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マジック × ワールド:アーニユ(Magic × World:Ániyu)  作者: 川崎雨御
第二章:死者の復讐編
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第二章19:カルメンの行方 ⑤

 木像が呼び出した三体の石像をいとも簡単に倒した後のオーフィスターニャたちは一旦オーフィスターニャのところまで合流した。 全員は最初それぞれ意見交換して、そしてそれが何故か別の問題にもめあってしまい、中々進展を見せなかった。


 彼女たちが木像の対決をすっかり忘れていて、戯れあってる間、ミネルヴァは最初に木像の奇妙な行動に気づき、他のみんなを呼んだ。 そしたら木像は自分の手を地面にぶち込んでそのまま持ち上げた。 すると、そこには文字が書かれていた……。


「¿ Podemos empezar ya ?(もう始まってもいいですか?)」


 待ちくたびれてる木像は思ったことを看板にではなく、石板に書いてそれをオーフィスターニャたちに見せる。

 そして見たオーフィスターニャが気まづくこう答えた。


「あっ、はい……」


 雰囲気は一気に微妙な空気になってしまった。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 気まづい雰囲気の中、ミネルヴァは堂々とオーフィスターニャたちの前に立つ。 何か対策を思い付いたのか、とオーフィスターニャの中はそう考えた。

 しかしそうではなかった……彼女は何故か魔方陣を展開し、ある物を創り出した。


 カティアがそれを見たら、戸惑った顔で見詰める。


「看、板……? 一体何をする気?」


 そしたらミネルヴァは看板と一緒に創ったインク付きの毛筆(もうひつ)を使って、看板に何か書き始めた。

 気になるオーフィスターニャたちが覗こうとしたら彼女はちょうど書き終わって、看板を木像に見せる。 そして内容は何なのかが気になってる他のみんなはミネルヴァの左右に囲まる。


 すると――、


「お前……何を書いたのか分かってるのか!?」


「はぁ?」


 オーフィスターニャとゼロが看板内容を読み終わって呆れた顔でミネルヴァの無表情に見詰める。

 そしてその内容は――、


「La batalla ya ha empezado hace minutos, ¿por qué no nos has emboscado cuando estábamos hablando?(戦いは既に数分前から始まっています、何故私たちが話してる隙に襲わなかったのですか?)」


 書かれた綺麗な文字と内容は思いもしなかった盲点だった。 しかし、オーフィスターニャたちが驚いてる間、木像の両肩は上下に動いて、まるで笑ってるような仕草をしていた。


 そしたら……そいつはいきなり有無を言わずに持ってる岩を前へ軽く投げいて、右拳で岩を粉砕し、飛び散った破片は真っ直ぐにオーフィスターニャたちを襲い掛かって来た。

 木像の攻撃が仕掛ける前に全員は一瞬早く左右へ逃げた。


 右側はレスター、カティアとゼロと言う順番で……左側は残ったふたり、オーフィスターニャとミネルヴァ。


「危なっ!」


 ゼロは慌てて地面から起き上がって、制服の汚れを叩く。


「いきなり攻撃して()ましたね……やはりさっきミネルヴァさんが書いた内容は原因(げんいん)でしたでしょうか……?」


 しゃがんでるレスターは顔に苦笑いが浮かびながら反対側にいるミネルヴァをチラリと見る。


「おいミネルヴァ、お前なんで余計なことするんだ? 確かにお前が書いた通り、その内容は興味深いけどよ……今はそんなことを聞く場合か!?」


「仕方がありません。 そうしないといつまで経っても皆さんは攻撃する気配がありませんから……それに、相手はどうやら話し合えるようで、なおさら警戒しなくてはなりません」


「だからってそんな挑発的な内容を書かなきゃいいのに……はぁー」


 オーフィスターニャは怒りながらミネルヴァの行為にツッコンで最後にため息をついた。


「そのことで口論する前に、なんとかしてください! 敵は本当に怒ってるみたいです……!」


 不安がってるカティアは密かにレスターの小さな背中に隠れた。


「カティアさん、私の背後に隠れても無駄だです……」


「ほぇ?」


 当のほんにんが自覚してないけど、彼女が小柄なレスターの後ろに隠れてる姿はほぼ隠れていない。


「おい、わたしの前でいちゃつくじゃねぇ!」


 すると一番後ろにいるゼロがふたりをツッコンだ。


「ぜ、ゼロさん!? 何を言ってるのですか?! わ、私たちはイチャついてるとかだなんて……そんなことしてない!」


 顔が少し赤くなってるカティアは焦ってあっちこっちと見てて、その中で彼女はチラリとミネルヴァの方へ見たが……案の定、ミネルヴァも彼女を見ていた。 その僅かな一瞬はカティアの顔を更に真っ赤させ、お互い視線を逸らした。


「カティアさん! もっと後ろへ下げてください!」


 レスターの焦ったセリフが一気に周りの雰囲気を変えた。


 なぜなら――、


「なっーー」


 十メートル以上離れていたはずの木像は瞬時にレスターたちの目の前に現れた。

 オーフィスターニャが驚いていたのは本来彼女が木像を見詰めて動きを監視していた。 しかし、瞬きした瞬間! 木像の姿が消え、一瞬でレスターたちの前に現れた。 しかも魔法を使った痕跡がなかった……つまり、木像はただ単に素早い身体能力でレスターたちに接近しただけ……そう思ったオーフィスターニャがぞっとした。


 瞬間的に出現した敵は暇を与えもなく右拳で攻撃する。 対するレスターは取った行動は二つ、彼女はまず後ろにいるカティアを突き放した。 次にレスターは防御態勢(ぼうぎょたいせい)に構えようとしたではなく、強烈な一撃を木像の顔面にぶち込んだ……。

 殴られる前に、思考が回す前に、体は先に動き出し、相手を殴り飛ばした。


「おいおいおい……」


「あらら……レスター様、お強いですね」


「すげぇ……」


 全員の誰しもレスターが一発喰らわせると思ったやさきに、レスターが逆に木像をぶっ飛ばすところを目撃した。

 そして敵をぶっ飛ばしたレスターは殴った右手の痺れを治すために振って、苦笑いで木像に話す。


「木像さん……急に襲ってくるだなんてダメじゃないですか……ここは正々堂々戦いましょう」


 飛ばされた木像は地面に二回ほど跳ねて地面にそう長くない、約二メートルの跡をつけた。


 木像は上半身起こし、左手を殴られたところを触って、まるで今起こったことが理解できなかったと言わんばかりの仕草でレスターの方へ見ていた。

 そしたら木像は左手を強く握って、体ごと震えてるに見えていた。 本格的に怒ってる、と言う先入観(せんにゅうかん)が全員の思考に植え付けられた時……木像の震えが急に止まった。


 すると――、


『やれやれ、とんだ小娘だ。 このマリオネタ(Marioneta)様の顔に傷付くだなんて……ふふふ、フハフハフハ……! やるじゃないかッ!』


 木像の顔にいきなり大きな縦の口が現れて、口の中からはっきりと見える……全ての歯が尖った(きば)であること。 そして木像が喋る時の声は何故か複数の声が混ざって聞こえている。


「なっ……」


「しゃ、しゃべったァァァァ!!!」


「おいおい……いくらなんでもあれは不気味すぎるだろう」


「…………」


「顔面がほぼその大きな口で覆われている……こわ……」


 オーフィスターニャたちが驚きすぎてそれぞれ色んな反応し、その中からミネルヴァだけは何故か黙り込んで怖い眼差しで木像を、マリオネタを睨んでいる。


「カティアお嬢様、オーフィスターニャ様。 ここは、私ひとりに任せてくれませんか?」


 彼女が敵を睨んでる時、カティアとオーフィスターニャに予想もしなかった質問を聞く。


「へ?」


「……お前、言ってることが分かってるのか?」


 まるで聞き取れなかったカティアと信じられない顔をしてるオーフィスターニャがミネルヴァを見詰める。


「承知の上です」


 彼女は迷いの無い口調で答える。


「しかしですね、ミネルヴァさん……相手は相当な強者(つわもの)です。 本当にひとりで戦う気ですか?」


「はい、その通りでございますレスター様。 ご心配なさらず、私ひとりでも十分足りると思います。 これは自信過剰ではありません、むしろ()い機会です」


 ミネルヴァの言葉が少し理解できなかった顔をしていたレスターが心配して彼女に問いかけると、ミネルヴァは普段のニコニコ笑ってる表情で答えた。


「機会……? 一体何を企んでいるの? ねぇミネルヴァ、早く教えて」


 疑ってるカティアが聞く。


「簡単に言いますと、今は私の本気をみんなに見せる絶好の機会、と言うことです」


 ミネルヴァの自信に満ちた顔は全てを物語っている。

 木像はそんな彼女の覚悟を見たら、口は大き開けて嗤う。


『ホホゥ……随分となめられたもんだなぁ、でもよぉ……あんたの相手はこのマリオネタ様ではないぞ? ふん……』


「ん? それはどう言う意味です――」


「ミネルヴァさん危ない!!!」


 気掛かりの言葉を吐き出したマリオネタの直後、ミネルヴァがまだ話の途中に、いきなりレスターの叫び声が空間に鳴り渡る。


 すると――、


「!!」


 ミネルヴァはかろうじて攻撃を両刃の斧で防げたが――、


「お、おい……レスター! どうしてお前がミネルヴァを襲った!?」


「私も分からないです! 一体何かが起こってるのか、さっぱり分からないです! 急に体が勝手に動いて、そのままミネルヴァさんを襲ったのです……!」


「ハァァ〜??」


 そしたらみんなの視線はミネルヴァを襲った人物、レスター・ヴァニーシュを見詰める。


 しかしながら当のほんにんは完全に戸惑っている。 その証拠に、さっきの叫び声は彼女自身の意志で叫んだ。


「まさかと思うが、レスターさん……敵に操られてるのですか?!」


「なんだって!!」


 カティアは震えながら自分でも信じられないことを言ったら、ゼロが真っ先に反応した。

 そしたら、マリオネタの口が微妙に動く。


『¡ Exacto !(正解!)このわたし様の体の特性は相手と接触した瞬間に操ることが出来る! つまり! 操られる傀儡(マリオネタ)ならぬ、操る傀儡(マリオネタ)と言うわけだ!!』


 マリオネタは自信満々と指を前へ指して自分の能力を説明する。


「テッ! マリオネタマリオネタ、お前が人形であることは十分わかった! だからお前の名前はマリオネタ、傀儡(くぐつ)だろう? ネーミングセンスねぇなおい」


 いきなりオーフィスターニャが相手を煽る荒っぽい口調とセリフを吐く。


 しかし相手は聞くところか、完全に無視し、自分の話を続けた。


『そうだな……わたし様は優しいから、お前たちにいいことを教えてやろう! この特性にデメリットがある! 一つ、操れる傀儡(マリオネタ)はひとり。 二つ、この特性を発動条件は相手の至近距離の接触。 つまり、長い武器でわたし様を攻撃すれば操れることに済む』


 マリオネタはわざわざ自分の特性の弱点をオーフィスターニャたちに聞かせて、みんなを混乱する。 しかしそれでも、たったひとりのエルフが完全に相手の話を空気のように無視して、前へ突っ走った。


「戯れ言はここまでです!」


『!!』


 突如、マリオネタの前に赤紫色の髪のエルフ――、ミネルヴァ・フショー・フォン・クレアトゥールが現れた。


 そして……次の瞬間、下から攻撃したミネルヴァが敵の左腕を斬り飛ばした。

 マリオネタの腕が約三メートル以上飛ばされたが、敵の口が何故か笑ってる。


『フン……』


「!?」


 違和感を感じ取ったと同時に敵の右拳がミネルヴァの顔面に殴った。 そのまま彼女はオーフィスターニャたちのところまでぶっ飛ばされた。


「ミネルヴァ!!!」


「おいミネルヴァ! 大丈夫か!?」


 カティアとオーフィスターニャは真っ先にミネルヴァのところへ駆けつける。 カティアは大声でミネルヴァの名前を叫んで、オーフィスターニャは彼女の具合いを

 地面に倒れていたミネルヴァの顔、主の傷は鼻血が少し出ているだけで、鼻のあたりが少し腫れてる。


「大丈夫です……カティア様、オーフィスターニャ様。 少し油断しましただけです……」


 ミネルヴァはゆっくりと上半身を起きあげて、右手でハンカチを創って顔の血を拭き取る。


「とてもそうは見えない。 お前、まだひとりで戦う気?」


「はい」


 ミネルヴァは鼻血を拭き取ったハンカチを消し、オーフィスターニャの質問に即答で返す。


「カティア、お前もなんか言え! 本当にミネルヴァひとりにやらせるの?」


 珍しく少し焦ってるオーフィスターニャがカティアにミネルヴァの説得に手助けを求める。


「私……ミネルヴァを信じます!」


 カティアは最初に瞬き一つした、が……その直後に彼女は揺るぎのない決意した顔でミネルヴァを見詰める。


「ありがとうございます、カティア様。 行ってまいります!」


「って……おい!」


 オーフィスターニャが何かを話す前に、ミネルヴァは再びマリオネタに向かって突っ走る。


「ミネっちのやつ……本気でひとりでふたりの敵を相手するのか?」


 不思議に思うゼロがミネルヴァの背中を見て、思ったことをそのまま口にする。


「そのようだ……カティアがああ言ったんだ、ワタシたちもミネルヴァを信じよう」


「だな!!」


 ゼロとオーフィスターニャはカティアと言葉に賛成して、ふたりはミネルヴァの戦いを見守ることにした。

 その頃、カティアほんにんは自分の思いをミネルヴァに届けるように心の中で念じる。


「(頑張って、ミネルヴァ!)」


 そしてミネルヴァがまるでカティアの声を聞こえたみたいに、僅かに微笑んだ。


「(カティア様、必ずレスター様を助け出して見せます!!)」


「ホホゥ……向かって()るのか! せっかくお仲間さんのひとりが必死にお前を止めようとしたのに、逆に頭に血が上ってこのマリオネタ様に向かって()るか! が、残念だったなぁ! お前の相手は傀儡(わたし)ではなく、この傀儡(マリオネタ)だーッ!」


 傲慢な口調でミネルヴァを煽って、その間にマリオネタは指でレスターを操り、彼女をミネルヴァの前に連れる。


「ミネルヴァさん! 遠慮しないで! 思いっきり攻撃して!」


 レスターは大声で自分の覚悟を示す。


「それはできません、レスター様……」


「なっ!?」


 ところがミネルヴァが土壇場(どたんば)で弱音を吐く。 そしてそれを聞いたレスターが一瞬で色顔を変えた。


「大丈夫……」


「……え?」


 両者が接触する前、約二メートルの距離に、ミネルヴァは僅かに微笑んだ。 まるで母が子供に聞かせるように、優しい声で呟く。


「私の狙いは最初から変わってありません、一撃で倒して見せます」


『ハァッ! やれるのならやって見ろっ! その時はこいつとお前を一緒に葬ってやるッ!』


 確固たる自信を吐く両者、どちらも相手を倒す力が持ってる。

 ミネルヴァは依然として一直線でレスターとマリオネタに近付く。 オーフィスターニャたち全員は気になっている、ミネルヴァが言ったあの言葉の意味……。


 そう考えてる最中、マリオネタの前にある物が突然に現れる。


『なっ! 鏡だと!? えーい! 小癪(こしゃく)なマネを!(ふん、この鏡は(おとり)! やつはきっと左右、或いは鏡の上に飛んで来て、死角から攻撃する……!)』


 怒ったマリオネタはレスターを操って、鏡を一撃で破壊した。 そしてマリオネタは一歩後ろにさげて、左右と上を見たが――、


『なにィィ?! どこにもいないだとぉ?! んなバカな!? まさか消えたとでも言うのかッ!』


 何処にもミネルヴァの姿いなかった。 マリオネタ必死に周囲を見回ったが、それでも見付からなかった……。


 すると――、


『……え?』


 マリオネタは違和感を感じた瞬間、そいつの視線は上から下へ、上半身が仰向けて地面に落ちた。 綺麗に真っ二つにされて、下半身はそのまま突っ立っている。


「消えたではありません。 私はただ別の位置に移動しましただけです、ふふ……」


「ミネルヴァさん?! 一体どうやって敵の後ろに回り込んだのですか?」


 マリオネタが地面に落ちたと同時に、レスターに掛けられていた傀儡の効果も消えて、彼女はようやく体の自由が戻った。


「簡単です。 私はまず大きな鏡を創り出す、次に【転送(てんそう)の扉】を鏡と同じ大きさを創り、そこから潜って、敵の後ろに現わす。 そして油断してる敵の背後にひと振りで真っ二つにする」


「な、なるほど……内容はともかく、作戦自体は凄いです。 助けてくれて、ありがとうございます」


 レスターは最初内容にドン引きしたが、最後に彼女はきちんと頭をさげて礼を言った。


『フフ……フハハハハハ……!』


 っといきなり地面に転がってるマリオネタが高笑いする。 そしてミネルヴァとレスターは瞬時にそいつの周りから離れて、距離を取った。


「こいつ、まだ生きてる?!」


 遠くから見てるオーフィスターニャが驚く。


「ミネルヴァ! その傀儡にとどめを刺せ!」


「承知しました!」


 カティアは素早くミネルヴァに命令を(くだ)し、それを実行しようとするミネルヴァの直前に、マリオネタは左手をあげて、手のひらを彼女に見せる。


『まぁ待て。 そう慌てるな、まずわたし様の話を聞け。 お前たちに伝えたいことがあるんだ』


「まさか、命乞いでも頼むわけあるまいな?」


 レスターは疑う目で睨む。


『ハッハッハ、命乞いだと? こんな状態でも簡単にお前たちを倒せる、しかし! わたし様の(あるじ)はお前たちが試練に合格したと言っている』


「なん……だと……?」


「あなたの主……?」


 近くで聞いていたレスターとミネルヴァが驚愕の表情を晒す。


 そしてその間に、マリオネタは上半身を起こし、傷口から何本の枝が現れて、それが下半身の傷口と繋ぎ合わせたら……完全に元の姿に戻った。


『うん。 やはり体が一つになる気分はいいねー』


 マリオネタは背伸び運動して、体の調子を確かめる。


「まさか……! 今の攻撃、効いてなかった?!」


 更に驚くレスターが警戒し、攻撃態勢に入る。


『そう緊張しなくても、わたし様にはもうお前たちと戦う理由がなくなったのだ』


「くぅ……はい?」


「今、なんておしゃったのですか?」


 意外な展開にレスターとミネルヴァが目を大きく開ける。


『さっきも言っただろう? わたし様の主がお前たちは試練に合格したと言ったって。 だからわたし様は戦うのを止めた。 ほれ、入口はそこだ』


 マリオネタはレスターたちに手で入口の方向を示すと同時に、塞がれていたはずの茨の壁が消え、そこから最初に見えた眩しい光が再び現れた。


「どうします?」


 カティアはオーフィスターニャに意見を聞く。


「進もう……」


「おい本気か!? 相手は数分前まで敵だったぞ!?」


 ゼロは信じられない顔でオーフィスターニャの答えに意見する。


「今はもめてる場合ではないんだ。 それに、さっきまでの威勢が消えてるから……ここはマリオネタの言葉に信じよう」


「あっそう……。 オーフィスがそう言うのなら、わたしも信じよう……」


 ゼロはオーフィスターニャに説得され、カティアもそばで微笑む。


「ミネルヴァさん、どうします? この者の言葉を信用していいですか?」


 まだ警戒してるレスターがすぐ横にいるミネルヴァに問う。


「カティア様はオーフィスターニャ様の言葉に信じるとおっしゃった。 私も信じると思います」


 ミネルヴァは微笑んで答える。

 そんな表情を見たレスターは思わず笑う。


「そうですね」


『全員揃ったな! わたし様の主は極めて奇妙な御方(おかた)だ。 さっきお前たちに攻撃したことも、わたし様の主が考えた(あん)だ。 わたし様を倒した者に道を開ける、そうでもない者は追い返す』


 とても笑えない内容を語るマリオネタの口はいかにも悪党の微笑みを晒す。

 そして当然のように、オーフィスターニャたちは思わずマリオネタの周りから離れる。


『ハーッ! まったく用心深い(やつ)らだ、ほら! わたし様について来い!』


 マリオネタはその言葉を残して、光の中へ入った。


 なんか胡散臭い、っと思ったチームAが、それでも彼女たちは進むしか選択肢がなかった。 最初に光に入った勇者はミネルヴァ。 次にオーフィスターニャ、レスター、ゼロとカティアの順番で入る。


 まばゆい光の中に歩く時間はほんの数秒足らず。 そしてやっと出られた時のオーフィスターニャの顔は唖然……彼女、いや、彼女たちが見た景色は壮絶であった。


 マリオネタは彼女たちの少し前に立って、そいつの視線は大きな木を見詰めている。 光ってる葉っぱ、滴る光のしずく、その木は正しく世界樹『ユグドラシル』、しかも大きさはアルトリアたちが見つけた世界樹より四倍ほど(おお)きい。 無論、このことはオーフィスターニャたちはまだ知らない。


 そして、オーフィスターニャたちが美しい大樹に見蕩れてる間、ある異質(いしつ)(なに)かを見た。


「ん? 木の上に何かあるよ?」


「え? どこどこ?」


 ゼロは最初に気付き、指で木の方へ指して、オーフィスターニャは指が指してる方向を見る。

 オーフィスターニャが探して約二秒後、彼女も見つけた。


「なんだあれ? 本が宙に……浮いてる? あと、それを読んでる女性は……? なんか……透けてるに見えるぞ?」


 話してる内にオーフィスターニャの顔が真っ青になっていた。


 オーフィスターニャが見た黒髪の女性らしい人物は彼女たちが知らない服装を着てる、白と緑色の浴衣。 何よりも、精霊族(エルフ)荒獣族(ラフビースト)にも似てないその者はくつろいでる姿勢で木の枝に座って、のんきに浮いてる本を読んでいる。


 するとその者はオーフィスターニャたちの存在に気付き、本が勝手に閉ざして、彼女は高い場所からそのまま飛び降りる。


「危なっ……って、あれ?」


 オーフィスターニャが叫んだ直後、異様な光景を見てしまい、戸惑う。


「おいおい……これってありなのか?」


 驚いてるゼロは心に思ってることを口にする。


 それもそのはず。 彼女たちが見ているのはゆっくりと降りている女性の姿だった……。 天使族(プサルテリオン)特有の翼がない、魔法を使ってる痕跡もない。 女性はただ単に葉っぱのように悠然と降りている。

 そして地面に降りた後、女性は色気万点の微笑みでオーフィスターニャたちに異国の言葉で挨拶する。


「こんにちは」


「Ko,¿ konichiwa ?」


 言葉の意味すら理解できなかったオーフィスターニャは思わず似たような発音で返事した。

 最後に書いた「Konichiwa」は実際ワタシが外国人から「こんにちは」を言おうとした時の発音だ。 日本語に詳しくない外国人、その大半は「konichiwa」を言ってしまうんだ……たとえ目の前で正しい発音しても同じ結果だ。

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