(9)
「…というワケで、ボクにやったような失礼なことしちゃダメですよ。」
龍からの返事がない。
「龍さーん。聞いてますかー?」
龍からの返事。
「…自信ないな。今でも意識して力を抑えてる状態なのに、女に会えると考えるだけで…。」
ああ、またザワザワしだした。“離れろ!”精一杯の気を放つ。
バチッと火花が散る。龍が驚いて気が元に戻った。
「今のはなんだ?もう一度やってみろ。」
余計なモノ見せてしまった。
「ダメですよ。龍さんが真似たらボクなんかひとたまりも有りませんからね。」
「それより、ガンバリましょうよ。奥さんに会いたいんでしょ。」
「なんで、夫婦の間でコンナに気を使わなきゃならないんだ!面倒くさい!」
「コチラも腹わってハダカになってやるよ。それでいいじゃないか!」
「女性にそれじゃダメでしょ。夫婦って言っても初対面じゃないですか。」
「イイですか?タマミさんの身体が死んでしまったら、アナタの奥さんは他の星の女性の中に入ってしまいます。
そして自分が龍であった事を忘れてその女性と生きていくんですよ。
アナタと会えるチャンスはこの僅かな時しかないんですよ。」
「会った時に嫌われたら、次回は会ってくれないかもしれませんよ。」
「…それは困る。」
そうは言ってもムリ無いか。ボクも女の子誘う時は舞い上がっちゃうからな。さて、どうしたものか。…そうだ!
ボクは地球での自分の姿をイメージする。
「ボクの地球での姿です。ボクが地球の人間じゃなくて“意識”だけの存在なのは知ってるでしょ。
彼等と接触するためにイメージして造り上げた身体です。けっこう、力を使うんですよ。」
「龍さんも身体を作ってみたらどうですか?そこへ意識を持ってく分、力が弱まるかも。」
「こうか。」
中肉中背の青年が立っている。服装はひと昔前の学生風。
優しそうな顔をしている。
驚いた。出来てる。…出来過ぎでしょ。
「驚いたな。コレ、モデルがいるんですか?」
「若い頃のアイツのダンナだ。」青年の姿の龍がドヤ顔で言った。
それって、恋敵にはならないのか?大物はちがう。
「そうだ、アイツはコイツからコレを貰って喜んでた。」
そして、コスモスの花束が現れた。
完璧です。コレでいきましょう。