(3)
子育ては永々のように思われ不安な時もあったが
子ども達が独立してしまうとアッという間だったと気付く。
やがて孫ができ小さな春のような幸せも過ぎ、伴侶を見送った。
やがて最後の訪れを予感したとき、“あの声”を聞いた。
懐かしく私は振り返る。
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目を閉じる。
闇の中、目の焦点を合わすようにその奥を見る。
そのうち囁きが聞こえてきて、囁きは雑踏の中にいるような騒音になる。
気を抜くと騒音は囁きに変わる。集中して騒音の状態を保つ。
そしてモニターで見た“龍”を思い浮かべる。
騒音が消える。いきなり目の前にあの龍が現れ、身体を通過していった。
気がつくとボクの意識は黒い空間にいた。
ここが龍の意識なのか?それとも、エネルギー体に意識などナイのか?
何も感じない。
モニターに映った“龍”は吠えたように見えたのに。
もしも龍が意識をもった存在ならこの太陽系にいきなり現れた理由を知りたかった。
地球から引き離す手立てを得られるかもしれない。
そう思えたのに…。
ふいに女の子の映像が現れる。
まだ4、5才の着物姿の女の子。母親らしい人と手をつなぎ振り返る。
違う映像が現れた。海だ、小学校低学年くらいの少女、友達と水を掛け合って楽しそう、驚いたように振り返る。
映像が変わった。バスの中、高校生くらいの女の子たちがおしゃべりしてる。その中のひとりが振り返る。
次は男性といっしょの女性。やはりコチラに振り返る。表情が不安そう。
食器を洗う女性、振り返りながらハッキリと表情に不安の影。
子どもを抱く女性、振り返るのを途中でやめる。
病院のベッド。老婆が寝ている。静かに目を開きコチラを見て微笑む。
どうやら、この老婆の一生を見ているようなのだが、
彼女はこの“龍”にとって何なんだ?
突然、激しい感情がナカムラの気を揺さぶる。
「どこにいるんだ!返事をしろ!やっと見つけたんだ!私のモノになれ!」
コレは“龍”の感情なのか?