(6)
「アナタが地球にやって来たら彼女もろとも地球は消えてしまいます。」
「知らなかった。…では、どうやって女に会えばいいんだ。」
考えてみれば、見る、聞く、触れる、嗅ぐ、味わうことの出来る感覚器官を持って無い
龍には自分の大きさや状態など判るわけないんだ。
自分の発した“声”に反応した彼女を目指してココまで来てしまった。
彼女も自分に呼びかける存在が危険なモノと察したのだろう。
だから、振り返るのをやめてしまった。
龍の気持ちを考えると可哀想だが、このまま地球に近付けるわけにはいかない。
彼女に会ってみよう。
何か解決の糸口が出てくるかもしれない。
「龍さん、後はボクに任せてもらえませんか?方法が見つかればまた来ます。」
「逃げるのか?」龍が寂しそうに聞く。
「ボクの気持ちは判るでしょ?信じて下さい。もし裏切ったと思ったなら地球を消せばいいんです。」
龍が笑った。
「女に呼ばれなければ私は移動する事もできないんだよ。オマエを信じよう。」
仮眠室で寝てる自分を思い浮かべる。気が付けばボクの意識は地球へ帰ってきた。
時計を見ると仮眠をとって1時間ほど。寝具を片付け部屋を出る。
チーフに呼びかける。
「チーフ、替わりますよ。寝て下さい。」
返事を返しながらボクを見るなりチーフが言った。
「オマエ大丈夫か?顔真っ青だぞ。
ああ、そうか最初から具合が悪いから仮眠とってたのか。帰って休んでもいいぞ。」
驚いてロッカー扉の裏にある小さな鏡で確かめる。
ゲッ、真っ青なんてもんじゃないゾンビじゃないかコレ。
あの忌わしいファーストコンタクトのせいだ。
ボクのチカラのコントロールがおかしくなってる。
さぁ、いつものボクの身体をイメージしろ。
「大丈夫ですよ。顔洗ってきます。」
顔洗ったフリして洗面所から戻ってチーフに声をかける。
「もう、大丈夫です。」
チーフがマジマジとボクの顔を見る。まだ心配そうだが
「具合が悪くなったら、起せよ。」と仮眠室に入っていく。
チーフが大雑把な人でよかった。