第二章1:一年二班
朝日がコローナ・デ・サフィーロの大きな庭園を照らしてる間、その眩しい光は噴水の水に反射し、眩い光明がとなりにいたイファスティ、レミカとアーサーを輝いてるに見せる。
「ヤッベッ! こんなところで呑気にオーフィスターニャの未来に浮かれてる場合じゃなかった! あたしはそろそろあいつらのクラスへ行かなきゃ! んじゃ!」
急いでるイファスティはその言葉を残し、瞬く消えた。 音を立てず、まるで最初からいなかったみたいに彼女の姿はいなくなった。
そして目の前にいたアーサーとレミカは見慣れたことで、特に驚いていなかった。 彼女たちはイファスティのことを置いといて、ふたりだけでおしゃべり始めた。
「相変わらずだな、イファスティの魔法。 最速で走る、擦れ違った周りの物ですら音を起こさない、まるで肉体がないみたいだ……」
「まぁ、イファスティちゃんの魔法は四年生の時、初めて発見した、彼女だけの魔法。 唯一魔法・加速『静寂疾走』」
ふたりはイファスティの唯一魔法を語って、その特性とあらゆるその魔法と関する記憶を思い出す。
彼女たちは楽しく語ってるうちに、すっかり時間のことを忘れて、気づいたら十分が経過していた。
その後、アーサーはレミカと別れて、彼女は校長室に向かい、北へ走る。 レミカは後ろを向いてそのまま学園から外へ歩き出す。
彼女たちが既に庭の周りから見えなくなった時、遠く北に離れてるある古い建物、既に大自然によって木の枝とその根っ子は建物を侵蝕されてる。 黴はほぼ建物の見えるところを覆われていた。 そして建物の真上に、壊れた丸い窓の後ろに、彼女たちを観察していた影がいた。
『やはりさっきの碧銀の少女はイファスティの娘……アタシが復讐する時が訪れた、ふふふふ……はははははぁぁ!』
まるで複数の声が重ねて喋ってるみたいに、声の持ち主は大笑いしながら奥へ影と共に姿を消した。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
時間を少し数分前遡り、オーフィスターニャたちは西の校舎まで辿りついた。
「あれ? ここって昨日の朝……」
不思議に思えるオーフィスターニャは、指で校舎を指して、必死に頭の中の記憶を探る。
「うん、ここは昨日の朝に来た場所。 なんで気づかれなかったの?」
アルファーニも不思議に思え、頭を右へ傾く。
「そんなことより、お嬢様。 早いところ、教室へ向かいましょう」
「あ、あぁ……そうだな」
ミネルヴァに注意され、みんなはペースをあげて、中に入った。
昨日と違い、校舎の廊下は綺麗に片付いていた。 サクラの花びらもほぼいなかった、風は窓から新たな花びらを中へ運ぶ。
暖かい風は入口から入って、オーフィスターニャたちの背中を押してるみたいに、彼女たちは前へ軽く動きで歩く。
「おっと……んで? 私たちの教室はどこにいるんだ?」
一番前に立っていたエレオノーラがキョロキョロ周りを見る。 彼女の前には上へ行く階段と左右の廊下。
「ここに看板があるよ」
オーフィスターニャは階段の横に飾っていた看板の前に指で指していた。
「オーフィス、そこに何か書いてるの?」
「ん……あったあった! えっと……『新入生の諸君、君たちの教室はこの階段の三階に登ってください。 その階は一年生が所属する。』だってさ」
看板に書いてた内容、オーフィスターニャはただ必要な情報を読んだ。
彼女は読み終わったら、先に階段を登る。
「ワタシたちの教室がどこにいるのかはもう分かったし、早く行こう! 母さんに追いつかれる前に……!」
その言葉を残して、オーフィスターニャは二階ずつ階段を登っていた。
「コラっ、オーフィスターニャ・トワベールカ! 私たちを置き去りするな! 行くわよ、ミネルヴァ!」
「はい、お嬢様」
アルファーニとミネルヴァも階段を登り始めた。 そして最後に残されていたエレオノーラは間抜けな顔で彼女たちの背中を見て、思わず笑う。
「ハハハ、やっぱオーフィスはすごいや。 みんなを自分のペースにはまってしまうカリスマ……フン……私も負けられないなっ! って……待ってぇ!! 私だけを置いて行かないで~」
エレオノーラが独り言をしている間、既にオーフィスターニャたちは二階まで登った。
木の階段は頑丈で、強く踏んでも嫌な音はしない。 オーフィスターニャたちが階段を踏む音は空っぽの箱を叩くみたいに、踏む度に音楽みたいな音がする。
毎度上へ登る途中、大きな窓がある。 校舎の中にある広い庭がそこから見える、中心に一本の桜木がそこにいた。
オーフィスターニャたちはペースを下げて、その美しい景色に見とれていた。 それでも彼女たちは先に教室へ行かなきゃという最優先な目的で、再びペースを上げた。
数秒後で彼女たちは三階にたどり着き、自分たちの教室を探していた。 するとミネルヴァは先に教室を右の方へ見つけた。
全員は緊張して、少しずつドアに近づいていく。 初日で遅刻、というプレッシャーが中々彼女たちの決意を揺らす。 手を伸ばせばすぐ入る距離、それでもオーフィスターニャは迷ってる。
ドアは横へ引くではなくて、普通の部屋の扉と同じ、取っ手を掴んで前へ押す仕組みでなっている。 緑色の扉と銀色の取っ手。
「オーフィスターニャ様、ここでなにもしないと中へ入れないません……もし良かったら、私がドアを開けましょうか?」
そんな重い緊張の雰囲気の中、ミネルヴァだけは平然と、いつもみたいにオーフィスターニャに声を掛ける。
「そ、そうだな……みんな、開けるぞ?」
つばを飲み込んで、オーフィスターニャは後ろにいるみんなに聞く。 アルファーニたちは無言で頷く。
覚悟を決めて、オーフィスターニャはドアを開ける。
「遅い!!」
ドアはまだ隙間すら開けないうちに、いきなり中から怒鳴り声があげる。
「す、すみません!!」
そして反射的に、オーフィスターニャたちは一斉に教室の中に入り、同時頭をさげて謝る。
「もういい、頭をあげろ。 早く席につけ」
「あれ? この声って……えええ?! なんで母さんがここに?!」
オーフィスターニャの耳に、どうしても聞き覚えの声で、彼女は気になってチラリと見た瞬間、表情が固まった。
そして教室にいた生徒たちは、オーフィスターニャの一言で注目された。
「「母さん」ってもしかしてあの子はトワベールカ様の娘?」
「あのトワベールカ様の?!」
生徒たち揃ってざわざわと呟く。
「何驚いてるんだ? 早く自分の席につけ、ホームルームを始めるぞ」
対してイファスティは真面目に授業を始めようとしていた。
「オーフィスターニャ・トワベールカ……」
「何?」
アルファーニこっそりとオーフィスターニャの耳元で彼女を呼ぶ。
「トワベールカ様は一体どうやって私たちより早くこの教室に来たの?」
「えっと……たぶん母さんは唯一魔法を使ったと思う。 それなら説明がつく」
「なるほど……トワベールカ様の唯一魔法・加速『静寂疾走』ならば確かにそうかもね……」
こそこそ喋ってるところがバレバレで、内容はすべてイファスティの長い耳に聞こえていた。
「お前ら……そんなに初日から罰が欲しい? 嫌ならさっさと席につけっ!」
イファスティは怒りを抑えて、笑わない表情でオーフィスターニャとアルファーニに話す。
彼女たち揃って嫌な予感がして、直ぐに「はい」と言って、イファスティが指名したそれぞれの席に座った。
「では、これより一年二班のホームルームを始めようと思う、準備はいい?」
教室の生徒はイファスティを見つめて頷く。
イファスティは手元にあった手帳と書類を机の上に叩いて、みんなに挨拶する。
「よし、じゃあまず、自己紹介しよう。 あたしから始める……あたしはこの一年二班の担任教師のイファスティ・トワベールカ、実践練習と基礎鍛錬を担当する」
イファスティは簡潔に自分の学園にいる間の役目を説明する。
しかし大半の生徒は何故かイファスティをキラキラな目で見つめていた。
「えっと……じゃあ次!」
「あ、はい!」
イファスティは指名したのは、右の一番手前にいるアルファーニ。 彼女も緊張して、思わず大声を叫んで席から力強く立ち上がる。 そして横になって、みんなに彼女の凛々しい姿を正面から見せる。
「はじめまして、私の名前はアルファーニ・シュテルンヌンです。 得意な魔法は氷属性魔法。 この学園に入学したのは目指す目標があるから、それは……精霊大将に成ること!」
自信で満ちたアルファーニの顔はすべて物語っていた。 迷いの無い、覚悟を決めた表情で、クラスのみんなは見とれていた。
そのまま数秒の静かさやは続く、そうして――、
パチパチパチ……。
ミネルヴァは微笑んで、最初に拍手を始める。 続いてオーフィスターニャとエレオノーラは拍手する、まるで音が他の生徒を移されたみたいに、徐々にみんなが拍手する。
「……ありがとうございます!」
感動したアルファーニは目を大きく開けて、嬉しすぎて口の形が笑うのを堪えて、感謝しながら頭をさげる。
その間、イファスティはアルファーニの姿を見て、思わず微笑んだ。
「(ウルスラ、お前の娘……本当にお前とそっくりだなぁ……)」
感動したアルファーニの後、彼女は座る。 続いて彼女の後ろにいる黒髪のツインテールの生徒が立つ。
「あ、ええと……は、はじめまして! あたしはレスター・ヴァニーシュ(Leicester・Vanish)とお申します……。 得意な魔法は無いけど、実家の代々伝わる魔法なら使います……よ、よろしくお願いします……」
レスターはおどおどで自己紹介をして、ペコリと頭をさげる。 彼女は緊張過ぎて顔は真っ赤になっていた。
生徒たちは拍手して、次の生徒が立つ。
赤い髪の毛に幾つの緑色のメッシュ、髪は肩まで伸びてる。 そして彼女の頭上に、一本の髪の毛が少し曲がった状態で立っていた。
少女はニヤリと笑う。
「次は私! フィーリア・リヘル(Philia・Rehell)だ! 風属性魔法は得意、主にサポートと回復魔法だ、よろしくっ!」
フィーリアは堂々と、豪快に自己紹介した。 それを聞いた他の連中は思わず同じことを考える。
「(強そうな外見なのに、意外な一面!)」
こうして残りの六名の生徒が、エレオノーラとミネルヴァを含めて、自己紹介を終わった後、最後にオーフィスターニャの番がやって来た。
「最後の、どうぞ。 簡単な自己紹介を」
「はい!(うわぁー、改めて知らない同級生の前で自己紹介するだなんて……恥ずかしい!! と言うか、このクラスの生徒、少なっ! ワタシを含めて、たったの十名! この広い教室の中、たった十名の生徒が使っていいの?)」
「おい、どうした? 早く自己紹介しろっ!」
急に黙り込んだオーフィスターニャに、イファスティは大声で彼女を呼ぶ。
「あ、はい! ワタシはオーフィスターニャ・トワベールカ。 得意な魔法は無い、全て平均以上。 そしてワタシの目標はたった一つ、至ってごく普通の目標、それは……精霊大将に成る! つまり、母さんを超える……! あ痛っ!」
オーフィスターニャが自己紹介を終わった直後、いきなりチョークが飛んできて、彼女の額に直撃した。
「タワケ! 学園にいる間、あたしのことを「教官」と呼べ!」
イファスティはいつも通りの態度で話す。 しかし周りの生徒たちは威圧を感じる、そして勝手にさっきの行為に尊敬する。
「へいへい、トワベールカ教官さま……いったっ! なんでまたワタシにチョークで?!」
半端な態度で返事するオーフィスターニャはまたしてもチョークが額に当たった。
「お前の態度がむかつ……こほん、お前が悪い態度を取ったからなんだ、自業自得」
「さっき、別の理由で言おうとしなかったか?」
イファスティが話の途中に言い方を変えたことに気付いたオーフィスターニャが疑わしい目で彼女の母を見詰める。
「さて、じゃあ先にクラス委員長を決めましょう!」
「おい! エルフの話を聞けぃ!」
オーフィスターニャは大声で文句を言った。
こうして、オーフィスターニャの学校生活が始めようとしていた。
しかし彼女たちが授業をしてる間、既に闇の中、ある脅威が密かに迫ってくること、彼女たちはこの時、まだ知らなかった。




