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炎の宴

前回のあらすじ


ノーパンで盗賊の砦に襲撃したら捕まってしまいました。ピンチ。

「この女、パンツ穿いてねえぞ!」

「こりゃあとんだ淫売だ」

 衆目の中、テザーは拘束され、前垂れを捲られていた。

 ざっと見たところ、盗賊は全部で二十人程度。その内、テザーよりも力が強そうなのは五人程だ。少々分が悪い。

 腕力で敵わないなら、知力を駆使するしか無いだろう。ここには、権力がないのだから。

 部屋の中を眺め、使えそうなものを探す。机、石壁、娼婦、料理――男たちの熱気で上がった室温、大量の酒と、松明。これは使える。

 まずは、相手を油断させなければならない。

 こんな状況で、更に相手の気を緩めるのに有効な台詞は……?

「くっ……殺せ」

 これしかないだろう。

 こちらの無力さを示すことで相手を増長させ、かつ適度に反抗的な態度を取ることで征服欲を煽る。欲に支配された人間は、実にシンプルに動いた。

「ノーパンのくせにこんなこと言ってるぜ!」

「犯すしか無いよなあ!?」

 群衆は勝手に盛り上がっている。

 そうだ、それでいい。

「誰が最初にヤる?」

「やっぱドンだろ」

「俺はヤク漬け中古穴が好きだから最後にしよう」

「さっすがドン! 話がわかるぅ!」

「じゃあ、最初に見つけた俺が!」

「嘘吐くなよ!」

 言い争いになり、彼らの意識がテザーからわずかに逸れた。ここで首領が譲っていなくても、首領の次に誰がヤるかで言い争いになっていただろう。

 盗賊なんかをやっているお粗末な脳みそなら、こうなるのは明白だった。

 その大きな隙を見計らい、テザーは自力で縄を断ち切る。この程度の強度では、拘束にすらなっていない。

 テザーの動きに気づいたのは一部。その一部が騒ぐよりも早く、テザーは手近なテーブルの酒瓶を手当たり次第に放り投げた。アルコールの臭いが非常に強い。とても度数の高いものを飲んでいたのだろう。

 元の世界で飲む機会は多かったので、テザーは酒に強い。が、ここまでアルコールの臭いが強いと、少しだけ頭が痛くなった。

 次第に歪み始める視界に耐えつつ、次は松明を倒す。

 散々ばら撒いたアルコールに、松明の火が引火した。

 温度の高いこの部屋では、すぐにアルコールが充満する。その間にもテザーは酒瓶を割り松明を倒し、火の手を急速に広げていく。

 逃げる間もなく、部屋は炎に包まれた。



 巨大な炎は、すぐに部屋中の酸素を使い切った。

 黒焦げになった盗賊や娼婦の成れの果て。火の手を逃れた者も、酸欠で苦しんでいる。

 一方のテザーは、無傷だった。

 ただ、ビキニアーマーは焦げていた。肩紐は片方が焼け焦げ、前垂れはボロボロだ。革のカバンは、中身ごと使い物にならなくなっていた。隠すべき場所は七割隠れているので、きっと大丈夫。

 酸欠も起こしていない。

 酸素が薄いのは感じ取れる。だが、息苦しさはない。うつ伏せに寝た時の息苦しさは、酸素不足とは無関係だったのだろう。

 煤けた床を見渡す。あれだけいた盗賊が、一網打尽だ。テザーが不死身でなければ使えない荒業だが、効果は絶大だった。

 後は、首領を確保して持ち帰るだけだ。

 だが、どれが首領の死体なのかはイマイチよくわからなかった。

 装飾品の豪華さから、首領らしい存在を探る。

 と、床に一本の剣が落ちていた。

 柄は焼け焦げて使い物にならなかったが、刃の部分は生きている。これは確か、テザーが買った剣だ。

 盗賊が使っていたと思われる他の武器は、どれも折れたり焦げたりしている。この剣は、本当にいいものらしい。

 拾った剣を、かろうじてまだ使える鞘に刺す。この依頼の報酬で、直してもらおう。

 幸いな事に、首領らしき人物は原型を留めていた。死因は、酸欠だろう。

 死体を肩に抱え、テザーは盗賊団の砦を後にした。

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