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薬の効果

前回のあらすじ


やることないので惚れ薬に手を出しました。

 早速薬を飲み、一番高い男娼を呼んだ。

「ご指名ありがとうございます」

 男娼は切れ長の瞳を閉じ、頭を下げる。その仕草に、ドキリとした。

 ああ、確かに。

 かつて感じた恋のときめきは、こんな感じだったかもしれない。

 だが今は、そんなことはどうでもよかった。

 少しでも早く、目の前の男娼を受け入れたい。

 テザーは、頭を上げた男娼の肩を抱き寄せ、唇を重ねた。舌を深く絡ませるディープキス。

 思考に靄がかかっていく。

「このドレス、似合うかな?」

 身を包む純白のドレス。特別に仕立てたそれの裾を持ち上げ、テザーは訊ねる。

「ええ、とても似合っています」

 その言葉が、とても嬉しかった。

 早く、早く。

 彼を受け入れたい。

 切れ長の瞳から続く、鼻筋のライン。白い肌。形の良い顎。広い胸板に、大きな手。

 この男娼の全てが愛おしい。



 なぜ今まで恋をしてこなかったのか。

 そんなことを考えてしまうほどの快楽が、テザーの身を包んだ。

 脳が溶けるような、体の奥が灼けるような、今までに感じたことのない快楽。

 愛する男娼と溶け合っていくような錯覚が、テザーを襲う。

 この時間が、永遠に続けばいいのに。



 三日後。

 男娼が死んでしまった。

 死因は不明だが、脳内出血とみられている。所謂、腹上死というやつだ。

 愛し合っていた男娼が動かなくなった時、テザーは世界が終わったかのような錯覚に陥った。

 全てを手に入れたはずなのに、この男娼はもう戻ってこない。まるで全てを失ったかのような悲しみが、テザーを襲う。

 ああ、もうお終いだ。



 失意のどん底で座り込んでいると、新たな手が差し伸べられた。

 男娼の死亡確認を行った医者だ。

 いつまでも落ち込んでいるテザーを心配して、声をかけてくれたらしい。

 恋に落ちる音がした。

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