夕方の営業(常連客編、その9)
一方同じ頃の小料理屋アコでは
山武の後輩の周藤と早川が
日替わりを食べ始めていた…
周藤【いただきます!】
早川【いただきます!】と
各々が一口頬張る
周藤【美味い!ほっとする味ですね~】
早川【そうそう家庭の味って感じで】
アコ【ありがとうございます!
でも明日から連休なのですから
帰省とかはされないんですか?】
周藤【自分は明日帰省する事に
してまして】
早川【私も同じですね】
源 【ちなみにご実家どちら
なのですか?】と調理しながら
聞いていると
周藤【自分は木栃の都宮ですね】
早川【私は群橋の崎高ですね】
広志【お~餃子とパスタの街だね~】
山武【戻りました~アコさん、
これ徳利に移して
ぬる燗でお願いします】
アコ【はいはい!それでメニューは】
山武【当然、煮込みと干乾しを】
アコ【お父さん!煮込みと干乾し】
広志【はいよ!】
山武【ふぅ~】と一息ついて
落ち着いていると
山武【大将!信也さんから
“景虎”後で届けるって】
広志【本当に‼️いや~ダメ元でも
頼んでみるものだな~】と
驚いている
山武【そんな貴重なお酒なんですか?】
広志【新潟の幻のお酒の一つと
言われているんだよ】
丸井【そうなんですね~】
渡貫【他にあるのですか幻のお酒】
広志【あるよ!その前に武ちゃん、
おまちどおさん】とテーブルに
料理を置いていく
山武【お~久々ですね~干乾し~】
山武【それでは、いただきます】と
一口食べて頃合いの
ぬる燗を飲むと…
山武【あ~~これよこれ!たまんない!
くぅ~】と悶えてる
広志【良かったよ!】と呟いている
さて、時計の針は19時を
少し回り店内は賑やかになって
いるその頃…1台の車が止まる
ちなみにではあるが、店には
駐車場はない団地の敷地にあると
いう事もあり、一番近い駐車場までは徒歩3分程かかるのである
竹田【ごめんください!】と
暖簾をくぐり店のドアを
ガラガラガラと
開けて入ってくる
アコ【いらっしゃいませ会長さん、
こちらへどうぞ】
竹田【失礼します】と空いている
カウンター席に座る
アコ【秘書の方もご一緒にどうぞ】
秘書【いえ、私は外でお待ちして
います!】
竹田【君も食べていきなさい!
ここの煮込みは絶品だから】
広志【宜しければどうぞ】
アコ【食べていって下さい】
秘書【分かりました!それならば
お言葉に甘えさせて
いただきます!】と
頭を下げて竹田の隣の席に座る
アコ【頭を上げて下さいな、
さあこちらに】
秘書【すいません、申し訳ないのです
がこちらお願いできますか?】と
あるお酒を差し出した
アコ【はい!お預かりしますね】
広志【これは珍しい銘柄ですね~】
竹田【ご存じとはさすがですね】と
腕を組みながら頷いている
山武【そうなんですか?】
広志【あぁ、広島の研究機関が
毎年本数限定で販売している
“明魂”だ!信也さんから名前は
聞いていたんだがな~
ここでお目にかかれるとは】
八百【良いな~一杯だけ
飲んでみたいな~】
アコ【八百屋さん?人様の物は…ね?】
と和やかな笑顔で
視線を向けると
八百【はい……大人しくしています】
と冷や汗を全身に感じながら
シュンとしている
広志【はい、おまちどおさんです】と
テーブルに料理を置いていく
竹田【お~ではありがたく】と
一口食べる
竹田【やはり、これぞほっとする味
ですね~落ち着けます】と
笑顔になっている
秘書【美味しいです】
広志【良かったです!宜しければ
こちらもいかがでしょうか】
竹田【これは最近話題の
ビーフジャーキーと
言われる物ですね】
広志【定期的に依頼がありまして
調理していまして、
完成する直前に
提供しています】
竹田【なぜ、完成するまで
またないのですか?】
広志【完成してしまうと
硬くなりすぎてしまうんです!
そうしてしまうと旨味が
凝縮しすぎて食べるのには
適さないんですよ!
特にお酒のアテには
時々お見かけしますが、
一人で食べるなら
見よう見まねでも構わない
ですけどね!】
竹田【そうでしたか~昔、良く祖父が
おやつ代わりに作って
くれましてね、懐かしい味です】
と噛みしめる様に食べていた
それから少し時間が経過した頃…
竹田【女将さん】
アコ【はい!どうされました?】
竹田【すいませんが一曲
お願い出来ませんか…】
アコ【一曲ですか?】
丸井【たまには聞きたいですね~】
渡貫【私は聞いた事がないので
是非聞いてみたいですね】
哲男【アコさんお願いしますよ~】
和邦【そうですね~】
洋之【でもアコさんに何の曲を
お願いするのですか?】
竹田【一度こちらで聞かせて
いただいた曲なのですが】
広志【どんな曲ですか?】
竹田【ドラマの主題歌と
記憶しているのですが】
広志【もしかして戦艦が出ている
ドラマですか】
竹田【そうですね~】
アコ【声が出るかしら?
喉を調整し始めている】
“小さな光が 歩んだ道を照らす
希望の蕾が
遠くを見つめていた
迷い悩むほど
人は強さを掴むから 夢を見る
凛として旅立つ
一朶の雲を目指し
あなたと歩んだ あの日の道を探す
一人の祈りが 心をつないでいく
空に手を広げ 降り注ぐ光集めて
果てなき想いを 明日の風に乗せて
私は信じる 新たな時がめぐる
凛として旅立つ 一朶の雲を目指し”
アコが歌い終えると皆が感慨深く
余韻に浸っていた
竹田【素晴らしい歌声と唄ですね】と
涙腺から一滴の涙が
こぼれ落ちていた
アコ【ありがとうございます!】と
緊張と歌いきった達成感に
浸っていた
山竹【聴き入る歌ですよね】
秘書【失礼ですが誰の歌なんでしょう
か?】
アコ【森麻季さんの“STAND ALONE”
です!
NHKのドラマで“坂の上の雲”の
主題歌だったんですよ】
哲男【アコさ~ん、さすがっすね~】
と感心していると
竹田【森麻季さんとは?】
広志【ソプラノ歌手の方です】
竹田【そうでしたか…原点回帰ですね!
今宵は良く眠れそうです!
それでは私はこれで
おいとまします!こちらで】と
財布から現金を支払うと
アコ【今、お釣りを】
竹田【お釣りはとっておいて下さい!
また寄らせていただきます!
それでは失礼します
おやすみなさい!】
そう言って暖簾をくぐり
店を後にした
秘書【只今、車を】
竹田【いや、たまには外の風に
あたりたい】
アコ【はいはい、みんな~
そろそろ閉店の時間よ】
哲男【え~試合いいところなのに~】
広志【キリのいいところで帰りなよ】
そして皆は店を後にし、
それぞれの家路へと足を向けて
いったのでした




