ミラーフォード・レポート
前回のあらすじ
世界は何も変わりませんでした。
ミラーフォード
新宇宙作成装置 『ガターマシン』 内に広がる世界の、現実世界 (ミラーフォードは紛れもない現実の異世界だが、便宜上こう呼ばれ区別されている) における名称。
正式名称『ミラー・フォー・ワールド』
調整を担当したヴィル・ミラーから取られている。ヴィル・ミラーが四番目に調整した世界。
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ガターマシンに共通する仕様として、現実世界から移り住んだ人間が有利な肉体を手に入れるというものがある。
これは異世界へと転生する際に現実世界側から干渉を行うことで、世界の仕様を書き換えるという方式をとっている。
そのシステムを埋め込むにあたり、現実世界とはいくつか違いが現れている。これもガターマシンに共通する仕様である。
ミラーフォードにおける現実世界との代表的な違いは、人間の性染色体の仕様だ。
現実世界の人間は、X染色体とY染色体で性別が決定されている。だが、ミラーフォードではその他にX-染色体というものがある。
これにより、ミラーフォードでの性決定は、XX-の染色体を持つ個体が男で、XY染色体を持つ個体が女、ということになる。
現実世界から転生を行う際、転生を行う個体のデータは元の世界の仕様のままなので、仕様の違いによって個体の特徴が変わることは珍しくない。
手沢秀平は現実世界からXYの染色体を持ち込んだので、ミラーフォードでは女のテザー・シュベーヘンとなったのだ。
因みに、XX染色体を持つ個体がミラーフォードに行くとどうなるのかは、まだわかっていない。
他には、時間の流れが違う、というものがある。
これはテザーが四十八歳から二十四歳まで若返ったことから、ミラーフォードは現実世界の半分の早さで時間が流れていると推測されている。
また、現実世界の歴史とミラーフォードの歴史は、大きく異なっている。
これはシステムを埋め込む際の干渉とは無関係である。単に最初に生まれた大陸の形状の違いや、大気の組成の違い、生まれた人間の違いなどから生じたものである。
銃の開発が現実世界より大幅に遅れているのも、このためである。
他の大きな違いとして、都市が事実上の国家としての役割を果たしている、というのもある。
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転生が完了したガターマシンは、国連の最重要機密として厳重に取り扱われるので、世界崩壊の心配はない。
不死者となった転生者は、永遠に滅ばない世界の中で、悠久の時を過ごす。




