第7話
堕ちていく私。
夏休みに入る事には、互いの距離がゆっくりと近づきようやく会話も弾むようになり、日中の暑さがまだ残る夜風は暖かく、虫の鳴き声が聞こえる中、成司の家に呼ばれた私は、初めて男と裸で抱き合った。痛さよりもどうしたらいいのか分からず、ただただ目を瞑っている事しか出来なかった私だったが、成司は慣れた手付きで優しく私をリードしてくれた。初めて裸体を見られたことが恥ずかしくて、成司の裸も見れない私は、この体験を通して二人だけの秘密は愛しさを増し、ますます成司にはまっていった。
私は週末にはバイトを終えると、清香達が通っていたパチンコ屋へ向かう事が日課になっていた。清香と清香の彼と成司が同じ店でスロットをしている風景を少し離れた待合室でテレビを見ながら、たまに様子を伺うぐらいで、私は一人のけものにされたような孤独感の中、いつも終わるのをただ待っていた。閉店の時間になると2組に分かれて近くのホテルに泊まりに行くことが毎週末続くようになった。次第に体だけの付き合いなのではと疑うほど、デートらしいデートをすることなく、煙草の煙が充満した大音量の音楽が流れる中で過ごす日々もだんだん苦痛になってきた。相変わらず学校ではほとんど話すこともなかった私達は、クラスメートからも付き合っているように見られていなかった。クラスの中でも一際目立っていた水井とぶーちゃんはいつも騒がしく、冗談を言っては大声で笑ったり、狭い教室で追いかけっこをしたり、とにかく騒々しくうるさい連中だったが、水井は誰とでも人懐っこく話すことが出来ることから、にくめない奴だった。たまに女言葉を使い、上目使いでお願いことを頼んできたり、面倒な役割を勝手でたり、とにかくお調子者でクラスでは男子女子共に仲良く出来る奴だった。成司とはまったくな正反対な性格だったので、時折ガヤガヤしながら馬鹿話も楽しいなと思いながら水井とは結構気が合うことが多かった。
学校では水井と話し、学校以外では成司と話す私は、いつしか成司との関係に飽きてきてしまったのかもしれない。成司が水井と仲良く話している私をどんな目でクラスで見ているのか気にもせず、しょうもない話で盛り上がっている私達はどう見えてたのだろうか。そんないつもふざけている水井が真面目に悩みを打ち明けてきた。
「どうしたらいいかな。やばいんだよね」
「何が?何かあったの?」
「彼女がね。他にも男がいるみたいなんだよ」
「・・・・」
「それもね。数名・・・・」
水井は笑顔で言うが、私と香織、沙織は眉間にシワを寄せながら、
「はあ??」
と声を揃えて水井に言った。
水井はバイト先の年上の女性と付き合っていることは聞いていたので知っていた。彼女はそうとうあっちが好きらしく水井はそれに答える為にかなり勉強していると自慢をしていた。元々成績が良かった水井だったので、その努力を学業に向けていればそれなりの成績が出せるぐらい熱心に行ったんだろうと、聞いていてあきれたくらいだ。
それを知っている香織も、
「しょうがないよね。水井じゃ満足しないんじゃない?」
「そうかな。かなり頑張っているんだけど・・・・この間も」
水井は得意気に何回いかせたのになど詳細に話そうとするので、私はさえぎるように、
「そうじゃなくて、一人じゃ物足りない人なのではない?」
「う・・んん。そうかも!」
「じゃあ、仕方がないのでは?」
「・・・・そうかな」
「かなり好きものなんでしょ」
「そうなんだよ。でも俺も結構マジだから、つらいんだよ」
初めはお互いに体の関係を維持していたらしいが、そのうちに水井もそれだけじゃなくなってしまったということらしい。今更この関係を崩すことも出来ないし、言えば会いづらくなるのが分かっているから、何人男が居てもそれも言えないらしい。