第二章5.5:教師《其の壱》
とある暗い闇の教室に、手を伸ばせば、まるで闇が手を呑み込んだみたいに、先が全く見えない。 窓のカーテンも閉まってる。
しかし、僅かだが、笑い声が聞こえる。
となりの教室から……。
「ニノ、明かりをつけてくれ」
「りょーかい」
いきなり発声した声によって、教室内は天井にある光の水晶で中身を照らす。
そして、ふたりのエルフが居た。
ユミとニノ、ふたりは黒板の左右に立っている。
普段通りの格好をしているユミと教室内の飾りと全く似合わない、愛らしく、ひらひらな服装を着ている。
彼女たちがいる教室は一言で言えば、「不思議」。
天井は地面、地面は天井に。 机と椅子は地面となった天井に張り付いてる。 空中に蝋燭、水晶の髑髏、色んな闇魔法に関する品物が浮いてる。
「ユミ、私たちはどうしてここにいる? 今は闇属性魔法の授業タイムじゃないよね、もう放課後ですよ? なんで私をここに連れてきた?」
質問の連発を仕掛けるニノ。 対してユミは無表情で彼女の嫁を見詰める。
「そんなことより、なんだその格好? 一体どういう風の吹き回し?」
ユミはニノの胸のあたりをガン見する。
「嫌だ! ドコを見てる?!」
恥ずかしがるニノは慌てて胸を隠す。
「太もも!」
「ハァ?!」
何を見ていたのかをはっきりと言ったユミの表情には迷いは無かった。
そしてニノは今度スカートを下へ引っ張って、白い肌の太ももを隠す。
「私の格好のことは置いといて、一体どうして私をここに連れた?」
必死に太ももを隠して、会話の方向性を出来るだけ変えていく。
「あそうだったんだ……今回ニノちゃんをここに連れた理由は、お前に手伝いたいことがあるんだ」
「手伝い……とは?」
不安そうなニノの首筋に冷や汗がかく。
「お前のもっとも得意な魔法、特級・無属性魔法「現象操作」を使って、わたしのサポートしてくれ。 ちょっと説明したいことがあって、お前の魔法が必要なんだ」
「一体私の魔法で何に使う気?」
「闇属性魔法とダークエルフのことについてだ」
「でもなんで今更? 今は説明しても生徒がいないし……」
ニノはユミの不可解な言動に戸惑っている。
「チッチッチ、甘い甘い、甘いぞ我が嫁よ……! わたし達の出番だなんてもう無いんだ……でもわたしが知る限り、次に登場出来るのは約一週間後だ」
ユミは手に持ってる手帳を読みながら、とんでもないことを口にしていた。
「ユミ、あなたは今、何を言ったのか、分かってるの? 言っちゃいけないことを言ってるよ?」
ちょっと慌てて、でも完全に冷静を失ってない口調で、ニノは話す。
「分かってる! だからこそ、今しかないんだ! ささ、とっとと終わって、家に帰ろ」
「ハァー……仕方がない」
もう何を言っても無駄だと判断したニノはため息をつく。 ついでに彼女はポーズを変えて、腕組みした。
「グラシアス、ニノちゃん! 早速だが、まず、誰でもいいから普通のエルフの幻影を現して」
「もう! いきなり抱き付くなっ! 胸はダメ! 私たちは学園に……まだ学園内に生徒たちが残ってるかも……! 家に帰ったら時に好きにしていいからッ!」
ニノに感謝の気持ちとして、ユミは瞬時にニノの胸に飛び込む。
びっくりしたせいで、ニノの顔は赤くなって、混乱して、思わずとんでもないことを口にした。
「約束だぞ」
ニノの言葉を聞いたユミ、彼女は顔を上げて、ニヤリと笑う。
「へ? あ、あれは……! その……」
「嬉しいなぁ、ニノちゃん。 ちょうど前から思い付いたプレイをやりたかったんだぁ」
「ぐッ!」
ユミは無邪気な笑顔で笑う。 それを目にしたニノはドキッと胸が暑くなる。
「ところで、お前の格好は誰に教えられた?」
ユミの表情は変わらず、笑顔で聞く。
「こ、これは……レミカさんから教えられたんだ…二週間前、彼女はこのような格好でイファスティさんを誘惑したらしい……そ、それに……(もじもじ)」
まだ話してる途中で、ニノはなぜかもじもじと蠢く。
「レミカ先輩が……? それとイファスティ先輩がどうした?」
「だ、だから……! 二週間前当日の夜、イファスティさんは獣のようにレミカさんを……お、襲ったんだ……! めちゃくちゃにされた、と次の日にレミカから聞いた……」
「なっ?!」
ニノが話した後、ふたりの間に、物凄く気まずい雰囲気になる。 彼女たちは黙ったまま数分が経つ。
「帰ろっか……」
「そうだな……」
ユミは先にこの沈黙を破って、帰ると言い出す。 しかしニノは既に精神的にがもう疲れ切っている。
こうして彼女たちは教室から出て、鍵をかかる。 ふたりは手を繋いで、学園から出ようとしていた。
「ところでユミ……」
「ん?」
「闇属性魔法とダークエルフについての説明、もういいの?」
「そんなことをしてる場合じゃないんだ、わたしにはもっと大事なことがあるんだ」
てっきりユミが動揺すると思い込んだニノは彼女の「大事なこと」に虚を衝かれる。
「大事なことって?」
「新たなプレイのことさ。 今晩、寝かせないよぉ、ふふふ……」
「なッ!」
ユミの更なる驚愕の真実を語って、ニノの顔は一瞬に真っ赤になる。
「愛してるよニノ……ちゅ」
「!!」
ニノはまだてんぱってる時、ユミはいきなり彼女の唇を唇で封じる。 ニノの眼が大きく開けて、びくびくと震える。
重ねるふたりの唇。 ニノは幸せそうな顔でユミを見つける。
長い銀髪のダークエルフ、金髪ポニーテールのエルフ、ふたりは今日も仲良く過ごすのであった。




