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平穏の中の追憶・Ⅰ

長く不毛な戦いから早三十年

人々は平和を手にいれ、平穏で豊かな生活を謳歌していた




「リレカ・トリスト・フール・アフレリナ―――……」


昼下がり、教室らしき所で1人の少女が何かを唱えていた

少女の手には杖と思わしき棒が握られ、先端部が仄かに光を帯びている

周りには、幾人もの生徒が机につき、少女を見ている

少女と生徒達の視線の先には、小さな緑色のトカゲが瓶の中にいた


「―――スール・フィルト・スレイブ!」


少女が叫び、杖を瓶に向けた瞬間、緑色のトカゲが赤く燃え上がった

生徒達も立ち上がり、燃えるトカゲを見る

最初はもがいていたトカゲも、ものの数秒後に炎の中に掻き消えた

教師然とした男性が二回手を叩くと炎が消え、生徒達も一斉に席に戻った


「はい。これが“発火”の呪文ですね。基本的な魔術ですが、生命体に“発火”を使うのは難しいので、しっかり練習しましょう。応用次第で攻撃型呪文にも出来るので、しっかりマスターしてください。アポロニカさん、ありがとうございました」


アポロニカと呼ばれた少女は、小さく礼をして席についた

それを見計らって、教師が授業を再開した


「次に、この魔法は―――……」




ここは『王立魔導士養成学園高等学部』

魔導士の卵達が通う、世界で最も大きい魔導士養成学園である




「ね、フィレア!今日この学園に守護騎士見習いが来るんだって~!」


授業が終わり放課後になると、フィレアと呼ばれた少女の元に碧眼に金髪の少女が近寄って来た

彼女の名前は『スーニャ・フリウール・フォン・ドリトニア』

通称、『風雨のスーニャ』である


「ねぇ、フィレア。フィレア・アポロニカ!」

「あっ、スーニャ?」


フィレアは少し驚いた様子でスーニャを見上げる

どうやら呼び掛けに気付いていなかったらしい


「もう、『煉獄のフィレア』!ボーッとしてるんじゃないわよ!」

「うっさいわねー。いいじゃない、少しくらい。ところで、何の用なの?」

「あぁ。今日、守護騎士見習いが来るんだって!それでさ―――」


スーニャは、瞳を夢見るように輝かせながら語り出す

いっぱい来るのかなー!とか、カッコいいと良いなーとか、色々言っている

フィレアは適当に相槌を打ち、窓から見える空を見上げる

彼女の緋色の瞳が、夕陽でさらに赤く染まる


唐突に、懐かしい記憶が甦る

それはもう、十二年も前の―――



『ぼく、カイト・アディール・ド・ツヴァンは、おおきくなったらしゅごきしになって、フィレアをまもることをちかいます』


『わたし、フィレア・アポロニカ・フォン・ドリトニアは、おおきくなったらまどうしになってカイトをまもることをちかいます』



これは、何年経っても色褪せず、輝いている記憶

幼い頃の、大切な誓い

小さい、けど確かな彼への思い


「カイト……」


フィレアは、知らず知らずのうちに呟いていた

地獄耳のスーニャがそれを聞き逃す訳がなかった

スーニャは、フィレアが逃げないように、首に腕を回す


「フィ、レ、ア~!『カイト』って誰?誰?ねぇねぇ!あ、もしかして……彼氏?」

「ふぇっ !?」


フィレアが驚いて逃げようとすると、スーニャが顔を近づけ、腕に力を入れて逃げ道を無くす

同時にスーニャの爆弾のような胸が迫り、フィレアを圧迫する

フィレアは焦り、なんとか逃れようとする

が、スーニャは放さない

ガッチリとホールドしている

しかし、そろそろ息がヤバい

いつの間にか、二人の周りに女子生徒が群がって聞き耳を立てていた


「さ、フィレア。吐きなさいっ!」

「むぎゅぅ~……。ループ・ネルゴ・シューリ・ア・グレイド!」


フィレアが杖を握り、呪文を唱え終えると、忽然と姿が消えた

“転移”の呪文である


「ちっ!どこに飛んだのかしら !?」


放課後の学園にスーニャの叫び声と、フィレアを探す多数の足音が響いた


フィレアは校舎の外に転移していた

校舎の中のスーニャ達を見て、次いで空を見上げ、疲れたように溜め息を吐く


沈みかけの夕陽が赤く空を染め上げ、世界を真っ赤な炎で包んでいた




続く…










スーニャとフィレアが同じドリトニアを名乗っている事に疑問を覚えた方がいると思うので、ここで説明します

例として、フィレア・アポロニカ・フォン・ドリトニア

と、あります

フィレア・アポロニカは名前と名字

フォン・ドリトニアは種族と家の階級を示しているのです

つまり、フィレアは種族はリリンのアポロニカ家の娘。ということになります

他にも、何か分からないことがあったら感想等でどうぞ

6月1日追記〉若干修正&書き足ししました

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