夕方の営業(常連客編、その8)
前回の続編になります
あらかじめご了承下さい
さて、時計の針は18時30分を
少し回り店内は賑やかになって
いるその頃…
山武【こんばんは~アコさん】と
暖簾をくぐり店のドアを開ける
アコ【武ちゃんいらっしゃい】
周藤【こんばんは~】
早川【こんばんは~】
アコ【あらっこんばんは
いらっしゃいこちらにどうぞ】
と言いながら
いつもの指定席のテーブルに
それぞれ座り、
カバンを下ろしていく
山武【お邪魔します、今日は
どうしたんですか?】
広志【武ちゃんに後輩の皆さん、
今日は久々に珍しい物が
あるから】
山武【そうなんですか?】
広志【今日は“牛スジの煮込み”と
“干乾し”があるんだよ】
山武【マジっすか‼️】
周藤【何ですか?干乾しって…】
早川【“ニギス干し”なら聞いた事
ありますけど】
広志【ニギス干しって珍しい物
知ってるね~】
山武【食べてみたら分かるよ!】
哲男【武さん、でも確か二人は
飲めなかったはず…ですよね】
洋之【あっ、そういえば
そうでしたね】
和邦【でも、食べた事がないので
したら…何事も経験ですから】
広志【とりあえず少し食べてみたら
どうだ!準備しておくよ】
山武【ありがとうございます!
でも、その前に酒買わないと】
アコ【はいはい、いってらっしゃい】
山武【いってきます】と再び店のドア
を開けて暖簾をくぐって
隣のワコの店へ足を向ける
広志【その間にやりますかね】と
調理にとりかかる
アコ【お二人には先に出しておきます
ね】とテーブルにそれぞれ
置いていくと
周藤【これは何ですか?】
早川【見た事ないですね~】
広志【牛肉の干乾し…
又の名をビーフジャーキーと
いうそうだ】
周藤【失礼ですけど、干し肉みたいですね】
広志【そりゃあそうだからね~
でもそんじょそこらのとは
違うからね~大分前に
なるけど、どこかの漫画家さん
が教えてくれと頼まれた事が
あるくらいな食べ物
なんだよ~】
アコ【ありましたね~そんな事】
早川【それで教えたのですか?】
広志【教えたよ!家でも簡単にできる
奴をな!でもそれ用の肉が
今では希少価値になっちまって
な…他国産の肉だと質が違って
な、久々に腕が鳴ったよ】
周藤【もしかして
パパクッキングですか?】
早川【あの料理漫画、レシピも載って
いるから助かるんですよね~】
広志【そういった名前の漫画が
あるんだな】と少し感心
していると
源 【結構有名だよ、美味いんぼとは
違った話で】
周藤【失礼ですが…】
広志【ウチの倅でして】
源 【今帰省中で手伝いしています】
哲男【こき使われているの、
間違いじゃないの~】
アコ【哲男さん?後でお話しが…】と
満面の笑みで哲男に語りかける
哲男【いやいや冗談ですよ~】と
全身から冷や汗を掻きながら
アコ【はいはい、そういえば
お二人さん後は
どうされますか?】
周藤【そうしたら日替わりで
お願いします】
早川【私も一緒で】
アコ【はい、ありがとうございます!
お父さん日替わり二つ】
広志【はいよ~】
アコ【すいません騒がしくて】と
周藤と早川に話すと
八百【あれは食べておいた方がいいよ!
ここのは日本一!いや世界一
だね!】とかなり出来上がった
状態で語っている
鈴村【いつもですよね?】
丸井【母ちゃんに怒られるぞ~】
渡貫【後で悲鳴が聞こえない事
祈りますよ】とそれぞれが
ぼやいていると
アコ【すいませんね~各々のお酒だと
いつもこうなんですよ…】
周藤【ウチの係長もそうですよ?
ほろ酔いで帰りますから】
広志【結婚して家族が出来ると
余程の事がない限りは早く帰る
様になるんだよ!又は仕事が
上手く嫌な事があったりした
時だけ遅くなるんだよ
家に仕事を持ち込まない様にな
昔の唄であっただろ!】
アコ【その前に、はいおしぼり】と
渡している
周藤【ありがとうございます】
早川【ありがとうございます】と
それぞれ受け取り
手を拭いたりしている
広志がおもむろに唄う
呑んで~呑んで~呑まれて~呑んで~
呑んで~酔いつぶれて眠るまで~
呑んで~やがて男は~静かに眠るのでしょう
アコ【お父さん!】
源 【親父!唄より手動かして】
広志【たまにはいいじゃないか…】
八百【大将!大将!】
鈴村【その辺で…】と皆が一様に
その場を収めようとしている
広志【何が…】
皆がアコに視線を送ると……
アコ【お父さ~ん、後でお話しが
ありますので】と満面の微笑み
で広志に話している
広志【はいはい、分かりました】と
こちらも冷や汗を掻いている
一方同じ頃の崎島商店では…
山武【こんばんは~】
ワコ【あらっ山ちゃんいらっしゃい!】
山武【今日アレあるっていうから
どれにしようかと】
ワコ【ぬる燗なら日本酒だけど、
どうしようか…】
そこにワコの夫である信也が現れる…一応ではあるが、この店の
主は信也である
山武【おっ信也さん!こんばんは~
ご無沙汰しています】
信也【どうしたん?】
ワコ【今日アレあるっていうから、
いいお酒をって】
信也【それならこれだな
少し待ってくれ】
そう言って再び奥に戻っていった
山武【いいのがあるんですね~】
ワコ【全国のお酒集めるのが、
あの人の生きがいだからね~】
と少し微笑ましくも
頼もしく見つめていると
信也【これでどうだい】
山武【これは?】
信也【北海道の日本酒でな
“国土無双”って奴だよ】
和子【あんたいつの間に】と
少し驚いている
山武【見た事ないですね~】
信也【通販でも販売しているらしいが
かなり甘口だったからな!
問い合わせたら
辛口は直接いかないと
買えないっていうならな
造っている量も少ないから
飲むなら二合瓶と四合瓶だな】
山武【ありがとうございます!】
信也【はいよ!いくらいくらね】
山武【こんな貴重なお酒を】と
話しながら会計をする
信也【毎度、これお釣りね】と
小銭を渡す
山武【ありがとうございます!
それでは】
信也【あと、大将に伝えて
おいてくれ“景虎”
手に入ったよと】
山武【分かりました、失礼します】
そう言って崎島商店を後にした…




