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第6話

過去を思う私。

 とりあえず、バイトを終え多少なりともかいた汗を洗い流すと、備え付けのバスローブに身を包んだ。濡れた髪のまま顔を覆い隠すように室内へ入ると、

「お先に・・・・」

 バスローブからはみ出てしまいそうな胸元を押さえ、ベットを見ると、暗闇の中煙草の白い煙と赤い火が見えた。私は何処に座ろうか居場所を探したが見当たらずその場で立ちすくんだ。煙草をもみ消し上着のジャケットを脱ぎ出しこちらに側に歩いてくる彼を、すっと道を開けベット脇に腰を掛けた。シャワーの水がタイルにはじく音が聞こえると、このままやはり逃げてしまおうかと頭をかかえながら迷っていた。何分たっただろうか、そのまま考え込んでいた私は、長くもあり短い時間だった。色違いのバスローブを着た彼はダブルベットの中央に横になると、ベットの片隅で体を小さく丸めて座っている私に手で合図を送った。


 私はその合図に従い布団をめくり彼から少し離れ仰向けになった。布団の端をぎゅっとつかみ天井を見つめながらもう一つの不安が私を襲った。


 初めて付き合ったのは同級生のクラスメートだった。成司せいじは高校に入学してから帰る方角が同じだった清香きよかの友達だった。自転車で片道30分程の道のりは一人で通うには退屈な時間だった。清香の彼氏、成司と清香のクラスメートの通称ゴリは同じ道を互いの自転車を蹴って転びそうになりながら運転したり、蛇行しながら運転したりしていた。私はその後ろを邪魔にならないようにスピードを上げたり、下げたりペースを合わせ、距離を保っていた。そんな時清香から、

「A組の神崎さんでしょ?成司と同じクラスだよね」

「うん」

「家って何処なの?」

「大和町だよ」

「私はその先の町なんだ。じゃあさ。皆で一緒に帰ろうよ」

「うん」

 こうやって、私たちは直ぐに仲良くなり、学校に向かう時も帰り道もいつも一緒に行動するようになった。そして夏休みに入る前、成司から告白され私は付き合うことにした。ゴリとはよく話す成司だったが、私と二人きりになると無口になる事が多かった。そんな日が続いたので清香に相談すると、

「成司って、あんまり話さないんだよ」

「そうでしょ。」

「どうして?」

「あんまり、女とは話さないんだよ。昔からね。」

「・・・・」

「でも、そのうち話すようになるから大丈夫。ね!」

 清香は笑いながら私の肩をポッと叩き、真剣に話している私を笑っていた。

 そういえば、思い返すと今迄クラスの女子と会話らしい会話をしている姿を見かけた事もなかった。成司は細見なのに背中が大きく、切れ長の大きな二重まぶたに鼻筋の通った顔立ちからモテるだろうであるルックスとは裏腹にとにかく女子が近寄りがたいオーラを発し、目立つ行動もせず時折男子と小声で冗談を言う姿しか見たことがなかった。

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