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マジック × ワールド:アーニユ(Magic × World:Ániyu)  作者: 川崎雨御
第二章:死者の復讐編
32/36

第二章17:カルメンの行方 ③

 オーフィスターニャたちが幻惑の森に奇妙な植物たちと遭遇し、それを簡単に退治した後、オーフィスターニャは先頭を取り、彼女がひとりで濃い霧に入った。 その後、ミネルヴァとカティア、レスターとゼロはオーフィスターニャを追いかけて、広い空間に辿りついた。

 十字路、その名の通り、空間には来た方向を含めて、三つ新たな道があった……しかし霧のせいで道の奥が見えない。 「これはきっと何かが仕掛けられていると違いない」、と考えたオーフィスターニャはみんなにうかつに入るなっと注意した。


 そしてオーフィスターニャたちは暫くの(あいだ)だけ、全員は静かに、ただ静かに脳みそを搾るまで考えていた。



――五分後――



「やめたやめた! 考えるのをやめた!」


 とうとう諦めたオーフィスターニャは大声で叫ぶ。


「これからどうします?」


「みんなが手分けして三つの道へ同時に入るっと言うのはどう? わたし的にはこれが一番効率的のいい方法と思うが……」


 レスターの不安な質問とゼロが提案した解決法に、みんなは微妙な顔で見つめ合って、そして同時に頭を横へ振る。


「確かに数で道を探すのは常識的な方法だけど、この霧とさっき遭遇したあの奇妙な植物たちを考慮(こうりょ)すると、単体行動は危険性があると思う」


「それって……どう言う意味です?」


 オーフィスターニャの考えに少し理解できなかったカティアは詳細を求める。


「そうだな……んん……説明が少し長くなるが……まぁ簡単に言うと、もしワタシたちが手分けして(しん)の道を探しに行ったら、それはつまり、そこに何かが潜んでいるも分からない状況に、少数で未知なる領域に踏み入れることになる。 特にワタシたちが倒したあの奇妙な植物たち……単体だけは結構弱くて、と言うより、脆い。 でももしさっきと同じ数、いや、それ以上の数の敵をひとりで戦わなければならない場合に追い詰められたら……大ケガは確実だ!」


 オーフィスターニャは最後に大声で叫んで、レスターとカティアは思わずプルッと震えた。 そしてオーフィスターニャがまだ話を終わってないみたいで、彼女はひとまず深呼吸し、再びしゃべり始める。


「特に! ゼロだ。 彼女の拳銃(ピストル)は確かに強力な武器だけど、でも九発の弾を撃った後、新たな弾倉を替えなきゃいけない。 その一瞬は敵に攻撃される、たとえ上手く敵の攻撃を躱すことに成功しただとしても、敵の攻撃にやられる可能性はワタシたちより高いんだ、だからワ――」


「あっ、わたしどの道にも入りたくないので、ここでみんなを待ってる」


「――タシたち…………ハ?」


 ちょうどオーフィスターニャが説明を終わらせようとしたら、ゼロがいきなり左手をあげて、行きたくない宣言した。 それを聞いたオーフィスターニャが固まる。


「ゼ、ゼロさん? どうしてですか? 何か特別な事情でも……?」


 驚いてるレスターが聞く。


「手が痛いんだ……」


「うわっ!」


「これは……」


 ゼロは後ろに隠していた右手をみんなに見せる。 彼女の(てのひら)は赤く腫れていた、まるで定規(じょうぎ)に強く叩かれた後みたいにあと少しで手が血で赤く染められていた。


「さっきも言ったが、わたし……初めて拳銃(ピストル)を使うんだ。 だから、跳ね返す威力のことを忘れたのさ」


「では、なぜ最初の一発で言わなかったのですか? その手が腫れてるところを見ると、一発で手が無数の針に刺されるみたいに痛いのはずです」


 ミネルヴァは直ぐに風属性の治癒魔法を使って、痛まない程度でゼロの右手をゆっくり治している。 そしてその間、彼女はゼロを説教してた。


「じゃあ……こうしよう! ワタシともうふたりのエルフ、さんにん一緒にどちらの道に(さぐ)るっと言う作戦はどう思う? 戦力としてミネルヴァを選びたいが……彼女はゼロを手当しなきゃならないからダメだし、ゼロもケガしてるから……てことは……」


 オーフィスターニャは視線を残ったふたりに向く。


「カティア、レスター、ワタシと一緒に探検(たんけん)しない?」


 その質問を聞いたふたりは少し迷ったが……自信に満ちたオーフィスターニャの顔を見た途端、彼女たちは確信を得た。


「「はいっ!!」」


 力強くの答えを聞いたオーフィスターニャが笑う。


「じゃあ行こうか!」


「待ってオーフィスターニャさん! 私たちは一体どの方向へ行けばいいのですか?」


 オーフィスターニャがまだ一歩踏み出していないのに、レスターはさっそく問題を聞く。


「そうだった……んじゃあ試しに目の前の道に入ろ」


「そんな適当でいいの?!」


「いいんだ、どうせどの道を選んでも入る前に知らないから。 ほら、早く行こう」


「お、オーフィスターニャさん! 待ってぇ……! カティアさん、私たちも行きましょう!」


「あっ、はい……! ミネルヴァ、行ってきます!」


「お気を付けて、カティア様!」


 カティアがミネルヴァと別れた後、彼女はレスターと共にオーフィスターニャのそばまで追いつき、一緒に霧の中に入った。


 彼女たちがひたすら前を走って数秒間、オーフィスターニャは少し……疑問を感じる。


「(このまま走り続けていいのか……? さっきから(なん)なんだこの違和感? 何かが違う……)」


 オーフィスターニャは疑問に追い詰めてるようで、深刻な表情を晒していた。 それに気づくレスターは心配して、彼女に声をかける。


「オーフィスターニャさん? 大丈夫ですか?」


「えっ? あ、ああ……大丈夫だ……ただ考えことしただけ……」


 オーフィスターニャが苦笑いで誤魔化してる間、彼女たちは広い空間に辿りついた、しかし――、


「オーフィスターニャ様? 貴女たちはあちらの方向へ行ったのではないですか?」


 オーフィスターニャたちはミネルヴァたちの背後に現れ、ミネルヴァは驚いた表情で彼女たちを見詰める。


「なんだお前たち……一周を回ってここに戻ったのか?」


「ミネルヴァ?! ちょっと待て……ワタシたちは真っ直ぐに走っていたのはずだ……! でも今のワタシたちは最初に入った方向で元の場所に戻った……のか?」


 呆れたオーフィスターニャは自分でも状況を理解できなかった。

 彼女だけじゃなく、後ろのふたりも同じ反応だった。


「そう……みたいです……」


「えっと……ひょっとして……この森の中身は何らかの魔法で掛けられているの……?」


 カティアのたった一言でみんなの視線を集めた。 全員は戸惑った顔で彼女を見つめていた。 そして先に口を開けたのは――、


「いやいやいや……いくらなんでもそれは……ない、と思う……」


 慌てるオーフィスターニャだった。


「でもこれはしか説明がつかないです! 一旦、逆方向で戻りましょう」


「えっ? どうして逆方向なんですか?」


 レスターの言葉の意味を分からなかったカティアが聞く。


「試したいです、もし前を走って、この空間の入口に戻ったら……その逆ならどうなるか知りたいです。 もしかしたらこの迷路は進むだけじゃなくて、時に逆方向の道を取らなければならない場面があるかもしれない……」


「興味深い発想だな……ワタシはレスターの考えに賛成だ。 カティアはどうする? ここにいるミネルヴァたちと残る?」


 ふたりは肩を並んでカティアを見詰めて、彼女の返事を待っていた。


 カティアは少しだけ迷ってた……が、彼女は一歩前へ踏み出し、二歩でオーフィスターニャたちの前に立つ。


「私はチームAの役に立ちたいです! だから私も行きます!」


 自信に満ちたその答えを聞いたオーフィスターニャとレスターが笑う。


「じゃあ行こう!」


「うん!」


 カティアも満開の笑顔で笑った。 こうしてさんにんは来た方向に向かって走り出した……、そして再び残されたミネルヴァとゼロ。

 オーフィスターニャたちが霧に入って数秒後、ちょうどゼロの掌は完治(かんち)した。 彼女は右手を強く握って、大きく開いての繰り返しで手の痛みが残ってるのかを確かめていた。


 そしてもう大丈夫と判断したら、ミネルヴァは魔法で特製の手袋を創り出し、彼女に渡した。 その手袋、掌の部分は強い衝撃にも吸収出来る特製のゴムがある、とミネルヴァが渡すと同時に説明した。 するとゼロは歓喜(かんき)で強くミネルヴァを抱き締めた。 ミネルヴァもお役に立ったことに喜びを感じ、彼女は微笑んだ。


 話をオーフィスターニャたちの方に戻って……彼女たちが走って約一分後、霧が完全に消え去った……が――、


「えっ? ここは確か……」


「森の入口!?」


 オーフィスターニャたちが霧の十字迷路から抜けたらと思ったら、実は彼女たちは普通に十字路に入る前の場所に戻っただけだった。


「早く戻りましょーって道が消えた!」


「何ィ?!」


 レスターが後ろに向いたら、ついさっきまでいた道がまるで森と同化したみたいで消えた。 焦ったオーフィスターニャはレスターと一緒に道を探していた、すると、カティアが大声を叫ぶ。


「危ないっ!」


「えっ?」


 カティアは叫んだと同時にオーフィスターニャのところまで駆けつけて、何か素早い物を切り落とした。

 そしたらオーフィスターニャとレスターは一瞬に臨戦態勢を取る。 カティアがさっき切り落とした物を気になって、それを拾った。


「これは……根です!」


「まさかさっき倒したあの奇妙な植物たちが(よみがえ)ったのか?!」


「カティアさん、オーフィスターニャさん! 今は驚いてる場合ではないです! 敵が来ますッ!」


 すると、向こうの暗い闇から大勢の植物が一斉に仕掛けてきた。 そしてさっきと違い、今回の植物たちは暴走してるようで、傷つけあってもオーフィスターニャたちに近づいている。 まるで獲物を先に取った者が勝ちみたいで、野獣(やじゅう)の如く迫ってくる。

 まだ距離がある間、レスターがいきなりふたりの前に立つ。


「オーフィスターニャさん、ここは私ひとりに任せてもいいですか? ちょうど試したい物がありましてね……ダメでしょうか?」


 レスターの質問の内容が意外だったことでオーフィスターニャは思わず瞬き二つで困った表情を晒す。


「えっと……いいけど……敵の数は結構多いぞ? 大丈夫か?」


「大丈夫です! 私を信じてください!」


 レスターの普段と違う表情と声のボリュームは『自信』と言う言葉はオーフィスターニャたちとずっしりと感じ取った。 オーフィスターニャとカティアはお互いを見て確信した。 彼女たちは武器を下げる。


「分かった。 お前を信じよう……でも無茶だけはするなよ?」


「はいっ!」


 オーフィスターニャは笑いながら右拳を突き出す。 レスターは彼女に応えるように彼女も右拳を突き出し、オーフィスターニャの拳と軽くぶつかる。


「頑張ってください! 私達は後ろで応援しています!」


「ありがとうございます、カティアさん!」


 そして応援してるカティアは気合いを注入するみたいで、彼女はレスターの両手を強く握る。 レスターは嬉しくて笑った。


「では、行ってまいります!」


 彼女はその言葉を残し、いつもの優しい顔がシフトチェンジするみたいに、真剣な表情で暴走してる植物たちに向かって突っ走った。


 レスターが走る、全力疾走で走ってる。 そして彼女と植物たちの距離が数メートルまで縮んだら――、突如! レスターが姿勢を低くして、次の瞬間、彼女は膝で中央の敵をドミノのように次々と倒れていく。 彼女がまだ空中に浮いてる間、左右の植物たちは同時攻撃を仕掛けてきた――、が……レスターはまるで見通したのように、空中に一回転の蹴りで敵の攻撃を弾いた。 そして足が地面に着く刹那、レスターは右拳で左側の敵に強烈な一撃で粉砕(ふんさい)し、素早い動きの二段蹴りで右側の敵を真っ二つにした。


 前列の敵を片付いたら、続いて彼女はまず左側の敵を一直線で倒した。


 敵が上半身を狙ったら、レスターはしゃがむと同時にその植物の“顔面”に信じられない角度からの蹴りを入れる。

 敵が下半身を狙ったら、彼女は一回転して後ろにさげると同時に突進して重い一撃を喰らわせる。 そして敵を一撃で真っ二つした直後、レスターは死角を利用し、敵の下から思いっきり突き上げる。


 レスターの戦いっぷりはあまりにも凄すぎて、オーフィスターニャたちは言葉を失い、ただただ彼女が姿を見ていた。


 敵は次々と倒れていく。 そしてレスターの呼吸は一度も乱れたことがない。 自然に、滑らかな動きとギリギリまで力を溜めて、打つ時だけは溜め込んだ力を全力で打ち出す。

 彼女が敵のふところに突っ込んでまだ二分しか経ってないが、既に敵の数はひとりしか立っていない……レスターはゆっくりと近づき、姿勢を低くして構える。 右拳を内側に溜め込んで、左手のひらを反対側して右拳の上に置く……彼女の姿は抜刀(ばっとう)の構えに似ていた。


 レスターと敵の距離は僅か十メートル離れている。 風すら感じない森の中に不気味な空気が漂う、時間は静かに流れていく……まだ五秒しか経ってないのに、オーフィスターニャたちは五秒を長く感じていた。 敵はまるで本能的にレスターに怯えていた、でもそれを上回る狂気の本能が植物をためらいもなくレスターに向かって前進した。


 その時、レスターは唾を飲み込んで、迎撃する前に彼女は魔法を唱え始めた。


特殊(とくしゅ)魔法『消失(ヴァニーシュ)』」


「ん?」


 レスターが唱えた直後、オーフィスターニャはそれを聞いて何故か違和感を感じた。


 レスターは素早い突進で再びあっという間に敵のふところに潜り込み、直線的な一撃をぶち込んだ。 しかし、何が違ってた……そう、レスターは拳を振ったのに破壊の音がしなかった。


 するとレスターはぶち込んだ拳をそのまま突き上げた。 それと同時に敵は何故か綺麗に真っ二つになった。

 戦いが終わったと見たオーフィスターニャたちはレスターに近づき、彼女も振り返って彼女たちの元に戻ろうとしていた。


「お待たせしました。 オーフィスターニャさん、カティアさん」


 振り返ったレスターの表情はいつもの優しいレスターだった。 彼女の顔を見たら、カティアの中のどこかがほっとした。


「お疲れ様ですレスターさん。 すごかったです! レスターさんがこんなに格闘技が上手いだなんて知らなかったです!」


「あ、ありがとうカティアさん……私も驚きました。 ミネルヴァさんとのコンビネーション、本当に凄かったです。 私てっきりカティアさんはもっと」


 少し興奮してるカティアがレスターを褒めてる間、オーフィスターニャは別の疑問を抱き、そして彼女は直接ほんにんに確かめることにした。


「レスター、お前の格闘技はお前のお婆ちゃんから教わったと言ったよな? お前のお婆ちゃんって……何者だ? こんな凄い格闘技……見たことがない、きっと只者(ただもの)ではないな」


「えっ、あ……お婆ちゃんは昔、国家軍に所属していたんです。 そして引退後、私を立派な軍人になるために私はほぼ毎日修行の日々でした」


 真実を知ったオーフィスターニャはそれ以上なにも言えなかった。 しかし彼女の心にあった最後の疑問はオーフィスターニャを突き動かし、レスターに新たな質問を聞く。


「なぁ……さっきお前が唱えた魔法、あれはなんだ……? 見たことがない魔法だ」


 あまりにもストレートな質問でレスターは思わずビクッと震えた。 彼女がもじもじと言いづらいそうな顔で周辺を見ているその時、カティアは視線をレスターの後ろへ見たら、地面に何かを発見したみたいでオーフィスターニャの腕を引っ張る。


「オーフィスターニャさん! あれはなんですか?」


「え? なになに?」


 オーフィスターニャはキョロキョロとカティアが指で指してる何かを探す。 レスターも気になって頭を振り返ったら、彼女はオーフィスターニャより先に見つけた。


「あそこに転がってるのは……木片(もくへん)?」


「ハァ? 木片? さっき倒した植物たちの一部(いちぶ)?」


「いや……私が倒した植物たちは既に跡形も無く消えたんです」


 レスターはオーフィスターニャの考えを否定しながら周辺に似たような木片が転がってるのかを探したが……雑草しかなかった。


「ん……これしかないみたいです」


 レスターは木片を拾った。 大きさは彼女の掌とほぼ同じ、黴が付いてて、古く感じる。


「これは一体何なんだ? クロゼットの部分……には見えない、でもこの辺り……ほら、まるで意図的に壊されたみたいに折れてる」


 オーフィスターニャはレスターが拾った木片を貰い、色んな角度から見てる間、彼女は気になるところを見つけ出し、それを順番に説明した。


「本当です……こことか、明らかに壊されてます。 でもこれは一体どんな物体(ぶったい)の一部なんですか?」


 レスターがオーフィスターニャが持ってる木片の壊れた部分を見ると、真っ先にこの木片が本来どこの何かと繋がりがあるのかを考える。


「んん……どうだろう、ワタシも知らないんだ」


 そしたら、カティアはオーフィスターニャが持ってる木片を触る。


 すると――、


唯一(ソロ)魔法(マジック)修繕(リペア)』」


 有無を言わず魔法をかけた。


「か、カティア?! って……うおぉ! なんだこれは!?」


 オーフィスターニャが持ってる木片がいきなり浮かんできて、彼女たちの逆方向に、つまり、ミネルヴァたちがいる方向へ飛んだ。


「オーフィスターニャさん! レスターさん! 早く追い掛けしましょう!」


 木片が飛び出した直後、カティアは真っ先に追い掛けた。


「あっ、おい! 何なんだあいつ……?」


「分かりませんが……カティアさんを追い掛けましょう!」


「そうだな」


 そしてオーフィスターニャたちも走り出して、霧の中に潜り込んだ。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 カティアの唯一(ソロ)魔法(マジック)の効果で木片は本来いるべき場所へ戻ろうとしていた頃、ミネルヴァとゼロは十字路の迷路に別の道を探していた。


「ミネっち、何か見つけた?」


 ゼロは東北の辺りで探しながら聞く。


「いいえ……あ、いえ……見つけました」


「本当?! どこどこ?」


「ここです」


 ミネルヴァは十字路のど真ん中で上を指していた。 そしてゼロが彼女のそばまで近づいたら、彼女も見たんだ。


 十字路の中心、その頭上は完全に霧で覆われていた。 しかし目をよーく凝らすと、何かが見える。


「あれは……?」


 ゼロがもう少しで見えてきたところ、突如! ミネルヴァたちの背後から何かが現れ出し、そのまま彼女たちの頭上へ飛んだ。


「うわっ! びっくりした……なんだったんだ今のあれ?」


「すみません、私もよく見えなかったです」


 彼女たちが戸惑ってる時、後ろからが聞こえてきた。


「おーい! ミネルヴァ~! ゼロさん!」


「カティア様? どうなさいましたか?」


「今、何か飛んで来てない!?」


 カティアは必死に走りながらミネルヴァたちに近づく。 そして彼女のすぐあとにオーフィスターニャとレスターがいた。

 ミネルヴァは瞬き二つで答える。


「はい、この上へ飛びました」


「なにぃ?」


 ミネルヴァの答えを聞いた途端、カティアは思わず足を止めた……後ろにいたふたりも一瞬早く足を止めて、あと数センチでカティアの背中と直撃する前に留まった。


「カティア! いきなり足を止めるなっ! 危うくお前とぶつかるところだった!」


「あっ、ごめんなさい……! ミネルヴァの答えはあまりにも予想外だったのでびっくりしましたのです」


 少し緊張してるカティアは慌てて訳をオーフィスターニャに説明した。


「カティアさん、オーフィスターニャさん! あなた達は本題からだんだん離れきますよ? それで……ミネルヴァさんはなんて言ったのですか?」


「そうだった! さっきの木片、どこへ飛んだ?」


 これ以上時間の無駄と判断したレスターは一言で本題に戻った。

 そしてオーフィスターニャの質問に答えるミネルヴァは無言で上へ指す。 当然の反応として、オーフィスターニャは理解できない顔で頭を傾く。


「誰か上にある物を取ってくれない? なんか木製っぽい物があるみたい」


 そしたらゼロは頭上の霧に何かがあると言いながら目を凝らしていた。


「オーフィスターニャさんの唯一(ソロ)魔法(マジック)が適切と思います」


「私もそう思う!」


「なっ?!」


 いきなりレスターがオーフィスターニャを推薦し、当のほんにんが驚く。


「わたしも賛成で〜す」


「確かにオーフィスターニャ様の唯一(ソロ)魔法(マジック)なら容易く届くそうです。 私もレスター様の考えに賛成します」


 ゼロはニコニコと笑いながら手をあげた。 そしてミネルヴァは手を顔の近くまであげて、彼女もレスターのアイデアに賛成した。


「ちょっと待ったお前ら! なに勝手に話を進んでいるんだ!? ワタシの意見は?!」


 さすがにオーフィスターニャを無視し、勝手に彼女を選んだことに怒っていた。


「これはチームによる正式な多数決の結果です、オーフィスターニャ様。 チームリーダーを選ぶ時も多数決で決まりました」


 しかしミネルヴァは見事に論破(ろんぱ)した。


「ぐぬぬ……ハァ……分かった、やるよ」


 最初に悔しそうな顔を晒すオーフィスターニャが三秒後にため息をついて納得した。


「オーフィスターニャさん、頑張ってください!」


「きっと大丈夫です!」


「ご心配なさらず、私たちはオーフィスターニャの下で援護します」


 レスター、カティア、ミネルヴァという順番でオーフィスターニャを励んで、最後にゼロは拳銃(ピストル)を持ち出し、大丈夫とグッドサインでオーフィスターニャに見せる。

 しかし当のほんにんはますます不安になっていく。 彼女はこれから、頭上にある濃厚な霧にを探りようとしする。 そう思うと彼女はさらに汗をかく。


 オーフィスターニャはまず深呼吸した、次に彼女は頭をあげて、ゼロが言った木製っぽい物を探す。


「(あった……ど真ん中にいる)」


 見つけた後、オーフィスターニャは四歩後ろにさげる。 そして階段を登る姿勢で足を少しあげた。


「すー……はー……唯一(ソロ)魔法(マジック)・跳躍『神聖鼓動(セイクリッドビート)』」


 オーフィスターニャは魔方陣を踏む。 ゆっくりと登って、七歩で手が霧に(はい)れる高さに辿りついた。


「どうですか、オーフィスターニャさん! 見えますか?」


 下にいるレスターが様子を聞く。


「ああ、見える見える。 今から引っ張るので、おいみんな、少し後ろへさがれ!」


 するとミネルヴァたちは三歩さがる。


 そしてオーフィスターニャがそれを掴んだ時、彼女だけが分かった。


「(この感じ……やはり木製だ)よし……っん! あ、あれ? ふぅーーん!」


 オーフィスターニャが引っ張ろうとしたら、何か様子がおかしいと見たミネルヴァは聞く。


「オーフィスターニャ様? どうかなさいましたか?」


「これ……ピクリともしないっ! ふぅーーん! ダメだ……」


 オーフィスターニャは色んなポーズで引張ていたが……効果はなかった。


「オーフィスターニャさん! 引っ張るのが駄目ならおし――」


 カティアがまだ話してる途中に、オーフィスターニャがいきなり――、


「ドラァ」


 木製の物に一蹴りを入れた。


「――てください……」


「ん? カティア、さっき何か言ったか?」


「いえいえ、なんでもないです!」


 カティアの話を聞き取れなかったオーフィスターニャが聞こうとしたらカティアは苦笑いしながら頭を横へ振る。


 そしてオーフィスターニャが蹴って数秒後、奇妙な音が聞こえる……からくりの音。

 嫌な予感を感じたオーフィスターニャが下にいるみんなと合流した。


 すると――、


「あれは……階段?」


 霧の中から階段が悠然と降りてきた。


「これを登れと言うの?」


「そう……みたいです」


 信じられない顔をしてるゼロと他の方法を思いつかないレスターが頷く。


 階段はまるで新しく造り上げたみたいで、壊れてるところはどこにも見当たらない。


「この感じ……私の魔法で直したと違いがありません。 つまりレスターさんが見つけた木片はこの階段の一部だったですね」


「それってつまり……この上にカルメンがいるってこと?」


 オーフィスターニャは霧を見詰めながら聞く。


「そうしか思えないです……今はこの階段を登るしかないです。 そう言えば、最初は誰が登るのですか?」


 そう言ったカティアはみんなを沈黙させた。

 彼女たちはまたしても未知なる領域に探るしか方法がなかった。 そして最初に階段を登るエルフは――、


「オーフィスターニャ様」


「オーフィスターニャさん」


「オーフィス」


「オーフィスターニャさん」


 全員はほぼ同時にオーフィスターニャの名前を言った。


「…………やっぱりワタシかぁ……」


 結果が既に見えていたオーフィスターニャは(いさぎよ)く納得し、階段を登り始めた。


「気を付けてください!」


「おお! って誰も付いてこないのか?!」


 彼女が振り返ったらミネルヴァたちはまだ地上に立っていた。 誰ひとりも動いていない、全員ただオーフィスターニャが登る姿を見ていただけだった。


「もういい! ワタシひとりで登ってやる!」


 少しすねたオーフィスターニャは階段を二階ずつ登って、あっという間に霧の中に紛れ込んだ。 そして静寂な十秒間、オーフィスターニャはまだなにも合図を出していない。


「オーフィスターニャさん……遅いですね……」


 心配になってきたレスターが階段に近づいて、上を見詰める。


「確かに遅いですね……私、見に行きます!」


 じっといられなかったカティアは階段を登り始めた。


「お待ちください! カティア様!」


 そしてミネルヴァはカティアのあとを追った。 残されたレスターとゼロは呆れた顔で見つめあって、思わず笑った。


「ゼロさん、私たちも行きましょう」


「そうだな」


 彼女たちはこうして笑いながら階段を登り、そのまま霧に入った。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 先頭に約十五秒で階段を登っていたオーフィスターニャはようやく霧から抜け出したら、別の空間に辿りついた。


「ここは……?」


 周りの風景はさっきの森と違い、日差しが地面に届いてる。 風もちゃんと吹いている。 そして何より、霧は完全に消えていた。


「すげぇ……まさかこんなところがあるだなんて……ん? あれは?」


 オーフィスターニャが周辺の風景に見蕩れていた時、彼女は目を凝らし、何十数メートル先には何か奇妙な物を見つけた。

 彼女がまだ見詰めている間、後ろからカティアとミネルヴァが現れた。


「やっと着いた……」


「カティア様、大丈夫ですか?」


 現れたカティアは何故か疲れていたみたいで、そのまま地面に座った。 ミネルヴァは依然として汗の一滴すらかいていない。


「カティア、ミネルヴァ! 周りを見ろっ!」


 オーフィスターニャはまるで子供みたいに笑って、カティアたちを呼びながら両腕を大きく開ける。


「はい? これは!」


「美しいです……」


 彼女たちはさっきのオーフィスターニャと同じ表情で風景を見詰めていた。

 次に、レスターとゼロも無事にオーフィスターニャたちと合流し、ふたりは真っ先に風景の美しさに視線を奪われてしまった。


 しかし、ある音によって彼女たちを天国から引き戻された……子供の笑い声だった……。

 その楽しそうで不気味な笑い声は彼女たちの前方に聞こえてくる。


「今のはもしかして……カルメンさん……?」


 少し怖がってるカティアがミネルヴァの後ろに隠れる。


「分からないが……確かめるしかないみたいだ。 みんな、臨戦態勢に切り替えろ! なんか嫌な予感がする……」


 オーフィスターニャたちは警戒して、その声を追うことに決めた。


 彼女たちがいる場所の広さは約三メートルの一本の道。 後ろはさっき来た方向で霧に覆われている。 そして前方はある広い空間に繋がってる、と推測したオーフィスターニャ。


 オーフィスターニャたちは武器を持ち出し、警戒しながら前進する。 彼女たちは広い空間に着いた後も何も起きなかった。 しかし……彼女たちが広い空間に着いたら、空間の真ん中に巨大なしゃがんでる木像がいた。


「こんなところに木像……?」


 疑ってるオーフィスターニャは先に走り出して、木像に近づこうとしたら、その数メートル後ろに子供の姿が眩い光に消えて、無数の(いばら)が左右の木から現れそのまま道を塞いだ。


「ちょっ! 待ってカルメン!! っ! 危なっ!」


 それに気付いたオーフィスターニャが子供を追ったら……いきなり木像が彼女を襲いかかって、右拳を突き上げた。


「オーフィスターニャさん?! 大丈夫ですか!?」


 オーフィスターニャがいきなり襲われたことに気づいた全員が走り出し、次々と空間に入ってる時、ちょうどカティアが入口を抜けようとしたら……突如! 彼女の真上から鉄の扉が降りてきた。


「カティア様危ない!」


「えっ? ひゃっ!」


 そして扉がカティアを襲った瞬間、彼女の後ろにいたミネルヴァが素早い動きでカティアの腰を掴まって前へ飛んだ……ふたりは無事に空間の中へ入ることに成功した。


「お怪我はありませんか?」


「大丈夫ですミネルヴァ……」


 ミネルヴァは慌ててカティアを胸元に強く抱き締めていた……そして僅かにカティアの顔が満喫しているところを目撃したレスターであった。


「おいみんな! これは相当やばいんだ! 全員気を付けろっ! 木像が立とうとしている!」


 オーフィスターニャがみんなを注意しながらさがっていた。 そして彼女たちの前にある木像が徐々に起き上がっていく、まるで彼女たちと同様、手足がある。 木像はゆっくりと起き上がって、完全に立った時、更に驚くオーフィスターニャたちであった。


「なんだ……? これは……」


 身長は約三メートル以上がある、顔がない。 腕はまるで大きな岩を軽々しく破壊そうな太さ。

 そして顔がない分、より一層不気味を感じたオーフィスターニャたち。


「この状況はつまり、ここでこいつを倒さないと前へ進めないってそう思っていいよな?」


「たぶん……そうです」


 レスターは手袋を調整しながら答える。


「ならば簡単だ。 相手はひとり、ワタシたちはごにん! 上手くコンボを合わせればどんなでかぶつでも倒せる!」


 自信満々のオーフィスターニャが勝利を確信したみたいで笑った。


「ミネっち、弾倉十個くれ」


「分かりました…………はい、お待たせしました」


「ありがとうミネっち! よーし、わたしは準備万端だ!」


 新たな弾倉を拳銃(ピストル)に装弾して、それを木像に向けた。

 ミネルヴァも準備し、さっきと同じ武器を創り出した……両刃(もろは)の斧。


「全力で頑張ります! ミネルヴァ、サポートをお願い致します!」


「お任せてください! 私は命を代えてもカティア様をお守り致します!」


 カティアとミネルヴァは息ピッタリで構える。


「よしみんな! こいつは恐らくこの森の守護者みたいな存在かもしれない。 しかしワタシたちの依頼はカルメンの行方を探し出すと彼女の安全確認! 彼女を無事に依頼者のところまで連れ戻す! 失敗は許さない! そう……決して許されないことだ!」


 オーフィスターニャは迫力満点の言葉でみんなの心を響いた。


「オーフィスターニャさん……そうです! ここは全力で頑張りま――」


「特に!」


 レスターが励んで何か言おうとしたら、オーフィスターニャがまだ話の途中だったみたいで喋り始めた。


「特に! もし依頼が失敗したら、母さんはワタシたちに一週間のトイレ掃除を罰するはず! それだけは嫌だッ!!」


 そして……空気が止まった……。


「そうじゃないだろーーーっ!!?」


 次の瞬間、ゼロがツッコンだ。


 まだ敵と交戦してないのに、オーフィスターニャを除いて、全員が急にやる気を無くしてしまった。

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