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平穏の中の追憶・Ⅱ

大陸『イデア』

その中央に、王都『セント・エストリア』がある

三十年前の戦いなど微塵も思わせない、白亜の美しい街だ

そこに、揃いの濃紺の制服を着た一行が大通りを歩いていた


「隊長!我々は、いつ頃目的地に到着しますか!?」


先頭にいた少年が、前方を歩いている青年に尋ねた

見れば、その集団には疲労の色が目立つ

青年は立ち止まり、後ろの少年を振り返った

柔和な笑みを浮かべ、口を開く


「ああ、このままの速度だったらあと二時間はかかる。だが、“全速力”で行けば三十分もかからないだろうが……どうする?」


その言葉に、並んでいた少年少女はざわめきだす

ある者は急かし、ある者は躊躇し、またある者は悩む

その中に、『カイト・アディール・ド・ツヴァン』がいた

他の生徒と同じ制服に身を包み、腕に深紅のリボンを結んでいる


「さっさと行こうぜ。どうせ、今日ここまで大した“気力”も使ってないしよ。なぁ、グレフ?」


両腕を後頭部に回し、隣にいる友人に話しかける

彼の特徴的な艶のある黒髪が風になびき、陽光に碧玉の瞳が煌めく


「おうおう、カイトよ。気力使ってないったって、かれこれ五時間も歩いてるんだぜ?」


カイトの友人、『グレフリック・マティナリン・ド・フィアーレ』は溜め息を吐きながら言った

同時にそのライトブラウンの髪が顔に垂れる

漆黒の瞳が、無言で疲労を訴えていた


「もうへばったのかよ。だっらしねーな」


カイトは出発の時と全く変わらない足取りで、さらにグレフリックの荷物まで持っている


「俺は早く行きたいんだよ。……フィレアに会いたいからな」

「あん?誰に会いたいって!?」


カイトの呟きを聞いたグレフリックが、カイトに詰め寄る

肝心の名前が聞き取れなかったらしい


「教えねーよ。俺に荷物持たせやがって…」

「ちぇっ、いいじゃねぇかよぉ」


グレフリックが懇願してもカイトは聞き入れなかった



空を仰ぎ、大小二つの太陽を睨む

深海の瞳に、それが映る

同時に、脳内に流れる一つの記憶

ある日交わした、大切な誓い

今もなお変わらない、少女への思い

誓いを告げた少女は、太陽と同じ瞳を持っていた


『フィレア、大好きだよ―――』



そのうち、隊が一時停止し、隊長の声が彼らの耳に届いた


「これより、気力を解放して一気に駆け抜ける!合図と同時に走れ!」

「うへぇ、本気かよ」

「よっしゃ!隊長解ってるなぁ!」 


グレフリックは呆れ、カイトは喜色を露にする

隊長の言葉に、生徒達は一斉に、それでいて渋々と姿勢を低くした

所謂、クラウチングスタートである


「あ、一番だった奴は成績評価上げてやるよ」


隊長の一言に、全員の目が光を帯びた

何か獲物を狙うような、殺気さえも感じられる

あれほど嫌がっていたグレフリックも、その言葉を聞いた途端、「早く行こうぜ!」と言い出す始末である


「位置について…」


彼らの身体が光を発する

人によって色や光の強さが異なり、また形を持って動いている光もある

その光は殆どが脚部に集中している


「それじゃ……始めっ!」


隊長が手を降り下ろした瞬間、生徒達が地を蹴り、姿を消した




目指すは、学都『ウエステリア』―――『王立魔導士養成学園』





続く…

この世界には太陽が二つあるんですねー

暑そうな、眩しそうな、日焼けがヤバそうな…


やっと本作の主人公、カイト君の登場です

ついでに友人のグレフリック

次回は、カイト視点でのお話になるかと思います

彼女との再会ですね

どうか次回もお楽しみに!


あ、プロローグと第一話を加筆修正しました

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