第二章20:カルメンの行方 ⑥
オーフィスターニャたちがマリオネタの主が仕込んだ試練に合格した後、彼女たちはマリオネタのあとについて、大きな大樹と出会でくわす。
その大樹の名はユグドラシル、かつて大昔に存在した世界樹で今は小さなユグドラシルになって、世界中にばらまいている。
そして、ユグドラシルの上に、ある女性が居た。 彼女は何らかの方法で目の前の本を浮かせて読んでいる……すると、彼女はオーフィスターニャたちに見られてることに気付き、本が勝手に閉まって、女性は高い場所から飛び降りる。 落ちる葉っぱのように、ゆっくりと降りていく。
綺麗な黒髪の女性がオーフィスターニャたちの前に現れて、色気さ溢れるの笑顔で異国の言葉を話す。
「こんにちは」
「Ko,¿ konichiwa ?」
オーフィスターニャは思わず似たような発音で返した。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
神秘で不思議な女性、精霊族、荒獸族でもない、体が薄々透けてるその女性がオーフィスターニャたちの前に立っている。
何をどう反応すればいいのかに戸惑ってる彼女たちの間に、マリオネタはその女性に近付き、跪く。
『主、試練に合格した者を連れてきた』
「うむ、ご苦労」
いきなり異国の言葉を喋り始めるマリオネタに驚くオーフィスターニャたちが更に混乱する。
「あいつら、一体どの言語を喋っているんだ?」
オーフィスターニャはマリオネタたちに聞こえないように、声を小さくしてレスターたちに話す。
「さ、さぁー……聞いたこともない言葉だ……」
ゼロは深刻な表情を晒す。
「そもそもkonichiwaって何なんです?」
カティアも疑惑を持って、他のみんなに問う。
「私に聞かれても……でも少なくともスペイン語、古代語、英語でもないのは確かです」
レスターも困った顔で苦笑いする。
「つまり、別の言語……全世界の種族は計七つ。 そして現在私たち精霊族が使ってる言葉はスペイン語とロシア語、荒獣族は英語、悪魔族はドイツ語、天使族はフランス語、竜族は中国語、怪毒族は不明で、霊魄族は日本語です。 私もそんなに詳しくありませんが、確かに言えるのは彼女たちが喋ってる言葉は七つの言語の一つとしか推測できません」
ミネルヴァはサラッと全種族が使ってる言語を説明する。
「でもさぁ、肝心なところを言うと……ワタシたちは精霊族と荒獸族以外の言葉だなんて知らないぜ? 少なくともワタシは知らんなぁ、ドイツ語とか……日本語とか」
オーフィスターニャはまるで関わりたくないみたいに、彼女はこっそりと後ろにさがる。
そんな時に、カティアが一歩前へ踏み出し、黒髪の女性に一つでシンプルな質問する。
「あの……! あなた……いや、あなたたちはいったい何者ですか?」
直球すぎた質問で黒髪の女性は少し驚いてるに見えた。 すると彼女は笑みを浮ぶ。
「Lo siento mucho, hacía tiempo que no tenía oportunidad de hablar en vuestra idioma y sin darme cuenta he empezado a hablar en nuestra idioma. (ごめなさいね、随分と其方たちの言葉を喋る機会がなかったのでうっかり私たちの言葉で会話してしまいました)」
黒髪の女性はいきなりスペイン語を語り始めた。 しかも発音は完璧、まるで自分たちが普段喋ってるみたいに聞こえる。
「あ、いえ……こちらこそすみません、お邪魔しまして」
カティアは素直に謝る。
「えっと……そんなことより、お前はいったい何者なんだ? その……お前の体が薄々透けてるに見えるけど……?」
オーフィスターニャがいきなり喋りだし、彼女が最初から気になっていたことを指で示す。
そしてみんなもオーフィスターニャの言葉に好奇心を持って、じーっと黒髪の女性の体に見詰める。
「お! 本当だ! 薄々透けてる!」
ゼロが確信した直後、大声で叫ぶ。
「これはいったいどういう魔法なんですか?」
レスターも驚いて、自分の好奇心に耐えられず、黒髪の女性に近付く。
すると――、
「無礼者! これ以上空愛様に近づくんじゃない!」
マリオネタがいきなりふたりの間に割り込んで、大声で叫ぶ。
「え、え?」
それに驚くレスターが数歩さがる。
「止せ、客を驚かすのはいけません」
黒髪の女性はマリオネタに言いながらそいつの頭に軽く叩く。
「も、申し訳ございません!」
マリオネタの殺気が嘘みたいに一瞬に消えて、すぐに女性に頭を下げて謝った。
「分かれば良い。 ごめんなさいね、うちの守護者が過保護過ぎるだから」
「あ、いえ……お気にならさず、私も少し調子に乗りましたので……」
レスターは少し慌てて自分の誤りを自覚し、女性に謝る。
その頃、レスターの後ろにいる他のメンバーはあることを議論していた。
「さっき、あのマリオネタってやつ……あの半透明の女性を「そら」と呼んだよね?」
ゼロは何故か半信半疑な口調で話す。
「あの……一応聞きますが、名前の発音から聞いてR付きでしょうか?」
カティアもゼロと同様、少し戸惑ってるに見えた。
「Sora……なんかどっかで聞いた名前のような……ないような……んんんん……」
そして、ひとりでなにかブツブツとしているオーフィスターニャが必死に何かを思い出そうとしていた。
その間、ミネルヴァはカティアのそばまで近づく。
「カティア様、謹んで申し上げますが、もし彼女の名前がLだったら、名前はSolaになってしまいます」
「そっか! それも一理ある――」
「あぁああああ!!! 思い出した!」
カティアがまだミネルヴァと話してる途中、突如! オーフィスターニャが大声で叫ぶ。
「な、なに?!」
「んんんー……いきなり大声で叫ばないでくださいオーフィスターニャさん! 耳に響くではないですか!」
オーフィスターニャの叫びに驚くゼロと両耳を塞ぎ、苦しそうででも同時に少し怒ってるレスターが怒鳴る。
「ご、ごめん!」
オーフィスターニャは素直に謝った。
「それで、何を思い出したのですか?」
レスターは耳の具合いをピクピクと上下に動かせながらオーフィスターニャに聞く。
「SolaよSola! この名前を聞いた途端、ピーンと来たんだ! 小さい頃、ワタシはこの場所に来たことがあるって!」
「Soraです。 一体何回言えば其方にうちの名前の正しい発音を覚えられるの?」
空愛はよほど自分の名前に気にしているのか、オーフィスターニャの間違いに明らかに少し怒っている。
「あぁそうだった! SoraだSora! えへへへ……」
「笑い事ではない。 初対面と其方に出会えた時、うちが自己紹介したら……其方……! 其方が……」
空愛はとても悲しい口振りで言いたいことすらできなかった。
そしてその時、空愛は思い出す。 初めてオーフィスターニャと出会った時の会話を。
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幼いエルフの娘は大きな大樹がいる空間にたどり着く。 その子の髪色は碧銀、髪型は普通のポニーテール。
そして大樹の陰に、半透明の女性がいた。 女性は優しく微笑んで幼いエルフの娘に言葉をわかりやすく理解するため、彼女はわざわざ精霊族の現代語、スペイン語で問う。
「Señorita, ¿cómo se llama tu nombre?(お嬢ちゃん、お名前はなんて呼ぶ?)」
エルフの娘は返答もせず、じーと女性に見詰める。 そのまま数秒後、彼女は満開な笑顔で答える。
「オーフィスターニャ! おばさんは? なまえは?」
「おば……! こ、コッホン……私の名前は空愛」
女性の顔が一瞬で歪んだ、がすぐに普段の微笑みに戻った。 そして改めて、空愛は自分の名前を名乗る。
しかしながら、オーフィスターニャは何故か空愛の名前を聞いた後、キョロキョロと周りを見回っていた。 するとオーフィスターニャが困った顔である質問をする。
「¿ Te llamas "Sola" es porque vives aquí sola ?(なまえがSolaってここに独りで暮らしているから?)」
それを聞いた空愛はあやふやで、今でも倒れそうだった時、彼女は指先でオーフィスターニャの額を触れて、異なる言葉を唱える。
「消え去れ」
オーフィスターニャは思わず目を閉じ、そして次に目を開けたら既に森の外にいた。 山の向こうの夕焼け、街の明り、既に夕方であることに気づくオーフィスターニャは何故かさっきまでのことを覚えていない。 彼女が覚えているのは森に入る前の記憶、それだけだった。
しかしながら脳天気なオーフィスターニャは難しく考えもせず、家へ真っ直ぐに帰った。
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短い回想をした空愛が若干泣いていた。
それを見たマリオネタは素早い動きで空愛のそばに近き、何も無いところからハンカチを彼女に差し出す。
そんな彼女を目にしたカティアたちは責める眼差しでオーフィスターニャを睨む。
「いや……! あれはワタシが……確かにあの時のワタシが悪かったけどよォ……でもそれってワタシがまだ六歳の話だろ?! もう十三年前だぞ!?」
必死に理由を話すオーフィスターニャが慌て出す。
そんな時に、空愛はおかしなことを言う。
「ん? 何を言っている、あれは十三年前ではなく、五年前だ」
「はい? いやいやいや……! いくら子供の頃だからって、六歳の頃はちゃんと覚えてるさっ! それにワタシは今年でもう十九歳だ」
会話が明らかに噛み合ってないことに気付く他のみんなが更に混乱する。 でも空愛はあることを話し、ますますオーフィスターニャたちを混乱する。
「あぁぁ〜、そうであった! うっかり忘れたな。 この空間の時間帯は其方たちがいる世界と違うであること」
「…………え? それ、どう言う意味、ですか?」
空愛の言葉に混乱されたオーフィスターニャが何故か敬語で質問する。
「簡単に言うと、例えば、其方たちがこの森に入って既に二時間と三十分が経過した。 そしてその時間を二点五倍にすれば、外の世界は既に六時間と十五分が経過したってこと。 おわかり?」
「…………」
全員は死んだ魚の目をして、約十秒ほど何も喋れず、まるで石像のようにただただそこに立っている。
すると――、
「にゃぁにィィィィィィィッ?! 外の時間が二点五倍速くなるぅ?!!」
ついに耐えきれなかったオーフィスターニャが真っ先に大声で叫ぶ。
「もしや其方たち、そのことを知らずにこの森に潜り込んだ? でしたら早めに帰った方が良い……ところで、其方たちがここに来る理由は?」
「ハッ! 忘れていた! ワタシたちって何しにここに来たんだっけ?!」
オーフィスターニャは慌ててみんなに聞く。
「え? えっと……なんだっけ?」
ゼロも知らない顔でカティアを見る。
「えっ? 私ですか? えっと、確か生徒手帳に書いたはず……えっと……あった!」
カティアは制服の胸元にあるポケットを持ち出し、今朝書き込んだ内容を読み上げる。
「"カルメンの行方を探り、そして見つけた次第彼女を家まで保護する"っと……」
「そうだった! 私たちはカルメンがこの森に入ったことを知って、ここに入ったの! すっかり忘れてたなぁ」
ゼロはとぼけた口調で右拳を左手の上に軽く程度で叩く。
「しかしカティア様、重要であるカルメン様の姿がどこにも見当たりません。 確かこの方向へ来ましたのに……」
ミネルヴァはカティアのそばで周辺を見渡ってるが、どの場所にも子供の姿が見えない。
「そうです……どこにもいないです。 一体どこにいるんでしょう?」
レスターも心配そうな顔でカルメンの行方を探している。
「ああ、、あのエルフの娘のことなら、このユグドラシルの下に寝ている」
「え? 本当ですか!?」
予想外の発言をした空愛の言葉に全員を一瞬戸惑わせた。
「私には嘘をつく理由はあるある? ほら、よく見ろ。 あそこにある小さな、緑色の膨らみ」
空愛は指で大樹の下を指し、草の色とほぼ同じ色の服を着てる子供が確かにそこに寝ている。
「本当だ……目をよく凝らさないとてっきりただの草としか思っていなかった……たく、なんて紛らわしい格好しやがって……」
オーフィスターニャは文句を言いながら、カルメンに近づく。 微笑ましい寝顔、長い睫毛、愛らしい呼吸音、ちっちゃい体……そんないかにも触れるだけで壊れそうな外見をしているカルメンを見たオーフィスターニャが――、
「よいしょ」
一点の迷いも無く、彼女を担げた。
するとそれを見たカティアたちは一瞬で慌てだし、オーフィスターニャに別の方法で、もっと彼女をもっと居心地のいい運び方で運べっと声を出さず、色んなポーズと指示でオーフィスターニャに見せる。
「(はぁ? 何やってるんだあいつら?)」
しかしカティアたちの考えがオーフィスターニャに伝わなかった。 そして当のホンニンはそのままカティアたちと合流する。
「これで依頼達成だな。 早くこいつの家まで送って帰ろ!」
「しぃぃー!!! 大声を出さないでください! もし彼女を起こしたらどうするんですか!? それと彼女を荷物扱いで肩にのせないで! せめてお姫様抱っこでお願いします!」
カティアはめちゃくちゃ小さい声で、しかし明らかに怒ってる口調と言う微妙なバランスを保ち、オーフィスターニャに言いつけている。
「お、おおわかった……」
はっきり聞こえたオーフィスターニャはゆっくりとカルメンを肩から両腕の上にのせた。
「よし、これでいいだろ? 早く帰ろ、もたもたしてる外の時間がどんどん遅くなる」
時間の重要性に忘れていないオーフィスターニャが先に入った方向へ逆戻りに行ってしまい、カティアたちを置いといた。
「あ、おい! 空愛さんに別れる言葉すら残さないのか? ちょ待って……!」
「いいんだ」
ゼロがオーフィスターニャを呼び止めようとしたら、空愛は先にゼロを呼び止めた。
「でも……」
「いいんだ。 彼女はそういうエルフだ……周辺のことを気にせず、ただやるべき事をやる。 そんな不器用で真っ直ぐな性格、いずれそれが彼女を支える強い力になるであろう……しかしそれには仲間の力が必要不可欠、其方たちはきっとあの子の心を支える存在になれる」
まるでオーフィスターニャの未来を知った風な口ぶりで、ゼロやカティアたちに聞かせる。
彼女たちはお互いを見詰めあって、それぞれが自分らしい返答で空愛に返す。
「任せおけって!」
「分かりました!」
「はい!」
「承知しました」
「任せてください!」
素晴らしい返答を聞いた空愛が思わず微笑む。
「では行きなさい!」
「「はい!!」」
カティアたちが走ってオーフィスターニャのあとを追いながら空愛に手を振って別れをした。
彼女たちは再びマリオネタと戦った空間に戻って、そしてその先にある霧に覆われている入口に潜り込む。
走ってる途中、カティアたちはある違和感を感じた。 しかしその違和感に気づいた時、彼女たちは既に森の外にいた。 無論、先に行ったオーフィスターニャも彼女たちの前にいる。
「私たち……既に森の外にいるの?」
不思議な顔を晒すカティアが他のみんなに問う。 でもその質問に答えたのはミネルヴァただひとり。
「そのようです……」
ミネルヴァに比べて、他のふたり、ゼロとレスターはまだ困惑から抜き出していない顔を並んでいる。
するとその時、前方に遠くから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「おおおい!!」
みんなはその声に気づき、耳をすます。
「オーフィス! みんな! 大丈夫?」
「ああ! 大丈夫だ!」
カティアたちの少し前に立っているオーフィスターニャが先に声の主を聞き取り、カルメンを起こさないことに注意しながら返答した。
「私たちもオーフィスターニャさんのところまで行こう!」
「そうだな!」
レスターが走り出したに続き、ゼロも彼女をあとを追った。 そして少し遅れたカティアとミネルヴァも同じく走り出した。
みんながオーフィスターニャのそばまで着いたら、そこはちょうど街の明りがよく見える位置であり、見晴らしのいい場所でもある。 そして視線を少し下に向くと、そこにはみんながいた。
「お姉ちゃん! そして先生も……!」
別の依頼を受け、先に飛び出したチームBが既にイファスティと一緒にいた。
その時、イファスティはオーフィスターニャたちが森から出られたことに驚く前に、彼女は真剣な表情でオーフィスターニャにある質問をする。
「何故ひと探しするには、こんなに時間をかけたのか、ちゃんと説明してくれる?」
実にシンプルで直接的な質問であった。 しかしそこにはイファスティの威圧感がオーフィスターニャに迫られる。
すると彼女はつばをごくりと飲み込み、覚悟を決めたような表情で母に真っ直ぐな目で真実を伝える。
「森の中の継続時間が異常に遅いであった! そして森の奥に奇妙な人物と出くわし、彼女から森の中の時間とワタシたちの世界の時間は二点五倍より遅いと言われました!」
「ホゥ……つまりお前たちが森に入って、時間的にまだ三時間しか経っていない。 けれどこちらの世界では既に七時間が経過したと……」
あまりにも有り得ない話とイファスティの口調からはっきり感じてるオーフィスターニャと他のメンバーは既に答えが見えていた。 どう見ても言い訳しか聞こえないと思い込んでいた。
しかし――、
「うんわかった」
「え?」
「え?!」
イファスティに叱れると心の準備まで整えたオーフィスターニャたちに予想外の展開に戸惑った。
「なら早くあの子を家まで送ってやれ。 それと報告書をちゃんと書けよ、あたしは職員室でのんびりと待ってるから……」
「あ、ちょっ……!」
オーフィスターニャが声をかけようとした瞬間、イファスティは既に静寂疾走で去っていた。 残されたのは僅かの香り、彼女が今朝使った香水の匂いだけだった。
そして現地に残された一年二班がぼーっとして、瞬きふたつした後、彼女たちはお互いの顔を見て笑った。
「ハハハハ! にしてもなんでお前がいつもいつも変なことに巻き込まれるんだ?」
エレオノーラが高笑いをしながらオーフィスターニャの肩を叩く。
「痛っ……それはこっちが知りたいだっつーの! まさかこの森の奥に昔出会ったひとと出会すとは思いもしなかった……はぁー疲れた」
重いため息をつくオーフィスターニャが精神的に疲労をしていた。
「この森に? そう言えばお前昔この森に入ったことがあるって言ったよな……」
「ああ、その時はマジびっく――」
「オーフィスターニャ様」
まだオーフィスターニャがエレオノーラと会話で盛り上げてる途中、ミネルヴァがいきなりオーフィスターニャを呼びかける。
「ん? なんだ?」
「オーフィスターニャ様、僭越ながら申し上げますが、ここは早めに依頼を完成した方が宜しかと……」
ミネルヴァはまだ依頼の途中っとはっきりオーフィスターニャに伝えた。
「あそうだった! 悪ぃエレオノーラ、ワタシたちは先にこいつの家まで送るので、お前たち先に職員室に行け」
「いや、私たちも同行するぜ。 まだ話したいこと山ほどあるんだ!」
「そ、そうかい? んじゃあ一緒に行こうか!」
「おお!」
そして結局、一年二班のみんなが共に歩きだし、カルメンの家まで送ってやった。
その途中で、全員が大いに笑っていた。 双子とアルトリア、姉妹とミネルヴァ、レスターとフィーリア、エレオノーラとオーフィスターニャの順位で、彼女たちが話しながら歩いている。
その後、教会の近くにカルメンの家を見つけ、彼女を無事親のところまで送った後、オーフィスターニャたちは学園へ戻った。
十分ほど歩いて、彼女たちはようやく学園にたどり着いた。 少々疲れていたオーフィスターニャはその後、先に自分たちの教室に戻り、そこに彼女は報告書を書き始めた。 その間に、他のみんなは今日の依頼にどんな出来事を盛り上がって語り合っていた。
約三十分後、オーフィスターニャはようやく報告書を書き終わって、そのままチームAとエレオノーラたちと職員室へ行った。
階段を降りて、職員室の入口まで着いたオーフィスターニャはドアにノックする。
「入れ」
無論答えたのはイファスティだった。 そしてドアを開けた後、オーフィスターニャは真っ先に報告書を提出した。
「うん、ありがとう」
報告書を手に入れた直後、イファスティはさっそく内容を読み始めた。 そのまま二分で読み終わったイファスティは報告書を机に置き、横にあったスタンプで報告書に印を付ける。
「今回の依頼は少々不可回避の問題が生じたので、結果的にお前たちは制限時間のギリギリまで依頼達成した……」
イファスティの説明が長いと感じたオーフィスターニャたちは少し緊張し始めた。
しかし――、
「よってあたしは今回の依頼の判定をAにする!」
まったく予想外の結果だった。 彼女たちはてっきり不合格の判定を貰えると思って冷や汗をかいていた。 そして本当の結果を聞いた途端――、
「や、やったー!!!」
「やりましたねミネルヴァ!!」
「おめでとうございます、カティア様」
「よっしゃー!! これでトイレ掃除が逃れたぜ!」
「はぁーよかった……」
全員が笑っていた。 幸せそうに笑っている。 しかしそこにエレオノーラたちが登場した。
「イファスティさん、結局どのチームがトイレ掃除に行くのだ? 私たちの判定もAだぜ」
エレオノーラは単刀直入に聞く。
「今回は引き分け。 つまりそれは――」
「「それは??」」
もったいぶるイファスティと結果を知りたがってる両チームのリーダーがごくりとつばをのむ。
「全員仲良くトイレ掃除すること! 以上だ!」
「「ハアアァァァ??!」」
薄々結果気付いていた両名だったが、しかしそれでも彼女たちはその可能性を否定し、見ようとしなかった。 そして結果的に、ふたりは文句のある顔付きになった。
「ちょっ! 母さん! どう言うことだそれ!?」
「納得出来ない! イファスティさん! もっと別の方法で……っていねえじゃねか!」
ふたりがまだ文句を言ってる途中、既にイファスティの姿が消えていた。 そしてさっきまで机の上に何も無かったのに、何故か紙一枚が残されていた。
オーフィスターニャはさっそくその紙を取って、内容をみんなに読み上げる。
《つべこべ言わず、親交を深めるためと思って、仲良くトイレ掃除しろ!》
シンプルな内容だった。
オーフィスターニャは紙を机の上に戻し、大きなため息をつく。
「ふーはぁー……たく、うちの母さんが何を考えているんだ?」
「まぁでもこれもイファスティさんらしいやり方だ」
ポジティブなエレオノーラはオーフィスターニャの肩に手をのせて笑う。
「これからどうするのです? このまま部屋へ戻る?」
レスターは先に帰宅の提案する。
「そうだな……ワタシはもうヘトヘトだ……風呂入ってさっぱりしたい!」
「私も……」
「んじゃ帰ろっか」
「そうだな……」
全員が意見一致し、彼女たちはのんびりと部屋へ戻った。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
オーフィスターニャたちが職員室から出た後、窓から差し込んでる夕日の眩しい光が徐々に消え去り、真っ暗な空間になった時……いきなりイファスティが座っていた椅子の上に、黒い霧が現れ、そこから影のような存在が出現した。
「ふん……ふふふ……」
影が不気味な笑い方で嗤っている。
「まだ気づかないとは……ふふふん……馬鹿にもほどがあるな。 お前たちの終焉が刻々と迫ってくることすら気づかないだなんて……愚かな精霊族よ……お前たちは滅びる、我々の罠と知恵で滅びるのだ! ふふふふ……ふはふはふハハハ!!!!」
複数の声と雑音で喋った影は再び闇に紛れて姿を晦ませた。




