薬の効果
前回のあらすじ
やることないので惚れ薬に手を出しました。
早速薬を飲み、一番高い男娼を呼んだ。
「ご指名ありがとうございます」
男娼は切れ長の瞳を閉じ、頭を下げる。その仕草に、ドキリとした。
ああ、確かに。
かつて感じた恋のときめきは、こんな感じだったかもしれない。
だが今は、そんなことはどうでもよかった。
少しでも早く、目の前の男娼を受け入れたい。
テザーは、頭を上げた男娼の肩を抱き寄せ、唇を重ねた。舌を深く絡ませるディープキス。
思考に靄がかかっていく。
「このドレス、似合うかな?」
身を包む純白のドレス。特別に仕立てたそれの裾を持ち上げ、テザーは訊ねる。
「ええ、とても似合っています」
その言葉が、とても嬉しかった。
早く、早く。
彼を受け入れたい。
切れ長の瞳から続く、鼻筋のライン。白い肌。形の良い顎。広い胸板に、大きな手。
この男娼の全てが愛おしい。
なぜ今まで恋をしてこなかったのか。
そんなことを考えてしまうほどの快楽が、テザーの身を包んだ。
脳が溶けるような、体の奥が灼けるような、今までに感じたことのない快楽。
愛する男娼と溶け合っていくような錯覚が、テザーを襲う。
この時間が、永遠に続けばいいのに。
※
三日後。
男娼が死んでしまった。
死因は不明だが、脳内出血とみられている。所謂、腹上死というやつだ。
愛し合っていた男娼が動かなくなった時、テザーは世界が終わったかのような錯覚に陥った。
全てを手に入れたはずなのに、この男娼はもう戻ってこない。まるで全てを失ったかのような悲しみが、テザーを襲う。
ああ、もうお終いだ。
失意のどん底で座り込んでいると、新たな手が差し伸べられた。
男娼の死亡確認を行った医者だ。
いつまでも落ち込んでいるテザーを心配して、声をかけてくれたらしい。
恋に落ちる音がした。




