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小料理屋アコ~心おだやかなおもてなし  作者: 村越 京三


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30/165

夕方の営業(常連客編、その8)

前回の続編になります

あらかじめご了承下さい


さて、時計の針は18時30分を

少し回り店内は賑やかになって

いるその頃…


山武【こんばんは~アコさん】と

   暖簾をくぐり店のドアを開ける


アコ【武ちゃんいらっしゃい】


周藤【こんばんは~】


早川【こんばんは~】


アコ【あらっこんばんは

   いらっしゃいこちらにどうぞ】 

   と言いながら

   いつもの指定席のテーブルに

   それぞれ座り、

   カバンを下ろしていく


山武【お邪魔します、今日は

   どうしたんですか?】


広志【武ちゃんに後輩の皆さん、

   今日は久々に珍しい物が

   あるから】


山武【そうなんですか?】


広志【今日は“牛スジの煮込み”と

   “干乾し”があるんだよ】


山武【マジっすか‼️】


周藤【何ですか?干乾しって…】


早川【“ニギス干し”なら聞いた事

   ありますけど】


広志【ニギス干しって珍しい物

   知ってるね~】


山武【食べてみたら分かるよ!】


哲男【武さん、でも確か二人は

   飲めなかったはず…ですよね】


洋之【あっ、そういえば

   そうでしたね】


和邦【でも、食べた事がないので

   したら…何事も経験ですから】


広志【とりあえず少し食べてみたら

   どうだ!準備しておくよ】


山武【ありがとうございます!

   でも、その前に酒買わないと】


アコ【はいはい、いってらっしゃい】


山武【いってきます】と再び店のドア  

   を開けて暖簾をくぐって

   隣のワコの店へ足を向ける


広志【その間にやりますかね】と

   調理にとりかかる


アコ【お二人には先に出しておきます 

   ね】とテーブルにそれぞれ

   置いていくと


周藤【これは何ですか?】


早川【見た事ないですね~】


広志【牛肉の干乾し…

   又の名をビーフジャーキーと

   いうそうだ】


周藤【失礼ですけど、干し肉みたいですね】


広志【そりゃあそうだからね~

   でもそんじょそこらのとは

   違うからね~大分前に

   なるけど、どこかの漫画家さん 

   が教えてくれと頼まれた事が

   あるくらいな食べ物

   なんだよ~】


アコ【ありましたね~そんな事】


早川【それで教えたのですか?】


広志【教えたよ!家でも簡単にできる

   奴をな!でもそれ用の肉が     

   今では希少価値になっちまって 

   な…他国産の肉だと質が違って 

   な、久々に腕が鳴ったよ】


周藤【もしかして

   パパクッキングですか?】


早川【あの料理漫画、レシピも載って 

   いるから助かるんですよね~】


広志【そういった名前の漫画が

   あるんだな】と少し感心

   していると


源 【結構有名だよ、美味いんぼとは

   違った話で】


周藤【失礼ですが…】


広志【ウチの倅でして】


源 【今帰省中で手伝いしています】


哲男【こき使われているの、

   間違いじゃないの~】


アコ【哲男さん?後でお話しが…】と

   満面の笑みで哲男に語りかける


哲男【いやいや冗談ですよ~】と

   全身から冷や汗を掻きながら


アコ【はいはい、そういえば

   お二人さん後は

   どうされますか?】


周藤【そうしたら日替わりで

   お願いします】


早川【私も一緒で】


アコ【はい、ありがとうございます!

   お父さん日替わり二つ】


広志【はいよ~】


アコ【すいません騒がしくて】と

   周藤と早川に話すと


八百【あれは食べておいた方がいいよ! 

   ここのは日本一!いや世界一

   だね!】とかなり出来上がった

   状態で語っている


鈴村【いつもですよね?】


丸井【母ちゃんに怒られるぞ~】


渡貫【後で悲鳴が聞こえない事

   祈りますよ】とそれぞれが

   ぼやいていると


アコ【すいませんね~各々のお酒だと 

   いつもこうなんですよ…】


周藤【ウチの係長もそうですよ?

   ほろ酔いで帰りますから】


広志【結婚して家族が出来ると

   余程の事がない限りは早く帰る 

   様になるんだよ!又は仕事が

   上手く嫌な事があったりした

   時だけ遅くなるんだよ

   家に仕事を持ち込まない様にな

   昔の唄であっただろ!】


アコ【その前に、はいおしぼり】と

   渡している


周藤【ありがとうございます】

早川【ありがとうございます】と

   それぞれ受け取り

   手を拭いたりしている


広志がおもむろに唄う

呑んで~呑んで~呑まれて~呑んで~

呑んで~酔いつぶれて眠るまで~

呑んで~やがて男は~静かに眠るのでしょう


アコ【お父さん!】


源 【親父!唄より手動かして】


広志【たまにはいいじゃないか…】


八百【大将!大将!】


鈴村【その辺で…】と皆が一様に

   その場を収めようとしている


広志【何が…】


皆がアコに視線を送ると……


アコ【お父さ~ん、後でお話しが

   ありますので】と満面の微笑み

   で広志に話している


広志【はいはい、分かりました】と

   こちらも冷や汗を掻いている


一方同じ頃の崎島商店では…


山武【こんばんは~】


ワコ【あらっ山ちゃんいらっしゃい!】


山武【今日アレあるっていうから 

   どれにしようかと】


ワコ【ぬる燗なら日本酒だけど、

   どうしようか…】


そこにワコの夫である信也が現れる…一応ではあるが、この店の

(あるじ)は信也である


山武【おっ信也さん!こんばんは~

   ご無沙汰しています】


信也【どうしたん?】


ワコ【今日アレあるっていうから、

   いいお酒をって】


信也【それならこれだな

   少し待ってくれ】


そう言って再び奥に戻っていった


山武【いいのがあるんですね~】


ワコ【全国のお酒集めるのが、

   あの人の生きがいだからね~】 

   と少し微笑ましくも

   頼もしく見つめていると


信也【これでどうだい】


山武【これは?】


信也【北海道の日本酒でな

   “国土無双”って奴だよ】


和子【あんたいつの間に】と

   少し驚いている


山武【見た事ないですね~】


信也【通販でも販売しているらしいが 

   かなり甘口だったからな!

   問い合わせたら

   辛口は直接いかないと

   買えないっていうならな

   造っている量も少ないから

   飲むなら二合瓶と四合瓶だな】


山武【ありがとうございます!】


信也【はいよ!いくらいくらね】


山武【こんな貴重なお酒を】と

   話しながら会計をする


信也【毎度、これお釣りね】と

   小銭を渡す


山武【ありがとうございます!

   それでは】


信也【あと、大将に伝えて

   おいてくれ“景虎”

   手に入ったよと】


山武【分かりました、失礼します】


そう言って崎島商店を後にした…







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