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戦争商戦

前回のあらすじ


死の商人、始めました。

 全ては滞ることなく、起きるべくして戦は起きた。

 この戦は、起きて然るべき。民はそう "思い込んで" いる。全ては武器商人の掌の上とも知らず、隣国と睨み合い、殺しあう。

 オリエンゲートの戦力は、センチラルの支援も合わせ、ヴァーンガードに負けず劣らずのレベルにまで引き上げてやった。両者の戦力は拮抗している。戦はしばらく続くだろう。

 この商売の要は、どれだけ戦を長引かせることができるか……だ。

 武器の販売や傭兵の流入などを用いて、戦の流れをコントロールする。泥沼に深く嵌まればそれだけ長く武器を売ることができ、儲けも大きくなった。

 逆に、早期に戦が終結してしまえば、戦後特有の反戦ムードも相まって、しばらく食い扶持を失ってしまう。

 ゲーム的な言い方をするならば、戦は時間制限付きのボーナスタイムだ。フィーバーモードとも言う。

 今回は規模が大きいので、反戦派の動きにも気を配らなければならない。油断していると、唐突に和平の話が持ち上がったりもする。

 逆にあまり気にしなくていいのが、各都市の財政事情だ。そもそもこの三都市は貯蓄が潤沢であるし、加えて各都市の武器商人も税を納める。人員さえ他所から確保できれば、十年ぐらい戦を続けることも、できるかもしれない。

 後は、あまり一般市民が死にすぎると反戦ムードが漂ってくるので、あまり市井に被害が出ないように調整するぐらいだろうか。殺すのは兵士にしてから、が原則だ。

 戦局を見て、他の商人と相談しつつ武器を売る。それがこの戦の裏で行われている、死の商人の企みだった。

 ただ武器だけだと物足りないので、テザーは他にも新たな産業に手を付ける予定だ。

 今考えているのは、造船事業である。

 この間の航海でも体験した通り、センチラルとオリエンゲートを結ぶ航路は片道でも一ヶ月近くかかる。これでは、変化する戦局にセンチラルは対応しきれない。

 そこで、テザーは新たな船を設計する。

 具体的に言うと、エンジンの改良だ。

 現在のミラーフォードで使われているエンジンは、熱効率の悪い旧式 (ミラーフォードでは最新式だが、元居た世界では博物館でしか見かけないレベル) だ。これを改良することで、力強くかつ速い船を作る。

 テザーが元居た世界で買収した企業には、エンジンを取り扱っている企業もあった。知識なら蓄えてある。ただしミラーフォードの技術レベルもあるので、元居た世界の最新式エンジンのようなものは作れない。

 それでも、効果は絶大だ。

 ざっと計算したところ、エンジンを改良することで、センチラル・オリエンゲート間の航路は十五日前後まで短縮できる。

 それをセンチラル・オリエンゲート両都市に売りつければ、大きな利益が出るだろう。

 他にもいろいろ考えているが、案外元居た世界の知識を生かすのは難しかった。

 最初に考えたのは銃だが、これは既に先駆者が何人も居る。居るのだが、ミラーフォードの精錬技術では実用レベルのものを作ることができないらしい。

 無理のない量の火薬では威力が出ないし、火薬を増やすと銃身がすぐに壊れる。加工技術の関係もあり、大砲サイズなら作ることができるのだが、個人が携行できるサイズでは厳しいようだ。

 それ故、ミラーフォードでは未だに剣槍斧や弓などの武器が主流だった。これは、元居た世界とは大きく異なる点だ。

 後は、医療品の類だろうか。

 戦となれば、当然負傷者が多数出る。医療品の需要は上がるだろう。

 これについては知識がないので、特に捻ったことはせず普通に仕入れて売るだけにした。



 船の設計は、思ったよりも難航した。

 最初は単純にエンジンを改良すればいいとだけ思っていたが、実際に改良してみると、本体が耐えられないという問題が生じた。一隻沈んだのはなかなか痛い。貯蓄がなければ死んでいた。

 しかし、諦めたらこれまで掛けた金が無駄になる。成功した暁に控える莫大な利益は見えているので、コンコルドの誤りにはならないだろう。

 新しい本体の設計をするために、資料を読み漁る。

 ここでまた問題が生じた。元居た世界では潤沢な資料があったのだが、ミラーフォードの未熟な技術ではまだまだ資料が少なく、あまり頼りにならない。少ない知識の中、本体の設計は困難を極めた。



 結局、完成までには丸一年かかってしまった。

 幸い、戦は未だに続いている。更に現在オリエンゲートが劣勢なので、新型船は大きな利益をもたらした。

 これなら、他の都市にも売れそうである。技術力の乏しい新興都市でも見繕って、足元見ながら売りつけてやろう。

 新型船で生じた利益は、本体だけにとどまらない。

 この船の投入で、オリエンゲートはセンチラルの支援を受けやすくなり、逆転。今度はヴァーンガードが劣勢に立たされたので、そちらで武器や医療品が飛ぶように売れた。

 更に、新型船のために開発した 『テザー式エンジン』 だが、既存のものを遥かに凌ぐ性能のため、単体でも需要があったのだ。

 製造が追いつかないレベルで売れていて、今や武器よりも大きな利益を叩き出している。

 特許の概念があればもう少し楽に稼げたのだが、残念ながらミラーフォードに特許はない。技術を独占し、値段を吊り上げるしかなかった。

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