夕方の営業(市場関係者編、その2)
時計の針は17時を少し過ぎた頃、
近くの公園で賑やかに遊んでいた
子供達がそれぞれの親御さんから
【ごはんよ~】の声をかけられて
【ばいば~い】と子供達は手をふって
家へと足を運んで帰ろうとしていた
その時…
鈴村【こんばんは~】と
暖簾をくぐって店のドアを
ガラガラと開けて入っていく
八百【おっす!来たぞ~】
丸井【今晩は~】
渡貫【こんにちは~】
谷出【今晩は~】とぞろぞろと
店のドアを開け入ってきて
各々テーブル席に座っていく
広志【いらっしゃい】
アコ【いらっしゃいませ~
今日は本当にありがとう
ございます】
鈴村【いえいえこちらも助かったよ】
八百【野菜も質っちうもんが
あるからな】と頷きながら
語っていると
広志【八百屋から質なんて言葉が…
また何かしら起こるぞ】と
おどけると
アコ【あらっ嵐の前の静けさかしら
お酒の付き合いならいつでも
するわよ~】と満面に笑みを
みんなに向けている
それを聞いて広志以外の
みんなの表情が固まっている
アコ【それはともかく、
飲み物はちゃんと
大丈夫ですか?】
広志【そういえばさっき
信也さんとワコさんが
飲んでほしいって
置いていった酒があるけど
どうする?】
鈴村【2人は飲んだんですか?】
アコ【当然よ何事も新酒は
飲まなくちゃね~お父さん】と
手を動かしながら広志に視線を
向けている
広志【アレは好みは結構分かれると
思うぞ~】
鈴村【そう言われたらな~】
八百【飲みましょう】
丸井【そうですね~】
渡貫【たまにはこういうのも
悪くありませんからね】
谷出【どんなお酒なんですか?】
アコ【その前に、みんな
はいおしぼり】と
それぞれに渡している
皆一同に【ありがとうございます】と
受け取り手を拭いたりしている
アコ【これなんだけとね】と奥から
取り出してきたのは
アコ【徳島の日本酒で煌と
愛媛の栗焼酎で宮の舞と
鳥取の日本酒で鷹勇
(たかいさみ)だとさ】
その時に再び暖簾をくぐって
店のドアをガラガラと開けて
入ってくる
信也【こんばんは~】
ワコ【こんばんは~飲んでる?】と
挨拶すると
みんなで【こんばんは~】と
応えている
広志【いらっしゃい】
アコ【これから飲んでもらうのよ】
ワコ【栗焼酎はかなり甘いから
好みが分かれるわね】
アコ【それなら他の2つを先に
飲みましょう
それからみんなそれぞれに
しましょう】
以前にも紹介したかも知れませんが
お店には常連客専用の徳利がある、
それは間違えないように
するためである
鈴村【大将、ぼちぼち】
八百【腹が減った】
広志【はいはい今やりますよ】と
完成した料理を盛り付けている
ワコ【さあさあ、みんなで
飲んでちょうだい】と
各々の猪口に注いでいる
アコ【はいはい、今行きますよっと
よっこいしょういちさん】と
それぞれのテーブルに
料理を置いていった
丸井【こうなりましたか】と
驚いている
アコ【サンマの南蛮漬けに
野菜たっぷり肉団子汁ね
後はいつものが何とか
なったわ】
鈴村【サンマの南蛮漬けかい】
八百【野菜もそれなりに入ってるし】
丸井【肉団子汁にもキノコとか
色々入れましたね~】
広志【限られた材料だからね~
しかし本当に助かったよ】
丸井【追加で“揚げ出し豆腐”と
“出汁巻き玉子”ありますか?】
アコ【あるけど食べるの?】
丸井【バタバタであまり食べられ
なかったものですから】
と少し苦笑いしている
谷出【それならおからを食べると
お腹は早く満腹になりますよ】
丸井【そうなんですか?
おからって他にどんな料理に
使うんですか?】
谷出【その前に私は“揚げ出し豆腐”と
おからは何に?】
広志【おからは酢の物と
和えてあるよ】
谷出【じゃあそれでお願いします】
渡貫【私も“おからの酢の物”と
出汁巻き玉子で】
八百【さて、みんな食べますか】
鈴村【そうだな】
そして、各々一口食べていくと
丸井【おいしいですね~】
渡貫【身体に染み渡ります】
鈴村【いや~美味い!酒にも合う】と
笑顔になっている
八百【この南蛮漬けはご飯が
進むよ~】
ワコ【何でも進むわよ
この店では】とほろ酔いの
表情で話している
信也【いつもお世話になってます
から】
広志【でもサンマは焼いただけの方が
みんな一番だろ?】
鈴村【それはそうだろう
来週には新サンマだよ】
アコ【それは楽しみね~
私も一口】
広志【アコ~まだだまだ
いつものメンバー来るだろ】
さあ、今宵はこれから始まりです