表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

膨れていく世界

作者: TOMMY
掲載日:2025/11/20

この世界は何度もやり直されている。誰かが世界の改変を願えば、次の日にはそれが当たり前の日常になる。

人々は皆、変わったことを覚えていない──忘却こそがこの世界の呼吸のようなものだから。

だが宇宙だけは違う。願いが叶うたびに、宇宙はほんの少し膨らむ。人の望みを収める袋のように、不可視の縫い目をきしませながら。


誰かは願った。

「夜を明るくして」──闇は薄まり、町と町は光の直線で結ばれ、情報は途切れなく流れた。


別の誰かは願った。

「生きる目標を見失わないように」──社会には、終わりなき目標と役割が溢れ、働く場所も遊ぶ場所も尽きることがなくなった。


そして誰かは願った。「月と太陽は、地球から見れば同じ大きさに」──子どもたちはその出来すぎた奇跡を平然と学ぶ。


さらに誰かに願われた。「人の世が終わらないで」──時間は途切れず続き、数多の歴史が作られた。


世界は今日もそれらを叶え、宇宙は音もなく膨らんでいく。


だが、完璧ではない。願いと願いがぶつかり、世界がほつれることがある。

作りかけのビル。用途を忘れられたピラミッド。感情の抜けた街のざわめき。裕福と貧困の境目に残る、誰かの願いの影。夜になると、街灯のひとつが必ず別方向を照らしている。そうした歪みの前で、世界の縫い目はわずかに裂ける。人々が忘れても、宇宙はその裂け目の痛みを覚えている。


今日も私たちのすぐ外側で、願いの重さに押されながら、宇宙は静かに膨らみ続けている。


ここはそんな、誰かが願った後の世界だ。あり得ないほど世界は、人に合わせてくれる。


けれど私は知っている──満たされた願いの裏側には、歪んだ裂け目が、気づかれないまま、ほんのわずかに広がり続けていることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ