第二章21:週末の依頼、其の前夜
無事依頼を達成した一年二班のみんなはその後、自分たちの部屋へ戻って、夕食を済ました。
そして現在……彼女たちは今日の色んな出来事を語り合うことより、一緒にトイレ掃除することになったより、もっと深刻な問題に気づく。
それは――、
「なぁ、明日の依頼ってなんだろ?」
アルトリアが単刀直入でみんなに聞く。
するとみんなは無言のまま視線を逸らす。 しかしオーフィスターニャだけがアルトリアに質問に答える。
「内容はともかく、奇妙な場所だけは行きたくないね」
「しかしイファスティさんのことだ。 もしかしたら今日の依頼よりもっと奇妙な依頼かもしれないぞ?」
エレオノーラがニヤニヤと笑いながらオーフィスターニャに嫌なことを強調した。
「おい! あんま縁起の悪いことを言うじゃね! もし明日の依頼内容がワタシの嫌な内容だったらお前の責任だからなッ!」
「まぁまぁ落ち着きましょう。 それにオーフィスターニャさん、そこは“エレオノーラのせいだ”と言ってください、なんか誤解を招くので……」
オーフィスターニャが怒鳴った後、ちょうど彼女のそばにいたレスターがツッコム。 が、既に遅かった。 レスターがつっこんでる間、エレオノーラが先に話した。
「んじゃ! もし明日の依頼内容を当てたら、オーフィスが何をするつもり? まさか私に責任を取らせるつもりではないな! 流石にそれはまだ早いって!」
それを聞いたアルファー二が突然にベッドから飛び降りる。 それに驚くカティアが不思議な目で彼女を見る。
「ど、どうしたんですか!? お姉ちゃん!」
「なにか悪い物でも見たのですか?」
そしてミネルヴァも同じく、アルファー二の反応に心配し、彼女の元まで近づける。
「……あ、大丈夫……そんなことより――」
アルファー二がいきなり立ち上がって、エレオノーラの方へ向う。 そして彼女が一体考えて自分に近付いてることに理解できないエレオノーラが不思議そうな表情で見つめる。
ふたりが目を合わせた時、アルファー二は先に口を開く。
「エレオノーラ・グランディーグニス。 単刀直入に聞く」
アルファー二の眼差しと口調が本気を伝わっていた。
「何だいアルファー二、そんなビリビリしちゃって」
「あなたはオーフィスターニャ・トワベールカと交際する気あるのか?」
それを聞いた他のみんな、及びオーフィスターニャほんにんがあまりにも唐突で意外だった質問に凍りつかされた。
そして何よりアルファー二自身は自分が何を言ってるのかに気付き、顔がトマトのような真っ赤になってすぐに両手で隠した。
しかしそんな雰囲気の中、エレオノーラだけが堂々としていた。 彼女は少しだけ驚いた顔を見せたがすぐに普段の表情に戻り、アルファー二の質問に答える。
「今のところはないな。 オーフィスとはただの仲のいい幼馴染みだし、そういう恋愛感情などピーンとこないんだ」
アルファー二は薄々気づいていた、エレオノーラが出す答えに。 それでも真実を知ったアルファー二の心のどこかで安心していた。
そして、気を取り戻したオーフィスターニャたちがもちろん、途中が何か起こったもハッキリ覚えている。 すると、部屋の雰囲気が一気に気まづくなった。
誰も話すつもりなかった、ただひたすら睨み合って時間が緩やかに過ぎていく。
「も、もう寝よ……! 明日には母さんの依頼が待ってるし……な?」
驚くべきことに、一番気まづく感じてるオーフィスターニャほんにんが最初に声を出し、空気を変えようとしていた。
そして案の定、みんなは明日のことを出来るだけ頭に専念し、そのままアルファー二たちは普段の顔に戻った。
「そうだな! くよくよ考えても仕方がない! 今日はもう寝よ!」
張り切ってるエレオノーラがベッドから立ち上がって、自信満々な顔で笑う。
その後、エレオノーラのペースに連れられたみんなは大いに笑って、それぞれ自分たちの部屋に戻った。
そして、オーフィスターニャがいる部屋が暗くなった時、ふたりの少女が思わず顔を布団の中に隠し、ほぼ同じことを頭の中に考える。
「(も、もしかして……アルファー二のやつ、ワタシのこと……?)」
「(ば、バレてしまった……!!! 何を考えてるの私!? なんでよりによって、オーフィスターニャ・トワベールカの前に聞いてはいけないことを聞くの?! 私のバカァァ!!)」
静かな部屋に、モヤモヤな気持ちを抑え、甘酸っぱい思考が漂う……そのまま、翌日の朝がやってきた。




