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門出

前回のあらすじ


村長親子を誘惑しました。ちょろいです。

 数日後、村長が死んだ。原因は不明だが、状況からして毒を盛られた可能性が高い。

 無論、やったのはテザーだ。

 酌を取る際、日に日に毒の量を増やしていた。毒の入手先は、村の薬屋。毒矢に使うと言ったら、あっさり売ってくれた。

 揃いも揃って簡単に騙されてくれるので、スムーズに事が進む。

 息子は父を亡くして思ったよりも悲しんでいたので、身体で慰めてやった。初めての夜に感じた愛しさは、もう欠片も残っていない。あれは、一時の気の迷いだったのだろうか。

 その日から、息子は従順になった。

 最早彼は、テザーの傀儡だ。

 関係さえ続けてやれば、彼はいくらでもテザーの言うことを聞く。税の導入、工房への援助、依頼の斡旋、馬車の手配……。どこまでも都合のいい結果に、つい表情が緩む。

 だが、いくら間抜けな村民を相手にしていても、そこまですると流石にバレるらしい。村が貧しくなっていくにつれ、徐々に、テザーへの不信感が強まっていった。村長が死んでから二ヶ月もしない内の事だった。

 だが、もういい。金は稼いだので、この村はもう用済みだ。

 ある満月の夜、テザーはこっそりと村を出た。稼いだ資金と私物を馬車に載せ、一人夜道を進む。

 これからジーマ村がどうなるかは、テザーの知ったことではない。

 次の目的地は、大都市だ。聞いた話によれば、ここから東に数日進んだところに、都市の入り口があるらしい。関所が必要なほどの大都市なのだから、さぞ金や人が集まっていることだろう。

 テザーの快進撃は、まだまだ終わらない。



 センチラル――海沿いで発展した、典型的な商業都市だ。毎日沢山の船が出入りし、様々な土地の文化が入り乱れている。

 住宅街と商店街が隣り合っており、住民は商店街に行くだけで欲しいものが全て揃えられた。ジーマ村では調味料や一部の食材は行商人に頼らないと手に入れることができなかったので、比べるまでもなく優良な土地だ。娯楽も、風俗だけではない。賭博場の他、広場で芸をして日銭を稼いでいる者がいて、それを見ていると思ったよりも時間が潰れる。

 引っ越してきて正解だった。

 馬車と交換で、住居を確保する。次は仕事だ。

 ミラーフォードに来て、三ヶ月。まだこの世界の相場が掴みきれていない。急に商売を始めるのは、得策ではないだろう。

 結局ジーマ村は商売をする前に食いつぶしてしまったが、ここならそう簡単に潰れることはない。まずは傭兵をやりながら、この世界の相場を見極める。

 そのためには、まず傭兵ギルドに向かわねばなるまい。

「ギルドの場所を教えてくれ」

 適当な男に声をかけ、ギルドの場所を聞く。

「ほう……。そうだな、いいぞ。ついてこい」

 男はテザーに舐めるような視線を向けてから、笑みを浮かべて承諾した。

 怪しい。



 案の定、連れて来られたのは路地裏だった。治安の悪い都市である。

 どこから現れたのか、男は三人に増えていた。

「悪く思うなよ……そんな格好で出歩いてるのが悪いんだ」

 そんな格好――と言うのは、ビキニアーマーのことだろう。ジーマからセンチラルまでの道中で何度か賊との戦闘があったので、ビキニアーマーのままだったのだ。

 ジーマではこんな格好でも問題なかったが、どうやらセンチラルでは問題になるらしい。確かに、町中でビキニアーマーを着ている人間はほとんど居なかった。

 どうやら、地域によってその辺りにも格差があるらしい。

 一つ勉強になった。

 勉強になったので、この男共は半殺しで済ませてやる。



 路地を抜けたところで親切な男性に会い、無事にギルドの場所を教わることができた。

 街のほぼ中心部。大通りが交差するすぐ近くに、ギルドは構えられている。

 そのような人通りの多い立地にあるということは、依頼の数が多いということだろう。

 早速ギルドへと向かう。大きな街だ。中心部へ向かうだけなのに、思ったよりも時間がかかった。

 街の大きさに負けず劣らず、ギルドも立派な建物だった。

 外壁には、今一押しの依頼が貼りだされているようだ。ざっと眺めて、傾向を探る。

 一番多いのが、商人の護衛だった。一番多いどころか、全体の八割を占めている。

 その内容は多種多様。明らかに報酬が足りない依頼もあれば、福利厚生までしっかりした依頼もある。

 テザーはその中で、一番報酬が高いものを選んだ。

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