第2話
バイト帰りの私。
自分の車の中へ戻ると、恥ずかしさと会えなかったもどかしさから、エンジンを掛けようとハンドルを握ったが、「何やっているんだろう?」と落胆し首を下ろすと、額にクラクションが当たり、物静かな駐車場に「ブーーー」とクラクションの音が鳴り響いた。一瞬にして背筋が伸び一刻も早くここから移動しなければと急いで車を走らせた。
女子高校生が教えてくれた白河店までこのまま向かってしまおうか、それとも自宅へ戻ろうか選択に迫られた私は、私と慎ちゃんの出会いから今までを振り返った。
その日はバイトを終え自転車で家へ帰ろうとサドルに座り道路を横断しようと通り過ぎる車を待っていた。11時を過ぎたこの時間帯は車の通行もまばらで人影もなく、バイト先の屋根にびっしりとぶら下がった提灯の明かりだけが目立っていた。その前にピンク色のパーカーにジーンズ姿、ペパーミント色の自転車にまたがっていた私もまた目立っていたのかも知れない。目の前を走る車のスピードが急に落ち、車の中からこちらを見ている視線を感じた。
何故かその視線が気になり、通り過ぎ行くテールランプを眺めていると、車は急に左に寄り止ると、少しバックしたかと思ったら、目の前に視線の持ち主が現れ、助手席側の窓が降りた。
「すみませんが、この当たりに食事が食べられるところはありませんか?」
私は急な質問に戸惑いながらも、この時間帯に食事が出来る場所を考え、
「ファミレスでも良いですか?ファミレスぐらいしかないと思いますけど・・」
そう言った瞬間、今まで私を照らしていただろう提灯の明かりが消え、店の周辺は真っ暗になった。
「ファミレスでも良いよ。食事が出来れば。それってどっち?最近引っ越してきたばかりであまり分からないんだ」
車の進路方向を左指で示すが、
「えっと、そっちじゃなくて、車をUターンして、一つ目の信号を右に曲がると、大通りなんですね。大通りを出て、そのまま真っ直ぐ進むと、ファミレスの看板がありますので分かると思います。」
早口で説明を終えると、私は自転車を降り車の窓に近づとファミレスのある方角を指差した。すると、運転席から助手席まで身を乗り出し、
「じゃあ、案内してよ。ご飯おごるからさあー。駄目?」
そう言われると急にどんな人なのか気になって、今までうつむき加減で話していた目線を、徐々に上げていくと、一緒にご飯ぐらい食べても身に危険が迫るような相手でもなさそうなスーツ姿の大人の人だった。こんな人がナンパするなんて意外だと驚き、顔をまじまじと見ると、結構私が好きな理想の顔をしていた。