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陰の末路
前回のあらすじ
恋の病にかかりました。治療不可です。
テザーは、路地裏に捨てられていた。
その身を包むのは、純白のドレスではなく、白濁。
捨てられてから、ニ、三日は経っているだろう。朦朧とする意識の中、テザーは靄の掛かった視界で辺りを見回す。
愛しい浮浪者は、どこへ行ってしまったのか。
また失ってしまったのだろうか。
果てしない悲しみに襲われる。
と、そこへ不意に手が差し伸べられた。
タキシードに身を包んだ、中年の紳士だ。
「いかがなされましたか、お嬢さん」
「……」
優しげに細められた瞳が、眼鏡越しにのぞく。整えられた白いヒゲは、どこか可愛げを醸し出していた。
「――いて……」
「?」
「抱いて……ください……」
※
紳士の屋敷に、テザーは居た。
彼の沢山の恋人の中の一人として。
あと少しで、テザーの順番が回ってくる。
三日ぶりの夜伽だ。
彼の太い腕を思い出すたびに、胸が高鳴る。
恋は盲目。
テザーの瞳には、何も映っていなかった。




