第二章6:波乱の予感
オーフィスターニャが入学してから、既に一ヶ月が過ぎました。
その時、一年二班が問題児だらけであることは既に学園内では有名になっていた。 そんな一年二班、校長はすごく嬉しく思っていた。
広いバラの庭にある自立した白い建築物。 屋根があって、柱があるだけで外の空間が見られる、平面から見れば八角形。 ふたりのエルフはその真ん中のあずまや、或いはガゼボに休息を取っていた。
「イファスティさん、一年二班の生徒たちの様子はどうですか?」
校長は手に持ってる紅茶を見詰める。
「順調です、ただ……問題児が多いので、起こすトラブルも増えてるから、ちょっと疲れたんだ……ァハハハ……」
苦笑で笑うイファスティは目を逸らす。
「確かに毎年恒例、一年二班は問題児の集まり、性格問題、魔法のコントロール、様々な理由で編入されるこのクラスに実は、本当の理由は隠されている…それは何なのか、分かりますか? イファスティさん」
校長が笑って、ゆっくりと紅茶を飲む。 イファスティは校長の話を聞いて、彼女も笑う。
「もちろん分かっています。 あたしも学生時代、そのクラスに所属していたからなぁ。 今思えば……すっごく楽しかった、みんなと一緒にはしゃいで……笑って、時に喧嘩して……そして仲直りして、あたしたちの絆をより一層強く結ばれていた……。 ふん……本当に楽しい学生時代だった……」
イファスティは過去を思い出し、微笑む。 彼女の表情を見ると、校長はそれに影響されたみたいに、彼女も微笑んだ。
「イファスティさん……君はまた話題の方向性と重要点を間違っていますよ? 確かに君たちの学生時代は懐かしいが、今はその事を話してません。 今は、どうして一年二班に編入された生徒は特別なのか、その理由を聞きたい」
「ハッ! 思わず楽しい過去に溺れてしまった……!」
自分が勝手に過去を振り返ることに気付くイファスティは恥ずかしすぎて、顔が赤くにして頭を抱え込む。
「うっふふふ……たまに過去を振り返るのも楽しいですが、でも今の時間を楽しむのも大事です。 さて、そろそろ君の答えを聞きたいが……いいかな?」
イファスティが慌てる姿はあまりにも面白くて、校長はニコニコと笑う。
「あッ、そうでした……! コッホン、では改めてお答えします」
イファスティは丁寧な喋り方して、気持ちを整理する。
「一年二班に編入される、隠された本当の理由は、生徒たちの魔法による資質は極めて高い。 無論、この事は全校生徒たちに知らされていない……」
「そう…正にそれです。 この学園が設立した理由は一方、国家軍に編入されるための事前訓練みたいなモノ。 もう一つの理由は……ふふ、生徒たちがより上手く自分の魔法のコントロールを上達して、私生活に支障を起こさないためでもある。 どちらも重要な教育です、それは……この学園の方針です」
校長は学園の方針を語ってる時、明らかに楽しく笑っていた。 イファスティはその笑顔を見て、彼女はあることを言う。
「校長……あたしはそろそろあのことを一年二班に披露すると思うが……どうでしょうか?」
「そうですね……入学してから既に一ヶ月が経ったことだし、彼女たち間の絆も深めたので、いい頃合いでしょう」
イファスティはまるで許しを求めてるように校長に頼んでいた。 そしたら校長はすんなりと許可する。
「ありがとうございます! さっそく明日の朝、彼女たちに伝えおきます…! では、あたしはこれで失礼します」
感激で頭を下げるイファスティ。 彼女は校長と別れる時、敬礼して、下級生の校舎へ向かった。
そしてひとりになった校長はゆっくりと空を見上げる。
「今年も何も起きずに、平和で過ごすことを祈ってます……一年二班の皆さん」
その言葉はまるで何かが起こることを知ってるように、校長は笑って紅茶を飲む。
「あら……もう冷めてる……」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
―翌日―
コローナ・デ・サフィーロの西北、下級生の宿舎がある。 赤と白、二つの色はこの宿舎の特徴を表している。 宿舎の広さは校舎とほぼ同じ、約三百五十平方メートル。 そこにも、食堂が存在し、生徒たちはそこに朝食をとる。 或いは食堂のキッチンから食材を貰って、部屋にある小さな厨房で料理する。
そして三階に……一年生の生徒たちが暮らしている。
一年一班、階段を上がって左側の三つの部屋にいる。
一年三班、一班と逆の方向にいる、階段の右側。 このクラスも三つの部屋を使用している、生徒の数は一班とほぼ同じ。
そして……オーフィスターニャたち、一年二班は右の更なる奥にいて、残った二つの部屋を使用している。 一番奥の壁のとなりにある部屋は……オーフィスターニャ、ミネルヴァ、アルファーニ、エレオノーラとフィーリア。
そして隣の部屋を繋がってる、ミネルヴァの魔法で創った扉の向こうに、他のみんながいる。 ゼロ、ゼノ、アルトリア、カティアとレスター。
二つの部屋の構造はほぼ同じ、部屋の左右の壁に二段ベッドがあって、真ん中に普通のベッドが一つ。 その上で、真ん中のベッドの左右に高い窓は外の景色が見られる。
現在時刻、朝の七時の十五分前。
既に太陽の半分以上は山を上に昇ってるころ、オーフィスターニャたちがいる部屋、右側の二段ベッドの上にはアルファーニが幸せそうに、よだれを垂らして寝ている。
彼女の下に、ミネルヴァの姿は……いない。
「ふぅ……そろそろキッチンから食材を貰えないと……」
すると、玄関からすぐ左側にあったトイレの扉が開き、ミネルヴァが全裸の姿で現わす。
窓から入ってくる風は彼女の赤紫色の髪と彼女が付くている首飾りを揺れる。 その長さはちょうど彼女の腰まで伸びている、ミネルヴァは目を閉じて、深呼吸する。
すると――、
「唯一魔法・創造」
ミネルヴァは彼女と同じ高さの魔方陣を召喚する。 そして彼女は悠然と魔方陣へ歩き始める。
彼女が魔方陣を抜けた瞬間、全体は既にメイド服で纏っていた。 ミネルヴァは左足を見て、右足を見て、最後にその長いスカートをめくって、下着を見る。
「カティア様の言い付け通り、今日はガーターベルトと白い下着を穿きましたが……これはいったい…何の意味があるでしょうか……? 毎日違う種類と色の下着を着なさいと言われました……」
不思議に思うミネルヴァは真ん中に寝ているオーフィスターニャを見て、徐々に視線を上げる。 ミネルヴァが見なかったのは、オーフィスターニャではなくて、彼女の上にあった時計だった。
時計は七時の十分前をさしている。
「あら、もうこんな時間に……! こうしちゃいられません、早く朝食の準備をしなきゃ……!」
少し焦ってるに見えるミネルヴァは左の窓を開ける。
「アルファーニ様、皆さん、少々お待ち下さい……直ぐに朝食の準備をします」
その言葉を残して、ミネルヴァは窓から飛び出す。
飛び出した直後、彼女は左手から魔方陣を召喚して、ロープを創る。 視線が地面を見てる一転、彼女は地面に背を向けて空を見上げる。
するとミネルヴァはロープの先っぽに鋼鉄な爪のようなモノを付けて、彼女がさっき飛び降りた窓にロープを投げる。 ロープ付きの爪は部屋の中に入った時、ミネルヴァは気付く。
「(お嬢様たちはまだ寝ている、このままでは鉄製の爪は地面に当たった瞬間、お嬢様たちを起こしてしまう……! ならば……!)」
そう思ったミネルヴァは瞬時にロープを軽く引っ張る。 そしてちょうど地面と接触する寸前の爪は引っ張られ、そのまま大きな音を立てずに、窓の下に引っかかる。
「んッ! むにゃむにゃ……」
オーフィスターニャはちょうど二つの窓の間に寝ている。 彼女は音にビクッと痙攣したみたいに震える、しかし直ぐに落ち着いた。
その間、ロープを掴んでいるミネルヴァはその勢いで一階の外壁にぶつかって行く。
すると――、
「ここです!」
ミネルヴァは左手を突き出す。 そして彼女がぶつかる位置の壁に、さっきより大きな魔方陣を召喚し、扉を創る。 木製の扉が勝手に開けて、その中身は真っ黒、先がなにも見えない。
しかしミネルヴァは戸惑ってることに全く感じない、彼女はそのままロープを手放して、扉の中に飛び込む。 彼女が手放したロープは直ぐに消えた、召喚した扉も、ミネルヴァが入って数秒後、それも消えた。 跡形も無く消え去った、儚い砂のように。
「よし、着きました……!」
食堂の厨房、そこに入るための唯一の扉に、ミネルヴァはそこから飛び出した。 彼女が飛び出した姿は外壁に召喚した扉に飛び込んだ時と同じ姿勢だった。
彼女が急に現れたこと、中にいた食堂の朝食メニューの準備にかかっていたエルフたちがちょっぴりだけ驚かされ、でも直ぐに自分たちの仕事に集中した。 ミネルヴァも普通に魔法で柳かごを創って、テーブルの上にあった食材を選んで、普通に厨房の料理長に声を掛ける。
「あの……ベサ(Vesa)様、今日の食材の中、ニンジンと生姜がありますか?」
ミネルヴァが声を掛けた料理長の髪色は緑、顎の部分に浅い傷跡があって、白い服装を着て、キャベツを小さく、綺麗に切っている。
「ん? おお、ミネルヴァちゃん! ニンジンと生姜だな、あるある、ちょうどそのテーブルの上に置いている」
優しく笑うベサは手を止めて、右手で厨房の隅っこにあったテーブルを指す。
「ありがとうございます」
ミネルヴァはペコリと頭をさげて礼を言う。
「いいって! それより、今日はどんな料理であの子たちをご馳走するんだ?」
聞くベサは笑う。
「今朝はちょっと冷えるので、暖かいスープとか用意する。 時間があれば、サラダ……或いはサンドイッチの弁当も作ります」
ニンジンと生姜を選んでるミネルヴァはベサの質問に答える。
「そうかい、朝から大変だな。 まっ、無理だけはするなよ? いい? ほれ、これも持って行け!」
「あ、はい……! ありがとうございます……これは……トマト?」
ベサが食材の中から新鮮で真っ赤なトマトをミネルヴァに軽く投げるのように渡す。
「昨日、ふたりの女の子がやって来て……ひとりは赤い髪の毛に何本が緑色の髪の毛で…もうひとりはピンク色の髪の毛の女の子。 ふたり揃って、厨房を覗いてたんだ、よだれを垂らしながら。 なんか可哀想だったので、彼女たちにトマトをあげたら、ふたりはすっごくいい食べっぷりで思わず笑ってしまったんだ。 あのふたり、君と同じクラスなんだろ?」
ベサはそう言いながら、顔は本当に深層から笑っていた。
「ええ、同じクラスに所属しています。 すみません、私はそろそろ帰れないと朝食の準備に間に合わないから、これで失礼します」
「おぉ、気を付けなッ!」
ミネルヴァがベサと厨房にあった関係者たちと別れた後、彼女は厨房の扉の前に魔法を使う。
「唯一魔法・創造」
ミネルヴァはさっき外壁に同じ扉を創った。 その扉は自動的に開ける、彼女は悠然として暗闇の向こうに入る。
「相変わらず慣れない光景だ……唯一魔法かぁ……イファスティたちと居たころと同じように、問題を起こさなきゃいいのだが……」
不安に顔を晒すベサは扉が消えるまで見続けていた。 そして消えた後、彼女は仕事に集中する。
ミネルヴァはオーフィスターニャたちがいる部屋に入った後、寝室に入る前に、彼女はカーテンを創り出し、寝室の前に置いて閉める。
そして彼女は料理を始める。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ミネルヴァが小さな台所に一年二班全員分の朝食を完成しようとしていたころ、その美味しそうな香りはカーテンの隙間に入り、寝室内で漂う。
匂いは全員の鼻に通って、オーフィスターニャたちはゆっくりと目を覚ます。
ミネルヴァは先にオーフィスターニャたちの寝室の真ん中に長いテーブルを召喚する。 続いて彼女は二つの部屋を繋がる壁にあった扉を開けて、ミネルヴァはカティアたちを揺さぶって起こす。
「カティア様……起きてください、朝食の準備は出来ました。 早めに顔を洗って下さい」
「ん……ぅ……あと三分……」
しかしカティアは起きるところか、顔を布団で被る。
「わがままを言わない下さい、このままではアルファーニ様は怒りますよ? 嫌なら早く起きてくだ……さいッ!」
「キャッ!!」
ミネルヴァは思いっ切りカティアの布団を巻き上げ、そのせいで、カティアは宙に浮いて思わず普段発することはない声を出して、そのまま顔は枕に突っ込む。
「うぅぅ……ミネルヴァ……そんな荒っぽい起こし方しなくても……」
「おはようございます、カティア様。 これはアルファーニ様の言い付けです、『もし起きたくない場合、手段は問わず、君のもっと効率のいいやり方で起こせ』とのことです」
普段通りでミネルヴァはニコリと笑う。
「うぅ……お姉ちゃん……厳しすぎるよ……」
「私はアルトリア様たちを起こしに行くから、カティア様、ちゃんと顔を洗ってください」
「うん……分かった……ふあぁぁ~」
ピンクのパジャマを着ているカティアはベッドから降りて、あくびしながらふらふらとトイレに入る。 その間、ミネルヴァは先に右側の二段ベッドの下で寝てるアルトリアを起こす。
ミネルヴァは背伸びして、アルトリアを揺らす。
「アルトリア様、起きてください。 もう朝です、朝食の用意も出来ました」
しかし無反応。 そしたらミネルヴァはもっと効率のいい起こし方を思い付き、彼女は二段ベッドに付いてるはしごからのぼって、アルトリア全体を見る。
「なんか……布団が膨らんでる……?」
ミネルヴァが見たのは、ちゃんと枕の上に寝てるアルトリアの寝顔、しかし体を覆う布団は異常に膨らんでいる。 まるで中は誰かが寝ているみたいに……、そう思ったミネルヴァは布団を掴んで、巻き上げる。
「やっぱりここに居ましたか……」
ミネルヴァの表情は既に知ったみたいで、あんまり驚いていなかった。
「ゼロ様! ゼノ様! そしてアルトリア様! 起きてください!」
そこには、ゼロとゼノ、双子はがっしりアルトリアの胴体を抱きついて、ふたりは寝てると同時にアルトリアの胸を頬ですりすりしていた。 しかしアルトリアほんにんは平気な寝顔でした。
既に布団が取られた、起きるのもいい頃合いはずだった、しかし起きない。 アルトリアたちはぐっすりと寝ている。
それを見たミネルヴァは笑う。
「仕方がありません……初級・雷属性魔法『電撃』ボルト調整……百!」
ミネルヴァは手を合わせて唱える、続いて彼女が両手を離したら、その間に雷が現れた。
そのまま彼女はアルトリアたちを抱き締めるように近づく、すると――、
「イデデデッ!!」
ビリビリな感覚は彼女たち全身に回って、さんにんは即座に起き上がる。 彼女たちの髪も起き上がっていた。
「おはようございます、アルトリア様、ゼロ様、ゼノ様……朝食の準備は出来ましたので、起こしに来たんです」
なにもなかったのように、ミネルヴァはペコリと挨拶してベッドから飛び降りた。
「あぁ……ミネルヴァの起こし方は相変わらず容赦ねぇなあ……」
とんがってる髪を直してるアルトリア。 彼女は自分の髪を大事にしてるみたい。
「本当ッ! ミネっちに困ったねぇ」
「そうそう!」
ゼロはゼノの髪を直してる間、ゼノもまたゼロの髪を直している。
「うんうん! って……なんでお前らがここにいるんだ!?」
「今さら気づいたんかい?」
「昨日の夜、色々とアルトリアのおっぱいと遊んだなぁー、スリスリとか、キスとか、吸うとかも……美味しかったなぁ、ご馳走様でした」
「なッ!?」
ゼノが言った途端、アルトリアの顔が真っ赤になって、慌ててパジャマの上着を脱いで、自分の胸を見る。 そしたら、彼女の胸にはびしょびしょでヌルヌルな液体でいっぱいだった……。 その頃、双子は見つめ合って笑う。
「「アルトリアの乳首、硬くて美味しかった! ご馳走様!」」
再びペロを出して、反省の無い顔でアルトリアを見る。 そしてアルトリアは黙っていた。 体が震えながら、拳を強く握りしめる。
そしたら――、
「…………お、おまえらぁぁあああああ!!!!」
「「やーい、怒った怒った~」」
大きな怒鳴り声を出して、双子を追いかけ始めた。 双子は既に分かっていたように、彼女たちは一足先に逃げた。
寝室内で走り回るアルトリアたち、笑い声の双子と怒りで吠えるアルトリア、その音はあまりにもうるさくて、一階の食堂でさえ聞こえてくる。
「いい加減にしてください!」
「いてッ!」
「「いたッ!」」
いきなりミネルヴァが現れて、分厚い本でさんにんの頭に叩く。 頭を抱え込むアルトリアたちは涙を漏らす。
「朝から元気してるのはいいが、元気すぎるのはよくありません! 迷惑ですから! 私は今からレスター様を起こすので、アルトリア様たちは早めに顔を洗ってください! あ、アルトリア様は先にシャワーね、体中はよだれまみれで汚いです」
「はーい……ハァー、朝からついてないなぁ……これもお前らのせいだからなッ! 覚えておけ!」
怒ったアルトリアは双子に言いながら、先にシャワー室に入る。
そして少し罪悪感を感じる双子は反省し、黙ったままトイレに入る。
「さて…残り時間は僅か、早くレスター様とアルファーニ様たちを起こさないと……」
その後、レスターは普通に起き上がった。 オーフィスターニャたちの部屋に戻ったミネルヴァは先にアルファーニを起こす、次にエレオノーラとフィーリア。 最後にアルファーニ自らオーフィスターニャを起こす、いつも通りに、荒っぽい方法で……。
アルファーニは半裸の姿、上着の水玉パジャマを着たままでオーフィスターニャに近づき、彼女が今どういう格好しているか、自覚していない。 オーフィスターニャの横に立ってるアルファーニ、彼女は手を伸ばし、オーフィスターニャの頬を撫でる。
「(美女なのに、あんな性格…バランスが悪すぎ)ハァ……どうして私はこのエルフのことを……」
途中でアルファーニの言葉がぼんやりしてて、よく聞こえなかった。
そしたら――、
「起きてッ! オーフィスターニャ・トワベールカ!!」
「ウワァッ!」
オーフィスターニャの頬を撫でていたアルファーニの手は一気に氷のような冷たさでオーフィスターニャを起こす。
アルファーニは何故か顔が真っ赤になっていた。
「何すんだよ!?」
「おはよう、オーフィスターニャ・トワベールカ、私の目覚しい、どうだった?」
「最悪だッ! たく……ミネルヴァに起こした方がましだ……」
彼女はちょっぴり怒ってた。
オーフィスターニャのパジャマは灰色のキャミソールとダークブルーの短パン、彼女はベッドから飛び降りて、冷たい頬を撫でてトイレに入る。
全員が顔を洗った後、寝室内は既に椅子とテーブルがあって、その上に朝食が用意されていた。 オーフィスターニャたちもとっくに制服に着替えていた。
スープ、パン、そしてフルーツ。 健康的な朝食で、オーフィスターニャたちは楽しくお喋りして満喫した。
朝食を済ました後、ひとりひとりは自分が使用した食器を洗う。 全部終わった時、ミネルヴァは指を鳴らし、テーブルと椅子が消える。
「さ、学校へ行きましょう」
ニコリと笑うミネルヴァはゆっくりとアルファーニの後ろに立つ。
「なんか毎朝はミネルヴァの独壇場だな……」
オーフィスターニャはエレオノーラの毛耳に呟く。
「対して私達はみっともない姿がすべてさらけ出した……perfect maid, so terrible……」
エレオノーラも同意見で喋りながら頷く。
その時、クラスの一部は先に学校に向かっていた。 オーフィスターニャたちも笑いながら悠然と歩き学校へ向う。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
十分後、生徒たちは各自の教室に入った。 オーフィスターニャたちも教室内でホームルーム、イファスティが来ることを待っていた。
「ハァ……やれやれ……明日はいよいよこの一年二班が発揮する時期かぁ……」
イファスティは教室の扉の前で独り言していた、そして深呼吸する。
「おはよう! って、なにやってるんだ?」
扉を開けて挨拶したら、イファスティは呆れた顔でオーフィスターニャたちを見る。
「あ、母さん!」
「トワベールカ様!」
「おはよう〜、イファスティさん」
オーフィスターニャ、アルファーニとエレオノーラは先にイファスティの存在に気付く。 しかし、あるふたりは気付いていない。
「ザーフィゴナットゥ双子! 何やってるんだ?」
「意地の張り合い、です!」
「その通り、です!」
ゼロとゼノはアルトリアの前で頭をぶつかって、相手を手を掴んでいた。
理由を知ったイファスティは手を顔につけ、頭を横に振る。 彼女だけじゃない、アルトリアも同じだった。 そして同時にアルトリアの限界が――、
「やかましい!」
「イタッ!」
「アイタッ!」
彼女は席から立ち上がって、双子の頭を思いっきりぐうで殴った。
「先生はもう来てる、いつまではしゃぐつもりだ? お前ら、早く座れッ!」
「うぅぅ……そんな強く殴ってもいいのに……」
「そうだそうだ! だいたい、わたしたちが喧嘩するのはアルトリアのことで喧嘩してるんだ! どうしてそんなこともわからないんだ? この鈍感アルトリア! ベーッダ!」
怒ってたアルトリアは双子に怒鳴る。 そしたら双子は泣くことを我慢して、自分たちの気持ちをアルトリアにぶつかる。 特にゼノ。
「ハァ? なに言ってるんだお前ら……? てか、誰が鈍感だ!?」
「そこまでだ!」
いきなりイファスティは大声で叫んで、クラス全員を黙らせた。
「揉め事は後回しにして、今はホームルームの時間だ! 全員、席につけッ!」
オーフィスターニャたちは黙ったまま席に座った。 そしてイファスティも、気持ちを切り替えて、深呼吸して、真剣に話す。
「今日は重要な知らせがある。 今後、このクラスの方針を決められると言っても過言ではない。 お前たちには明日の朝、つまり、土曜日ここに、この時間に集合すること。 遅刻厳禁! 分かった?」
「えぇえ? 何それー? 納得出来ない!」
「そうだそうだ!」
イファスティが話した後、真っ先にゼロとゼノは文句を言う。
「先生、それって……ど、どう言うことですか?」
レスターはこっそりと手をあげて質問する。
「うん、詳しいことは明日説明するが……一言で言うと、君たちには、依頼が来たんだ!」
「依頼?」
クラス全員は不思議な顔でイファスティを見詰めて頭を傾ける。
「そうだ、依頼だッ! ふふふ……」
そしてイファスティは笑いながら嫌な空気のホームルームが始めた。




