第二章14:鍛冶屋に届け物 ④
各町に存在してる《Biblioteca》と名の付く建物はすべて、一つの場所に行くための転移装置。 そして転移される場所は、ファーブラの都、ロッサ・グラナーテに存在する大きな大樹の中。 そこには、図書館がある。
大樹の高さは世界一、百五十メートル。 元々一番高い木はユグドラシルだった、しかし枯れた後、この大樹が世界一となった。
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アルトリアたちがようやく手がかりを見つけたと思ったら、彼女たちが探してる『モスカ将軍の街』はどこにもいなかった。 彼女たちは呆れて、何度も地図を見返したが、それでもダメだった。
彼女たちは最初に思ったのは地図によるミス、つまり、図書館の者が書き忘れたっと思い込んだ。 しかしそうでもなかった。 彼女たちはカウンターにいる淡いピンク色の髪のエルフに聞いたら、彼女は地図が書き忘れてるところがない。 そしてエレオノーラは街の名前を教えたら、カウンターのエルフは知らないと言った。
がっかりしたエレオノーラたちはショボンして、来た方向に図書館から一気に本来の町に戻った。
全員は日差しに当たらない、教会の西側の影に休んでるに見え、本当は心がここにあらずって感じでボーっとしていた。
それから何分、何十分後、ついに耐えられなかったエレオノーラは叫ぶ。
「ああぁぁぁもう!! どうして地図にはあの街がいないんだッ!?」
「気持ちが分かるけど、今は状況と情報を整理しよ……」
ため息をつくアルトリアはポケットから生徒手帳を持ち出す。 フィーリアはちょうど彼女のとなりにいて、チラリと生徒手帳を覗く。
「(凄っ!)」
彼女が見たのは色んな落書きと文字だった、その中にはさっき図書館で見た地図の簡単な絵もいた。
「じゃあまず、私たちが図書館で――」
「そんなことより、アルトリアぁ……お腹すいた~」
その時、ゼノは彼女の制服を引っ張りながら自分のお腹を抑えていた。
「あぁ? 今は何時だ?」
「えっと……今は……」
時間を確認しようと、エレオノーラは教会を見上げて、時計を見ようとしたら――、教会の鐘が鳴った。
「ちょうど……一時だ」
「もうそんな時間かぁ……そうだな、一休みしよう。 賛成する者は手をあげろ」
全員は重い腕をゆっくりあげる。
「うん、全員賛成か。 じゃあみんなをおごる者は手をそのままあげろ」
そしたら全員が瞬時に手をさげた。 アルトリア自身も含めて。
「ですよね~。 じゃあみんなでわけて払うのはどう?」
そう言ったアルトリアの後、全員は一斉に賛成する。
「よし、そうと決まれば……レストランに行こう」
「パエリアが食べたい!」
アルトリアがまだ一歩を歩んでないうち、フィーリアは急に大声で自分が食べたい食べ物を言い出した。
「パエリアかぁ……いいかも……」
アルトリアは少し迷ったに見え、でもすぐに答えを出す。
「じゃあパエリアを食べに行こう!」
「「おぉぉ!!」」
みんなは腕を高く突き上げて、大声で叫んだ。 そしたら、彼女たちは再び、商店街へ戻ることにした。
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アルトリアたちが選んだ場所は普通の飯屋、テーブルと椅子の数はそう多くない、せいぜい二十名の客は限界の小さなレストラン。 彼女たちは奥の、約八名が使用する唯一の円卓を独占していた。
ちょうどその時、彼女たちが注文したパエリアがやってきた。 二つの六十センチの鍋をそのままテーブルに置いて、おまけにひと皿のパンとレモンも置いといた。 米は黄金のように輝いている。 適切な火加減で出来上がってる海鮮の食材が漂う美味しい匂いはアルトリアたちの鼻に吸い込まれ、彼女たちは思わず口からよだれを垂らす。
アルトリアはまずパンとレモンの皿を持って、ひとりひとりにわけて、みんなはじーっとパエリアを見つめる。
そしたら、フィーリアは最初に我慢できず、先に鍋にあった大きな木製のすポーンを握り、自分の皿を溢れる寸前まで盛り上げていた。 続いてエレオノーラはもう一つの鍋のすポーンを握って、自分をフィーリアと同じくらい大盛りした。 そしてふたりは手元のレモンを皿の上に持ち上げて、それを握り潰し、そこから出るレモン汁をパエリアにぶっかける。
他のみんなも似たようなことして、少し酸っぱいけど味が染み渡るパエリアを満喫していた。
そのまま一時間後――、
デザートのプリンも満喫した後、アルトリアたちは少々食いすぎたみたいで、彼女たちはお腹が消化する間、情報交換した。 しかしどれも不確定で曖昧な内容ばかりだった。
そして更に三十分が経過して、彼女たちはようやく椅子から起き上がって、一斉にカウンターでそれぞれ五分の一の金を払い、商店街に出た。 出た途端、熱風が一気に吹き上げ、アルトリアたちはあっという間に汗まみれになってしまった。
「この時間で外に出るのは辛すぎる……」
額の汗を腕で拭くエレオノーラは文句を言う。
「確かにそうかもしれないけど……グズグズしてるよ時間がなくなり、依頼をクリアー出来なくなる。 とりあえず、どこか水分を摂る場所を先に…………」
アルトリアがいきなり黙り込んで、彼女の目はあるところを見つめている。
「アルトリア……? 何を見てる……あぁー、なるほど……」
ゼノはまだ重い籠を持ち歩いて、アルトリアが見つめてるところを見たら、彼女も納得した。
アルトリアの視線を捉えた場所の正体は――、少し古くに見えるかき氷屋、だった。 風鈴が飾って、風に揺れる度に居心地のいい音が鳴らす。
かき氷屋に少し年上のお姉さんに見える、ダークグリーン色の髪のエルフが座ってる。 青のティーシャツとオレンジ色のショートパンツを着て、裸足のまま、低い椅子に座っている。 彼女の格好が店長にしてはあまりにも適当すぎて、とても真面なエルフに見えない。
アルトリアはお構い無く、堂々と彼女に近付き、かき氷一つを頼む。
「味は何にする?」
「いちご味!」
即答するアルトリアであった。
そしたら店長は左側の冷蔵庫の蓋を開け、赤色の汁をかき氷にぶっかける。
「Ten cuidado cuando lo cojas, que el vaso está muy fría. Son cinco bronces.(取る時気を付けてね、コップが凄く冷たいから。 五銅だ)」
店長はコップをアルトリアに渡し、アルトリアは手をポケットに入れ、そこから五枚の銅製コインを店長にあげて、みんなと合流する。
「お待たせー! うっ! うぅーん! 冷たっ! でも美味しい!」
子供のように笑うアルトリアの笑顔は無邪気で暖かい。 みんなは思わず彼女のペースに巻き込まれ、結局……みんなもかき氷を買ってしまった。
エレオノーラとフィーリアはレモン味、アルファーニはブルーベリー味、そしてゼノはりんご味。
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ファーブラが硬貨を使用始めたのは今から七千年前、荒獸族との永久の盟約を結び、その証として、荒獸族はファーブラ専用硬貨を創った。
銅、表側は初代女王の横顔。 そして裏側は初代女王が付けていた三つのアクセサリーの一つ、紅玉の指輪を刻まれている。
銀、表側は同じ。 裏側は緑玉の腕輪。 二十枚の銅は一枚の銀と同じ価値になる。
金、同じく表側は初代女王の横顔、そして裏側は青玉の王冠。 一枚の金に変えるには五十枚の銀が必要となる。 それだけに、金は貴重である。
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みんなが思う存分かき氷を味わってる間、ゼノはふと何かを思い出し、かき氷屋の店長に近づく。
「あの……聞きたいことがあるのですが……」
「ん? なんだ、聞きたいことって」
そしたらゼノは籠を地面に置き、左胸ポケットから生徒手帳を持ち出し、彼女がそこに書いてる依頼の唯一の手がかりである、あの街の名前を店長に見せる。
「この街がどこにいるのか、知りませんか?」
「やめとけゼノ、情報収集とは言え、その店長が知ると限らないんだ」
「ああ、懐かしいなぁこの名前……」
エレオノーラがゼノを止めようとしたら、店長は先に答えた。
すると――、
「ハニャ?」
「ほ、本当ですか?!」
予想外の返答を聞いたゼノとエレオノーラが固まる。 その時、アルトリアたちは少し離れたところでかき氷を食べていた。
「この街がどうしたんだ?」
「あ、はい! 私たちは依頼を受けていて、今日中にこの籠に入ってる金属を鍛冶屋に届けなくちゃいけないです。 その街がどこにいるのか、教えてくれませんか?」
少し事情を説明したゼノは最後に頭を下げて、店長にお願いした。 その間、エレオノーラはアルトリアたちを近づいて来いと、手招きで呼んでいた。
「いいぜ、でもあんま期待するなよ。 なんにせ、昔の話だから、正確な位置が忘れたけど……大体なところは覚えてる、それでもいいか?」
苦笑いする店長は少し不安に見えた。
「大丈夫です! 店長さんがこの街に覚えてること、全部! 教えてください!」
「おお……分かった……」
「何の話だ?」
その時、エレオノーラに呼ばれたアルトリアたちはゼノのところまで近付いた。
「アルトリア……! この店長さん、『モスカ将軍の街』がどこにいるのか、知ってるみたい!」
「なに?!」
「それ、本当か!?」
「うん!」
驚いてるアルトリアとアルファーニは真剣な顔で店長を見詰める。
大勢に見られてる店長は少しびっくりしたけど、彼女はすぐに深呼吸して、語り始めた。
「全員揃ってるね、んじゃあまず……あの街のことについて話そう。 今お前たちが言った名前は旧名だ、つまり、昔の名前。 今はあの街の新たな名前は確か……すぅ……んん……そうだ……思い出した! 『Calle del olvido』!」
新たな名前をアルトリアたちに教えた直後、アルトリアは既に生徒手帳を握っていた、そして彼女は速やかに街の名前をメモする。
「『忘却の街(Calle del olvido)』? Oblivion ?」
さっそくエレオノーラは街の名前に疑問を持った。 それは、他のみんなも同様だった……「どうして街の名前が変えたのか?」って頭の中が必死に考えていたけど、決定的な理由が見付からなかった。 すると、アルトリアはみんなが一番知りたいことを店長に問う。
「その街……『忘却の街』がどこにいるのか、教えてくれますか……?」
その言葉を口にした直後、アルトリアは耐えられずごくりとつばを呑み込んだ。 アルファーニたちも緊張して、張り詰めた空気に店長の答えを待っていた。
そのまま一分後――、
アルトリアたちはその一分を長く感じていた、その時、店長は口を開く。
「わたしの記憶が正しければ……この町の東南にいる、あそこは鍛冶屋が多いからね……煙の多いところは『忘却の街』だ」
待ち望んでいた答えを聞いたアルトリアたちは喜びで跳ねる。
「「よっしゃー!!!」」
彼女たちがあまりにも嬉しく抱き合っていたことに少し驚いた店長は何故か微笑んだ。
「店長さん! 本当にありがとうございます! 私たちはこれで失礼します!」
「お、おお……」
ゼノは強く店長の手を握って、彼女に礼を言った後、みんなと一緒に南東の方へ向かって走り出した。 その時、アルトリアは振り返って大声で店長に話す。
「店長~!! かき氷ぃ! 美味かったぞぉー!! いつかまたかき氷を食べに行くからなーっ!」
店長はアルトリアの言葉を聞いた後、彼女はなにも言わず手を振る。
すると、店長は呟く。
「あぁ……もしその日が来たらな……」
アルトリアたちの背中が見えないまで見届ける店長は最後まで微笑んでいた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
東南に向かったチームBは約二十分、歩いてる間、あることに気付く……それは――、古い建物が徐々に増えていく。
ファーブラの大半の町は大昔から南東から建物を建てられていた。 そして時間の流れで徐々に北西へ広がっていく。 つまり、南東に向かえば向かうほど古い建物が多く見られる。 どれもが一階しかない建物、或いは抜け殻の廃墟。 生命の気配も微弱。
アルトリアたちは歩き難い道を歩いて、ほぼダレもいない街に、道端にある砂まみれの看板が地面に落ちていた。 それに気付くアルトリアたちは近づいて、エレオノーラはしゃがんで砂を払って、そこに書いてる文字を読む。
「えっと……『¡ Bienvenido a la Calle del olvido !(忘却の街へようこそ!)』情熱な内容の看板なのに、なんか虚しいッ! 忘却って……これはまるでこの街が忘れられたみたいじゃない……」
「わかってるじゃねえか」
エレオノーラが看板の内容をツッコンだら、突如、誰かが喋った。 全員は同時に驚いて、警戒する。
そして彼女たちが視線を声が発する方向、つまり、前を向いたら……そこには軽量型の銀色の鎧をまとって、背中には僅かながら見える大きな斧を背負ってる黒髪の荒獸族がいた。 黒いうさぎ耳、右の頬に傷跡、身長はこの場にいる誰よりも高い、約百八十センチ以上があるこのうさぎの荒獸族はニヤリと笑った。
「お前は?」
ふと、エレオノーラが前触れもなく聞く。
「あたしはアルバ(Alba)! この辺りに警備、みたいなことをしてる」
アルバが笑う顔で自分の拳で強く胸に当たる。
その瞬間、彼女の名前を知ったアルトリアたちは真っ直ぐに思い付いたことは――、
「(彼女はきっと依頼に書かれていた名前と同一人物だ!)」
彼女の名前は依頼に書いてるの名前と一致してる。 そしたらアルトリアたちは黙ったままアルバを見詰める。
「な、なんだお前ら……? じーっとこっちを見て……つーかお前ら、学園の生徒だろ? なんでこんなどころに来たんだ? 観光? つってもここはほぼ誰も住んでないところだし……うぅん……」
アルトリアたちがここに来た理由を知らないアルバは自ら推測し、まだ十秒しか経ってないのに、彼女の耳から既に煙が出てきた。
その時、ゼノはみんなより先に一歩を踏み出し、アルバに確かめる。
「アルバさん! 私たちはある依頼を受けて、この籠に入ってる金属を届けに来たのです。 このメモにはアルバと言う名の荒獸族に渡すと書いてますが……」
「どれどれ……」
アルバはゼノが籠から持ち出したメモを取り、自分の目で読んだら――、
「ああぁ~これ、母ちゃんの文字だ。 なるほどなるほど……つまりこれは……あの籠は婆ちゃんの届け物、そしてお前らそれを届けに来ただけ……おぉなるほど!」
納得した顔のアルバはポンと右拳を左手の上に軽く叩いた。
アルバの確認を聞いたアルトリアたちは喜びすぎて、全員は同時にハイタッチした。
その後、アルトリアたちはアルバについて、目的地である鍛冶屋に着いた。 錆臭い空間、暑苦しい空気、金属のぶつかる音、彼女たちは臭いを手を振りながら中へ入った。 その時、ゼノは既に籠をアルバに渡した。
中へ進む度に、色んなモノが見える。 剣、槍、斧、短刀、弓と矢、鎖、鉄槌、鎌槍、軽量型鎧、重量型鎧、盾、等々……大半の武器がそこに揃っていた。 そして更に奥へ進むと、金属と金属のぶつかる音が増していく。
「婆ちゃん、依頼した金属が届いたぞー」
アルバが呼んだのは淡い金髪の汗まみれで凄い筋肉を誇ってるエルフだった。 まだ自分より少し年上のお姉さんなのに、なんか違うすぎると思ったアルトリアたちは黙ったまま、その筋肉に集中していた。
「おお、ようやく届いたかぁ。 ん? なんだこの子わっぱども」
不機嫌そうな口調でアルバの婆ちゃんがアルトリアたちを睨む。
「(怖っ! 目付きめっちゃ怖っ!)」
そう思って、エレオノーラは一番前からフィーリアの後ろまで引っ込んだ。
「婆ちゃん、こいつらは金属を届けてくれた連中だ。 すまん、お前ら……婆ちゃんはあんま知らないやつと話したくないんだ」
アルトリアたちとアルバの婆ちゃんの間にある誤解を解けようとしたアルバは改めて彼女の婆ちゃんに説明した。
「ほぉ……なるほどねぇ、さっき悪かったなっ! あ、まだ自己紹介はまだだったな。 わたしはこの子の祖母、ディースファー(Dissfa)、よろしくっ!」
悪気のない豪快に笑うディースファーとそれに気付いたことで緊張感から解放されたアルトリアたち。
「それにしても……よくここに辿りついたな!」
ディースファーの感心して、顔の汗をタオルで拭いいていた。
「それって、街の名前のこと、ですか?」
意外な発言を聞いたエレオノーラが先に聞く。
「あぁ……お前たちは知ってると思うが、南東から北西へ建物は徐々に新しくに見えるだろう? 実はこの国、『ロッサ・グラナーテ』は大昔に、各町と街は別の名前があった。 通称「旧名」だ、今から二千年前が急に女王様は改名を宣言し、全国の大半の町の名前が変えてしまったんだ」
ディースファーが説明を一旦終わったみたいに、その直後、アルトリアは好奇心で聞く。
「二千年前って……ディースファーさんは今年で幾つですか?」
その質問が他のみんなに聞いた途端、彼女たちは一斉に気になっていた。 ディースファーは見た目はまだ若くに見える、しかし彼女は既に孫娘がいる、その好奇心はチームB全員に移ってしまったみたいに、彼女たちの思考が考えるのをやめられなかった。
まだ五秒しか経ってない内に、ディースファーはアルトリアの質問に答える。
「今年で三千八百九十三歳だ」
「なっ!」
ディースファーの年齢を知った途端、エレオノーラは一瞬だけ驚いたが、直ぐに納得した。
「アルバさんは幾つですか?」
続いて、ゼノはアルバに年齢のことを聞く。
「あたし? 三十だ」
「ですよねー、荒獸族の平均寿命は四百から五百までだしね……」
「だろー?」
アルバが自分の年齢をアルトリアたちに教えたら、ゼノではなく、エレオノーラが先にアルバとの会話を成立した。
そして、アルバとエレオノーラが気が合いそうと思って、ふたりが楽しく喋ってる間、アルトリアは新たな質問する。
「ところで……ここはディースファーさんとアルバさんだけですか?」
「いいや、わたしの妻もいる。 でも彼女はまだ森の奥に薪割りをしてると思う」
と、ディースファーが頭を横へ振る。
「奥さんがひとりで森の中、心配しないのですか?」
「いやいやいや、あいつはわたしより六百歳年上だ。 心配する必要なんてないんだ」
ディースファーそう言いつつ、高笑いする。
「なるほど……てことは、ディースファーさんの奥さんも精霊族。 んじゃ、アルバさんのご両親は?」
徐々に分かってきたアルトリアが好奇心を抑えできず、次の質問を聞く。
「ああ、わたしの娘は荒獸族と結婚したんだ。 今はこの街の北西にいる。 この孫娘はわたしに会いたいと、ほぼ毎日ここにくるんだ。 或いはこのまま一晩ここに過ごすんだ……可愛い孫娘だろう?」
ディースファーは強くアルバを抱きしめ、幸せそうな顔をしていた。
「く、苦しい……婆ちゃん……あと、汗臭い……!」
ディースファーの豪腕に抱きしめて息が出来ず、真っ青な顔になっていくアルバが危うく気絶そうな寸前で彼女は腕をおろした。
その時、まだ戯れあってる間、フィーリアは壁に飾っていた奇妙な鉄の時計を見て、その針が指してる時間を見詰める。
「六時……ん? 六時?!」
改めて驚くフィーリアが大声で叫んだ。 そしてその叫びに驚いた他のメンバーが慌て始める。
「ど、どうした!?」
「報告だっ! 私たちはまだ職員室に報告する必要があったんだ!」
フィーリアの一言でエレオノーラたちを凍らせた。
「そうだ…! イファスティ先生は私たちが依頼を達成したら時、職員室に報告すると言われた! みんな、早く戻ろッ!」
アルトリアは速やかに準備して、既に鍛冶屋の入口にみんなを待っていた。
「アルバさん! ディースファーさん! 私たち急用を思い出したので、今から戻らないといけません。 では、私たちはこれで失礼します!」
丁寧に別れを告げたゼノは出る前にペコリと頭をさげ、そして既に外にいるアルトリアたちと合流し、学園に帰還する。
ついに依頼達成したチームBは太陽が沈んでいく方向へ走りながら学園に戻ろうとしていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
一時間で約町の半分以上を歩いたチームBはようやく学園の校門までたどり着く。 ヘトヘトでもう足が動けないと思ってる彼女たちは最後の気力を搾り出し、職員室に向かった。
彼女たちは下級生校舎の職員室、その前にたどり着き、ひとまず呼吸を整えた。 そして、チームリーダーであるエレオノーラは職員室の扉を開ける。
扉を開けたら、中は教師ひとりしかいなかった。
「お疲れっ! 随分と遅くなったな」
そこに座っているのは彼女たちがよく知ってるエルフだった。 軍服姿、輝かしい金髪……精霊大将、イファスティ・トワベールカがそこにいた。
「イファスティさん……!」
「えっ?! トワベールカ様……! なぜここに?」
エレオノーラがイファスティの名前を言ったら、アルファーニは瞬時にエレオノーラの後ろまで割り込む。
「なぜって……お前たちの報告を聞く、そう決まってるじゃない」
「そ、そうですか……」
もう何を言えばいいのかも分からなかったエレオノーラは諦めた。 そしてアルトリアがもう少し後ろにいて、彼女たちの会話を聞いたら、彼女も前へ出る。
「じゃあ、私が方向させて頂きます、それで構わないよね? エレオノーラ」
「お、おお……」
その後、アルトリアは二十分を使ってすべて説明した。
「なるほど……じゃあ今回の依頼の判定はAにする。 お疲れ様、もう宿舎に戻っていいよ」
イファスティは机の上にある紙に赤色のスタンプを押した。 その時、エレオノーラはあることを思い出し、イファスティに聞く。
「イファスティさん……オーフィスたちはもう依頼を達成したのか?」
その質問を言い出した瞬間、手元の書類を整理していたイファスティが動きを止めた。
静かになった職員室は徐々に太陽の赤い光りに包まれていく。 時計の針が進む音ですら聞こえる静寂な空間、その時、イファスティは口を開ける。
すると――、
「いいえ……あいつらはまだ戻ってない……」
彼女の一言で彼女たちの時間を止めたみたいに、全員が驚愕の表情を晒す。
依頼開始から既に八時間が経過した……オーフィスターニャたちはまだ戻って来ない。




