プロローグ
「大学まで卒業させてあげたって言うのに、都市で働かないで町に戻ってきて畑仕事を手伝うって?!」
祖母は腹立たしそうに言った。
「栞璃が帰ってきて畑仕事を手伝うのがなんだって言うのよ。
都会はストレスが凄いし、アパートを借りるだけでも10万もするんだから。帰ってきてくれてよかったわよ」
「何がいいって言うのよ、お金も稼げないのに。」
「母さんもう少し声を抑えてくれ。栞璃は一晩中バスに乗って帰ってきたんだ。
もう少し寝かせてあげてくれ。」
葉山翔吾が言った。
その時葉山栞璃は、部屋の中で呆然としていた、、。
彼女は数年前に突然異空間を開ける様になっていた。
その空間は時間の停止と浄化の機能を備えていて小説の中の話のような能力だと思っていたのに、ものを収納出来る以外なんの力が使えるのか不明なまま
あまり役に立てることが出来ていなかった。
今回帰ってくる際も、手荷物は小さなスーツケース1個だけ。賃貸の部屋にあったものは全てこの空間に入れて持ち帰ってきていたので、引っ越し代もかけずに済み、夜行バスに乗る際もなんの弊害もなかった。
しかし今空間に保管していたものの一部がなくなっていた、、。
服や日用品はある。だけどお菓子は?お土産は?
飲み物やパンは?
全て保管してあったはずなのに、、食べ物が全て無くなってる。
何年も経つが、この空間でこんなことが起きたのは初めてだった。
まさかものが勝手に消えるようになってしまったのだろうか?
よくよく確認してみると何かが空間に増えてる気がする、、。
これは一体何なのだろう?
汚れたメンズ服に、刀?
自分が買ったお菓子の袋を取りだしてみると半分以上無くなっている。
飲み物に至ってはほとんど残っていない。
これは誰かが、食べたあと?誰が私のものを食べたのか、、、。
食べきらず返してきた?
それにこの汚れた服。私の空間が汚れてしまう。
彼女はそのまま服をゴミ箱に捨てた。
空間に泥棒が入ったではないかと、疑うが、自分の空間に入れるものなどいるはずがない。




