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マジック × ワールド:アーニユ(Magic × World:Ániyu)  作者: 川崎雨御
第二章:死者の復讐編
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第二章11:鍛冶屋に届け物 ①

 先に出かけたチームBを率いるエレオノーラと他のメンバーはちょうど学園の外の入り口にいた。 彼女たちは暖かい風を顔で受け止めて、夏が近づいて来ると実感する。

 エレオノーラはキョロキョロと周りを見て、まずどこから情報収集をはじめるのかを考えていた。


「やっぱ……商店街から始めよう」


 エレオノーラは腕組みして、右手で目の前の方向へ指す。


「いいんじゃないか? この時間ならみんなは商店街に食材や買い物をしてるし……いい機会と思う」


「うんうん、アルトリアの言う通りだ。 早く行こう」


「待った!」


「ぐっ!」


 アルトリアの意見に賛成し、彼女を引っ張ってふたりで先に行こうとしたら、アリトリアはゼノの髪を引っ張って彼女を止める。


「アルトリア! 髪を引っ張らないでよー」


「すまん、つい癖で……」


「もう……髪型が乱れたじゃないかぁ……」


 ゼノは持っていた籠を地面に置いて、文句を言いながら自分の髪を再び直す。

 その間、エレオノーラは何かが閃いたみたいでみんなを彼女の元に集める。


「みんな、この町の構造を知ってるのか?」


「しらん」


「ゼノも知らない」


「知らない」


「知るわけがねえ」


「だよなぁ……」


 エレオノーラがみんなに聞いたら、アルファーニたちは同じ答えを出した。


「ハァ……仕方ない、気持ちを切り替えて商店街に入ろ!」


 ため息をつくエレオノーラの表情は普段の笑顔に戻って、彼女は先に商店街へ突っ走る。


「待って! エレオノーラ! まったく……フィーリア、追うわよ!」


「えっ? あっ……おい!」


 フィーリアが反応する前に、素早い動きで走り出したエレオノーラを追うため、アルファーニは自分の靴の裏に氷をつけて先に彼女を追い始める。 地面を滑るみたいに高速移動で数秒でエレオノーラと肩を並んだ。


「ワウ! アルファーニお前、skating出来るんだ! しかも上手い!」


「まぁな、私の家にある庭には広い氷の湖があって……しかもその氷はどんな暑い天気でも絶対に溶けないので、子供の頃からほぼ毎日滑っていた。 まぁ、この学園に入学する前も滑っていたけどね」


 アルファーニは複雑な地形で滑りながら彼女がどうやって上手く滑るようになったのかを笑って説明した。


「絶対に溶けない氷? なんかカッコイイなっ! いつかアルファーニの家に遊んでいい? 私も真夏にスケートしたいんだ!」


 エレオノーラの目はキラキラと輝いて、アルファーニを見詰める。


「もちろん! その時はクラス全員でおいで、パーティーしよう!」


「いいね! I love party !」


「決まりね!」


 楽しそうに笑うアルファーニとエレオノーラは既にフィーリアたちから遠く離れていた。


 その頃、呆れて、どう反応すればいいのかも分からないアルトリアたちは、同じ場所に立ったままエレオノーラとアルファーニが徐々に縮んでいく後ろ姿を見つめていくしか出来なかった。


「行っちゃったね……アルトリア、私たちも行こう」


「あ、ああ……」


「あのふたり、チームワークってなんなのかが分かってるのか?」


 さっそく心配になってきたフィーリアが後頭部を掻く。


「さぁー……これは私たちにとって、初めての依頼だ。 きっとあいつらはただ熱くなっただけだろう……たぶん」


「目的地は商店街だから、直ぐに見つかると思う。 アルトリア、早く行こう」


 ゼノは再び重い籠を持ち上げてアルトリアの手を握って、前へ進む。


「相変わらず仲がいいわね、お前たち……やっぱ、幼馴染みだからか?」


 フィーリアが仲良しのふたりを見たら、好奇心で彼女たちに聞く。


「まぁ、私たちの両親は小さい頃も幼馴染みだったので、自然に私たちは生まれた時から一緒に居たので、家族みたいなモノさ。 時に笑ったり泣いたり、時に喧嘩したり……色んなことと時間を過ごし、固い絆で結ばれている。 それは……家族ってもんだ」


「へえー、なるほど。 ん? ゼノ、何顔を逸らしてるんだ?」


 子供みたいな笑顔で笑いながらゼノたちとの思い出を語るアルトリアと、何故かそれを聞いていたゼノは彼女たちに気付かれない角度で顔が真っ赤にして、微妙な笑顔で笑っていた。


「え? あ、いや……これはその――」


「ゼノ! フィーリア! 早くあいつらを追いかけよ!」


「ウワッ!」


 まだ何も言ってないゼノはアルトリアに引張れて、凄い勢いでアルファーニの跡を追い掛ける。 風圧を起こして、フィーリアの髪は暴れているみたいに乱された。 彼女は頭を強く横に振って、髪型は元に戻す。

 そしてひとりに残されたフィーリアは目を大きく開いて瞬き二つして、アルトリアたちの追い掛ける姿を見てると、彼女は独り言を喋り始める。


「そう言えば……依頼を達成したら、どこの誰に報告すればいいんだ?」


「その質問はあたしが答えてやろう」


「?!」


 突如! フィーリアの後ろから誰かが話し掛けた。 びっくりされた彼女は勢いにのせて頭を振り返る。


 すると――、


「あなたは……!」


 日差しでフィーリアの視線から影のような物が彼女の前に現れた。 その影を見た更に驚く表情を晒すフィーリアは思わず口が大きく開く。

 そしたら、影が笑った。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 既に商店街にたどり着いたエレオノーラとアルファーニは全力疾走した結果、少しオーバーヒートしたみたいに、彼女たちは休息を取るため、アルファーニはエレオノーラの知り合いが開いてる喫茶店にのんびりと紅茶の香りとクッキーの(うま)さを楽しんでいる。


「この紅茶、すごく美味しい!」


「だろう? ここは私のお気に入りの喫茶店なんだ! あ、クッキーも食べて見て」


 エレオノーラは彼女の前にあったクッキーの皿を持ち上げて、アルファーニに渡す。


「ありがとう……ん! これも美味しい!」


 アルファーニがエレオノーラから渡したクッキー小さな一口で試したら、キラリと彼女の普段見えない瞳の六角星が星の如く輝いた。


「ハハハ、美味しいだろっ!」


「うん!」


 子供みたいに笑うふたりの雰囲気はとても楽しくて、本来の目的をすっかり忘れた。


 そしたら、アルトリアと引張れっぱなしのゼノも商店街に着く。


 今日は土曜日(サバド)、商店街にとっては一番賑やかな一日。 活気で溢れるこの街を通るエルフたちはのんびりと満喫している。

 ふたりはその街の入口に立ったまま、エレオノーラたちを探していたが、どこにも見当たらなかった。


「あれ? エレオノーラとアルファーニ、どこへ行った?」


「奥へ行った……探しに行く?」


「いや、私たちはまず情報を集めることに専念しよう。 エレオノーラたちの勢いで突っ走ったところを見ると、あいつらは絶対どこかで休んでる……」



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「へくちっ!」


「ヘックション!!」


 まだ紅茶を飲んでいる途中のアルファーニとエレオノーラがいきなり派手なくしゃみして、テーブルを鼻から吹き出した紅茶と鼻水でぐちゃぐちゃにした。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「じゃあ、どこから始める?」


 アルトリアにしがみつくゼノはニコニコと笑う。


「何ニヤニヤ笑っているんだ? てか暑苦しい」


「酷っ! 久しぶりアルトリアと一緒にデートできるから、ニヤニヤしてもいいだろ?」


「はいはい」


 適当な態度に適当な返事をするアルトリアは周りを見てるうち、最初に聞く場所を見つけた。


「あそこに入ろ」


「え?」


 アルトリアは先に歩き出し、ある店に入った。


「ペットショップ? でもあそこは確か……あ、待ってぇアルトリア!」


 ぶつぶつと何かが言ってるゼノはアルトリアが彼女をほっぽらかして、店に入ったら、ゼノは慌てて追いかけた。


 店の扉を開けたら、猛烈な獣の臭いがゼノの鼻に襲いかかって、彼女は直ぐに鼻を握るみたいに塞ぐ。


「(臭っ! やっぱりこの臭いに慣れない……アルトリアは? あった)」


 臭いに耐えれないゼノは焦ってアルトリアを探し、そして見つけた。 彼女はカウンターにある荒獸族(ラフビースト)の店員さんと話していた。

 ゼノはさっそくアルトリアのところまで近付き、徐々に彼女たちの会話が聞こえるようになる。


「それでさ、聞きたいことがあるんだ。 《モスカ将軍の街》ってどこにあるのか、教えてくれない?」


「(アルトリアが話してる相手はもしかして……)」


 店のど真ん中は色んなガラスケースと動物があって、奥のカウンターが見えない。

 子犬、子猫、蛇、トカゲ、ハムスター、いろんな種類の鳥と魚。


「悪ぃ、アタシもさっぱりわからねぇ」


 店員さんがアルトリアの質問に返事したら、ゼノは店員さんの声に聞き覚えがあって、急ぎアルトリアのそばまで近付く。


「ああやっぱり!! ミカ(Mika)さん!」


 ゼノは驚き過ぎて大声をあげる。


 うさぎの長くて白い耳と白い髪。 紫色の瞳、完璧な美貌。 黒色のティーシャツとジーンズ、その上でオレンジ色のエプロンをつけて、胸元に《Mika's pet shop》と書いている。


「お! 久しぶりっ! えっと……ゼノちゃん!」


「今、一瞬だけ私とゼロの区別をつけなかったのですか?」


「バレた? アハハハッ! 悪ぃ悪ぃ、久しぶりに会ってないから、誰か誰だったかわからなかった」


 高笑いするミカは堂々と思ったことをそのままゼノに話す。


 ゼノは愛想笑いして誤魔化す。 そんなふたりを見てるアルトリアが危うく本来の目的を忘れるところに、彼女は手をゼノの頭上にのせる。


「てことは、ミカさんはあの街が何処にいるのかも知らない、かぁ……」


 ちょっとがっかりしたアルトリアはゼノを撫で始める。


「う……ん……ちょっとアルトリアっ! 髪が……!」


 気づけば、ゼノの髪は再び乱された。 怒ったゼノは籠をカウンターの上に置き、またしても髪型を直す。


「あ、すまん。 じゃあミカさん、私たちはこれで……」


「おお、頑張れ!」


「はい! 行くよゼノ」


「え? ちょっ……引っ張らないでよ!」


 アルトリアはミカと別れ、ゼノの制服を引っ張りながら店から出た。


 再び暑い風を感じるアルトリアは早くも汗をかく。


「(あっつー……街を見つかる前にこっちが干からびてしまう……)」


「アルトリア、あっちを見て」


 その時、アルトリアが手で汗を拭いてる間、ゼノは商店街の入り口からフィーリアが入るところを見た。


「ん? フィーリア……?」


「なんか様子が……」


 フィーリアはまるで力が抜けられたみたいに、フラフラと歩いて、頭が地面を見つめていた。 そしたら、アルトリアたちの存在を気づいた彼女は悠然と視線をあげる。


「アル……トリア……? ゼ、ノぉ……」


 そのまま、フィーリアはアルトリアたちに近付く。


「あいつはいったい……?」


 様子がおかしいと気づいたアルトリアはゼノを彼女の後ろにさがる。


「アルトリア……?」


「さがれゼノ、何か様子がおかしい」


 ちょっと怖がってきたゼノはアルトリアの真剣な表情を見てると、彼女は頷いて、三歩後ろにさがる。


「(どうすればいい? 私は一応自分の武器を持っているが……本当にここで暴れるのか?)」


 アルトリアは緊張して、背中に掛けている剣の握りを握って、応戦する体勢に構える。

 一方、フィーリアは徐々に、確実に近づいて行く。


「くぅ……」


「アルトリア……たす、けて……」


「?!」


 フィーリアはアルトリアに助けを求める。 それを聞いたアルトリアは瞬時にフィーリアに近付く。


「アルトリア?!」


 ゼノが反応する前に、アルトリアは既にフィーリアのところまでにいた。


「アルトリア……み……み……」


 アルトリアに支えているフィーリアの顔は干からびていた。 彼女は何かアルトリアに何か必死に言おうとしている。


「しっかりしろっ! 何か言いたい?」


 焦るアルトリアは強く叫ぶ。


「み……水が、ほ……しい……」


 力を絞ったフィーリアの言葉は一瞬にアルトリアの焦りを冷えた。


「…………」


「…………」


 無表情になったアルトリアとゼノはただひたすらフィーリアを見詰める。


 すると――、


「「(こいつ……アホか?)」」


 彼女たち同時に同じことを考えた。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 そしてその間、先に走ったアルファーニとエレオノーラは喫茶店に汚したテーブルを店から貰ったナプキンで拭いていた。


「「(なんで私たちがこんな目に……?)」」


 泣きながら心に同じことを考えていたアルファーニたちでした。

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