはありません。 お嬢様が目を開けるまで、私はお嬢様をお守りします……これは、私がこの世に生まれた時点で決められた役目です。 あ、すみません……私ったら、関係者でもユッティ様にペラペラと余計なことを口にだしてしまいました……。 口うるさくて、すみません!」


「…………」


 生き生きと語っていたミネルヴァの目が優しいまなざしでアルファーニの寝顔を見詰めていて、もう出ようとしたユッティは、熱い思いを語るミネルヴァに驚きの顔で何も言えなかった。


「そう言えば、ミネルヴァ・フショー・フォン・クレアトゥール(Minerva・Всё・Von・Créateur)さん。 あなたにも帰ってもらいます、あの子たちは必要なことは絶対安静です」


 校長先生は余った包帯と幾つの薬品を片付いてる間、ミネルヴァのフルネームを呼び、彼女に早退を提案した。

 しかしミネルヴァはそれを拒否する。


「すみません、校長先生。 私はお嬢様のそばに居たいです……どうか今回だけでも、見逃してくれませんか?」


「ダメです。 いくら忠義を示しても、ダメなことはダメです。 それに、あなたはある校則を破りました…」


 ミネルヴァの言葉が空耳にされ、校長先生は彼女にあることを意見する。


「校則…ですか? でも私、悪いことをしていませんし……。 いったい、どの校則を破ったのですか?」


 彼女は自分が既に校則を破ったことを気づかれ、右手を強く握る。

 そして……校長先生とミネルヴァが話し合ってる間、学校からある者が歩き出す。


「ミネルヴァさんはまだ校長先生と話したいことがあるみたいで……先に失礼します…」


 ユッティは既にこっそりとその場から離れて、太陽が沈む方向へ歩き出した。


「それは、指定の制服に登校していないことです」


「へ?」


 校長先生が示した校則破りを強調して、ミネルヴァは反応に遅れる。


「フショー・フォン・クレアトゥールさん、あなたはなんでその服装で登校したんですか? シュテルンヌンさんの従者(じゅうしゃ)ですから?」


 校長先生は次々と質問を攻め続ける。


「あ……はい……」


 対してミネルヴァは校長先生がかけているプレッシャーの前に、ただ立ったまま震える。


「主に対する忠義はいいことですが、ここではあなたも我が校の規則を守ってもらいます。 だから、今日はシュテルンヌン家の屋敷に戻って、明日から制服で登校してください」


 次のセリフを言った校長先生の表情と優しい声に切り替わる。


「その必要はありません」


 しかし、ミネルヴァの口調は依然として拒否する。


「ホォー、どうしてそう言い切れるですか?」


 睨みあうふたりの間に、不吉な風が漂う。 空気そのものが重く感じ、次の瞬間、何か起こるのか予測不能の状況……どの声も聞こえない、沈黙。

 そして一瞬早く、ミネルヴァは手を前へ振る。


唯一(ソロ)魔法(マジック)創造(クリエイション)!」


 ミネルヴァが唱えた直後、大きな魔法陣は彼女の前に現れる。


「ご覧の通り、校長先生、私は制服をちゃんと持っています」


 ミネルヴァの手が握っていたのは、学校指定の制服でした。 しかし、校長先生の表情は何も変わらない。


「フショー・フォン・クレアトゥールさん、あなたは間違っています。 あなたは制服を“持っている”ではなくて……あなたは今ここで制服を“創造”しました」


「(ギクッ!)」


 校長先生のすべてを見通す口調でミネルヴァに図星を指す。


「あなたの魔法……《唯一(ソロ)魔法(マジック)》は文字通り、世界で唯一無二の魔法。 特徴は、魔力の消費は少なめと、その者以外は誰もその魔法を使える、召喚することはできない……。 歴史上にはこう書かれていて、証明されている……『唯一(ソロ)魔法(マジック)を継げる者は、その祖先の血を継げている者のみ、許される』。 しかしたまに血をつながってる親子でも、その子は魔法が使えない時でもある……」


 校長先生は途中で話題の方向が歴史に変わる、そしてそれを聞いているミネルヴァが……興味津々で、目が光ってるみたいで、真面目に校長先生の話を聞く。


「時が流れて、その魔法の種類は少しずつ増えていた。 今になって、あなたを含めて、世界中の唯一(ソロ)魔法(マジック)の種類は現在二十個。 そして我々精霊族(エルフ)はその数字の四分の三にいる、つまり、我が国には、十五種類の唯一(ソロ)魔法(マジック)を持つ種族っということです」


 校長先生は真剣に唯一(ソロ)魔法(マジック)のこととその由来を語る間、ミネルヴァは夢中で聞く。 そのまま、時間があっという間に過ぎて、翌日になる。



―翌日―



 寝込んでしまったミネルヴァは、アルファーニの切断されてない右手を握り締める。 そして、校長先生がこっそりとオーフィスターニャたちが切断されていた右腕の具合を見詰める。

 彼女たちの腕は既に治癒していた。 腕には残るはずだった傷痕がどこに見当たらない、完璧に接着していた。 それを見た校長先生は当たり前な顔で笑う。


「うん、既に腕は元に戻したか……。 入学式の当日に行われた決闘とその結末、本当にあなたたちの親に似てますね……特に学園の制服をいとも簡単に破けてしまうことは……」


 独り言で喋る校長先生は微笑んで保健室から静かに立ち去る。

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