それから
前回のあらすじ
紆余曲折あって、親切なおじさんのハーレムに加わることができました。めでたしめでたし。
敏腕起業家テザーは、ある日突然その姿をくらませた。
失踪から数年が経った現在でも、未だ行方はわかっていない。
力を持ちすぎた人間は、敵視される傾向にある。金持ちは、恨みを買う。だからきっと、誰かに殺されたのだろう。
世間は、そう判断した。
実際、彼女に恨みを持つ人間は多い。テザーの捜索が早々に打ち切られたのは、そのためだろう。
テザーが消えた世界は、それまでと大して変わらなかった。
富を貪る者が消えて市井が豊かになると考えた者も、支配者が消えて秩序が崩壊すると考えた者もいた。だが、実際は変わらない。
富を貪っていたのはテザーだけではないし、陰の支配者が消えたところで秩序が崩壊することはない。
なにも、変わらないのだ。
この世界――ミラーフォードで、人々は、今日も変わらず営みを続ける。
数多の思惑が入り混じり、時には乱れ、時には潤う。テザーが居なくても戦は起こるし、誰かが船を作っただろう。
人一人が何をしたところで、変わるものなど微々たるもの。
誰が居たから世界が滅ぶなんてことはないし、誰のおかげで世界が回るということもない。
全ては、なるべくしてなるものだ。
fin




