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第4話

見つめられる私。

 注文した料理が運ばれてくると、店員の視線が気になって仕方がなかった。通常通り接客スマイルで応対しているのだろうが、私たち二人はどんな関係に見えているものだろうかと、その先の視線が怖くてたまらなかった。

「仕事は何をやっているの?」

 注文したパスタをスプーンの上で、フォークで丸めながら、どうでもよさそうに言い出した。彼は本当に空腹だったようで夜中なのに定食を食べている。

「普通の会社員だよ」

「そう・・・・。」

 本当はどんな職業なのか気になって仕方がなかったが、そんな気持ちを知られたくなくて、子供扱いされたくない私は、上から目線で質問を続ける。

「27だったら、結婚とかしてるの?」

「ううん。してないよ」

 聞きながら、左手の薬指をちら見すると、指輪を付けた後も、光る指輪もしてはいなかった。けれどもそんなことは証拠にもならない。結婚している人が全員指輪をしているとは限ることもなく私の父もその一人だ。

「じゃあ、彼女とかは?」

「いないよ」

 無言になるのが嫌で、必死に会話を続けようと私なりに気を使ったつもりだが、そう簡単に話す内容も浮かんでこない。そもそも相手に話を合わせること自体が苦手な私は、無駄に気を遣うことをやめ、

「今、仕事が終わったの?」

「少し前にね。食事するところを探していてたら、丁度いたから・・」

 箸をお皿に置き、テーブルの上に肘を付くと私の顔をじっと見つめるので、恥ずかしくなったが、

「いつも外食なの?」

「だいたいそうだよ」

「そんなこと言って、本当は奥さんの手料理ばかり食べてるんじゃないの?」

 目線が動かない彼から逃げるように、からかうと

「本当に、独身だよ」

 私はふざけながら言ったのに、真剣に言うものだから、うれしくなった。


 そんなに見つめられたら、私はこの視線から逃れらない


 ただ何も言わず見つめあうと、以前からの知り合いだったかのように錯覚を覚えた。「このままじゃいけない」錯覚から現実へ気持ちを切り替えようと、

「あのさ。私は何て呼べばいいの?」

「武田」

「・・・そう」

「じゃ、武田さん、食事も終わったし、帰ろうか」

「うん。そうだね」


 先に席を立ち、会計場所の脇の壁によりかかると、食事代を支払うスーツ姿の背中を見つめていた。支払いが終わるとズボンのポケットに財布を入れながら歩く彼の後ろを歩き、

「ごちそう様でした」

 軽くお辞儀をすると、店のドアを私の背の高さより上を持ち、開けて待ってくれていたので、彼の腕の下をくぐると、

「ありがとう」

 私はまたも軽くお辞儀をした。






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